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「WELQ」はアウトか? セーフか? DeNAの責任は? 著作権法の観点から弁護士が分析してみたSTORIA法律事務所ブログ(1/5 ページ)

» 2016年12月21日 09時42分 公開
[柿沼太一ITmedia]

この記事は、「STORIA法律事務所」のブログに12月19日に掲載された「WELQなどのキュレーションメディアを著作権法の観点から分析してみた」を、ITmedia ニュース編集部で一部編集し、転載したものです。

 医学部卒のライター兼編集者・朽木誠一郎氏の記事に端を発し、医療系サイト「WELQ(ウェルク)」をはじめDeNA(ディー・エヌ・エー)が運営するまとめサイトが次々に休止に追い込まれました。また、DeNA以外が運営しているキュレーションサイトも次々と閉鎖されるなど、その影響はとどまるところを知りません。

 この問題については、企業としての倫理の問題、著作権法上の問題、薬機法上の問題、記事内容を信じた人が損害を被った場合の法的責任の問題など法律的/社会的な問題が複雑に絡まり合っています。

 私は個人的には「顧客に価値を提供できないサービスが存在する意味はない」と考えていますので、今回のWELQ閉鎖は当然だと思います。

 ただ、今回の問題の複合的な側面のうち、著作権法上の問題、つまり著作権的にどこからがアウトで、どこがグレーなのかについて正確な知識や情報をなるべく沢山の人に持っていただきたいと思っています。

 というのは、「著作権法上どこまでが許されるのか」という問題は単にキュレーションサイトにおけるパクリがいいか悪いか、という論点にとどまらない非常に大きな影響を持っているからです。

 たとえば「無数の著作物を元データとして生成されたAIが、人間の指示で元の創作物に類似した著作物を創作した場合に著作権侵害になるのか」「どこまで類似していれば著作権侵害になるのか」という問題などにも非常に強い関連性を持ちます。

 「『パクリ』という言葉の意味や範囲が不明確なまま一人歩きするのは良くない」「なんでもかんでも著作権侵害だと決めつけるのはマイナスの方が大きい」と考え、著作権侵害についてできるだけ正確な知識やイメージを持っていただくためにこの記事を書きました。

 目次は以下のとおりです。

▼問題は切り分けた方が良い

▼「引用」に関する大いなる誤解

▼「リライト」はどこまで許されるのか

▼写真については特殊な問題がある

▼今回の騒動でDeNAは法的責任を負うのか

問題は切り分けた方が良い

 冒頭でも申し上げたように、今回の問題は企業としての倫理の問題、著作権法上の問題、薬機法上の問題、記事内容を信じた人が損害を被った場合の法的責任の問題など法律的/社会的な問題が複雑に絡まり合っています。

 ただ、それぞれは独立した問題です。

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 たとえば、有名になった「肩こりの原因は幽霊」記事は、もちろん内容的にはトンデモ記事以外のなにものでもありませんが、ライターがオリジナルに書いたものであれば著作権侵害にはなりませんし、特定の商品(魔除けとか)の医学的な効能効果を標榜(ひょうぼう)していなければ薬機法上も問題にはなりません。それに、記事を読んだ人がその内容を信じたからといって、具体的な損害が生じるとも思えません。

 逆に、「●●という商品を飲めばがんが治る!」などと、他者が作成した嘘っぱちの記事をコピペして、特定の商品の医学的な効能効果をうたい、それを信じた人が標準治療を拒否して●●という商品だけを飲んだ結果がんで死去した、というようなケースの場合は、「内容虚偽+著作権侵害+薬機法上違法+記事によって生じた結果について賠償責任を負う可能性あり」というフルコンボになります。

 今回の記事で詳しく説明しようと思うのは、この中で「著作権侵害」の部分です。

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