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2016年12月21日 09時42分 UPDATE

STORIA法律事務所ブログ:「WELQ」はアウトか? セーフか? DeNAの責任は? 著作権法の観点から弁護士が分析してみた (3/5)

[柿沼太一,ITmedia]

無許諾での「リライト」はどこまで許されるのか

 次に著作権者に無許諾での「リライト」が著作権法上どこまで許されるのかについてです。

「複製」「翻案」「それ以外」

 著作権法には「複製」と「翻案」という概念があります。「複製」とは、元の著作物をそっくりそのままコピーすること、「翻案」とはざっくりいうと、元の著作物の表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等することです(江差追分事件・最高裁判所平成13年6月28日判決)。

 「複製」も「翻案」も著作権者の許諾なく行えませんので、ある「リライト」が「翻案」に該当すれば、無断でリライトを行うことは著作権侵害になりますし、「翻案」に該当しないリライトであれば著作権者の承諾なく自由におこなうことができます。

 ですので、適法なリライトかどうかは「翻案」に該当するかどうかによって決まる、ということになります。

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具体的な判断基準

 翻案とは先ほど述べたような概念ですので、「元の著作物の表現上の本質的な特徴の同一性」が維持されているかどうか、が著作権侵害か否かの境界線だということになります。

 しかし、「元の著作物の表現上の本質的な特徴の同一性」が維持されているかどうかという基準はあまりに抽象的すぎますよね。そこで、私なりにこれまでの判例や学説を総合し、あえて言い切ってみると以下の2つのことが言えるのではないかと思います。

1 思想、感情若しくはアイデア、事実、事件、データ、科学的な知見など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において、既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には、翻案には当たらない

2 「創作性が低いもの」≒「表現の選択の幅が狭いもの」≒「だれが書いても同じような表現にならざるを得ないもの」については保護の範囲が狭く、デッドコピー(まったく同じ表現)の場合でなければ複製や翻案に該当しにくい

 まず、1つめの話を図で示すとこんなイメージです。

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 著作物を、思想、感情若しくはアイデア、事実、事件、データ、科学的な知見などの「コア部分」と、そのコア部分を「具体的に表現した部分」に分けます。この「コア部分」ついては模倣したとしても翻案にはなりません。そもそも著作権法は「表現」を保護する法律だからです

 なので、同じ「コア部分」を、全く異なる「表現」で記載した場合には「翻案」にならず無許可で行ったとしても著作権侵害にはなりません。一方同じ「コア部分」を少し違う「表現」で記載した場合、つまり「元の著作物の表現上の本質的な特徴の同一性」が残っている場合には翻案に該当し、無許諾で行った場合には著作権侵害になります。

 2つ目の話は、1つ目の話を違う観点から言い換えたものです。

 たとえば、小説なんかは0から創作しますから無限の選択の幅があるので保護の範囲が広いということになります。つまりデッドコピーでなくても「似ている」だけでも翻案に該当する可能性があります。

 一方、本件のような医学情報については一定の科学的な知見ですから、「創作性が低いもの」≒「表現の選択の幅が狭いもの」≒「だれが書いても同じような表現にならざるを得ないもの」の一種と言えると思います。

 ごく単純に図式化すると

▼「元ネタの創作性が低い」=保護範囲が狭い=デッドコピーでない限り、かなり似ていても「複製・翻案」ではない。

▼「元ネタの創作性が高い」=保護範囲が広い=デッドコピーはもちろん、かなり広い範囲で「複製・翻案」となる。

ということです。

 これも図で示してみましょう。

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 青い楕円が元ネタの創作性の高低を示しています。創作性が低ければ狭い保護範囲、高ければ広い保護範囲、というイメージです。そして、小さい円が、元ネタをもとに制作されたものを示しています。

 デッドコピーの場合(赤い円)は、当然のことながら、元ネタの創作性が高い場合はもちろん、創作性が低くても「複製・翻案」に該当します。

 一方、かなり似ていてもデッドコピーでは無い場合(黄色い円)、狭い保護範囲には入らないが広い範囲に入るので、元ネタの創作性が低ければ「複製・翻案」に該当せず、高ければ「複製・翻案」に該当する、ということになります。

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