窓ガラスがディスプレイに早変わりし、AI(人工知能)搭載スピーカーなどと連携してさまざまな情報を映し出す――そんな“未来の窓”「Window with Intelligence」のプロトタイプを、アルミサッシなどを手掛けるYKK APが6月28日発表した。2020年をめどに、まず法人向けで実用化を目指す。
Window with Intelligenceは窓のIoT(Internet of Things)化に取り組んだデバイス。窓ガラスがそのままディスプレイとなり、タッチ操作や音声認識で室内の空気の状態表示、窓枠に備えるカメラで定点撮影したライフログの表示、ビデオチャット、他の家電の無線操作などができる。空気の状態を感知して窓に表示し、自動で開閉して換気する機能も備える。
透明有機ELを強化ガラスで挟み込んだ構造で、現状では透明有機ELの調達の都合上、55インチ、フルHD(1920×1080ピクセル)解像度のモデルのみ。フレームを含むサイズは1596(高さ)×1062(幅)ミリ。今後さまざまなサイズの透明有機ELを使えるようになれば、他サイズも製作したいとしている。
「情報の表示なら窓ではなく、ディスプレイでいいのではないかと言われるが、外側も内側も見える窓だからこそできることに取り組みたい」と、同社の「未来窓」プロジェクトの担当者である東克紀さんは話す。
「多くの消費者が家を見る時や、工務店が消費者に説明する時に窓の優先順位は低くなりがちで、あまり詳しく見てもらえていない。一方で窓も着実に進化しているということをあらためて皆さまに知ってほしいという気持ちをこのプロジェクトに込めている」(東さん)
有機ELであるため反対側からも表示内容が見えてしまう問題や、強い日光下での視認性の問題については、「課題として認識していて、これから改良していく。例えば、強化ガラスの間にブラインドを入れる技術が既にある。有機ELの表示時にはブラインドで外側を遮ることで、ある程度改善できるかもしれない」という。
現状、製品価格は「100万円を越えないくらい」と見積もっている。一方、透明有機EL自体の耐用年数は3年から5年と、一般的な窓に比べて短い。そのため透明有機ELだけをユニットとして交換できる仕組みにするという。交換用ユニットの価格は未定だ。
一般家庭が購入するのは難しい価格設定だが、家庭での利用を想定したデバイスを法人向けにどう販売するのか――東さんは「すぐに家庭向けに買ってもらうのは難しいと思う。現状問い合わせが来ているのは博物館など先端技術を展示する施設からが主で、そういった場所で知名度が上がれば価格もこなれてくるのでは」と話す。
プロトタイプのOSはAndroidで、サードパーティーのAndroidアプリを動かすことも可能だ。米Googleの「Google Home」や、米Amazon.comの「Amazon Echo」、米Appleの「HomePod」、LINEの「WAVE」など、各社のAIスピーカーとの連携を想定している。
Windows with Intelligenceのプロトタイプは、7月1日から「YKK APショールーム新宿 特設ギャラリー」で一般公開する予定。
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