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“脱出”を先導した漫画家に聞く「Twitterアカ凍結の問題点」 Pawooの21万人ユーザー突破に寄せて(2/2 ページ)

» 2017年08月29日 17時56分 公開
[松尾公也ITmedia]
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 「Twitterシステムの悪用により、何も規約違反したことのない作家が突然凍結され、活動場所を奪われてしまう」という、いまやTwitterは社会的評価になりえる部分もあるため、作家にとって致命的な事態になり得ます。

 凍結が原因で宣伝活動がうまくできなくなり、生活に困窮したりそれが原因で引退してしまう作家もいます。

 凍結解除もTwitterが機械的な自動返信しかしないため解除は期待薄の状態です(解除される見込みがないので泣き寝入り状態になる方が大変多いです)。

 これに関してはTwitter社はすでに声明を発表し、改善を進めているとのコメントがされていますが、明確に改善されたと発表はされていないのと、いつになるかもわかりませんので、今も凍結されるんじゃないかと不安になる作家さんがまだ多い状況にあります(過去、既に凍結されてしまい、今回のタイミングで凍結された人だけでなく、アカウントを返してほしいと訴える作家もたくさんおられます)。

 そもそもこの絵師凍結問題は今に起こったことではなく、自分の確認したタイミングでは2年前ほどから頻繁に起こっています(僕自身も今年4月に凍結被害を2度受けています)。

9回も凍結、活動場所を奪われる

 僕が確認したその作家さん(A氏)は複数によるいたずら通報でなんと「9回」も凍結被害を受けていました。しかもこれはたった数日のうちの話です。もうこの時点でかなり異常な事態ですし、作家同士でも一時期大きな騒ぎになっていました。

 ですが驚いたのは、Twitter側が特に何も対応しなかったのです。明らかな故意による集団通報での凍結だったにもかかわらず、その作家さんの凍結は解除されることはありませんでした。

 そしてその作家さんは『もうTwitterでは活動できない』と半ば雲隠れのように活動場所を変えざるを得ない結果となりました。その作家さん自体は何も悪い事はしておらず、ただ「ロリを描いているから」とイタズラに複数ユーザーに通報され、活動場所を無慈悲に奪われることになりました。

 そのころからでしょうか(それより前かもしれません)。いわば「ロリ作家」と言われる一定のコンテンツを好んで描いておられる作家さんがプロアマ問わず頻繁して凍結されるようになりました(2カ月に1度、ロリ作家凍結の情報が流れてくるようになりました)。

 そして非情なことに、頻発される絵師凍結によりTwitter上では「ロリ系イラストは凍結される」「成人向けイラストを投稿すると凍結される」という不安感により絵描きの自粛ムードが漂い始めました。

 そうして活動できなくなりTwitterを去る作家や、自分のコンテンツをTwitter上で発表しにくくなり、自由な作品発表もままならないと嘆く作家が増えはじめました。

 Twitter側は「絵師を排除することは全くあり得ません。サポートしたいくらいですから」と発表していますが、果たしてそうでしょうか?

 僕は「Twitterが事態を全く把握しようとせず、今になってようやく大ごとに至り、とりあえず対応しているだけ」にしか見えません。

 Twitter上で絵描きがコンテンツによる迫害を受けない作品を発表できる場所が求められる中、今年の4月に登場したのがMastodon内の、イラストコミュニケーションサービスPixivが運営するPawooでした。

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 Pawoo自体はTwitterと比べてユーザー数はもちろん少ないですが、日本企業のイラストコミュニティーを守るべきと考えている会社によって作られているため、「表現が守られている場所」であることは確かです。

 成人向け・ロリコンテンツが好きな人にとってもそうですが、反社会的内容でない限り表現が脅かされることはあってはならないと思っています。だからこそ僕はこの事態を見かね今後の表現者を守る意味を込め、「Twitterで萎縮してしまっている・凍結を恐れている作家にむけてPawooへの登録を推奨した内容の1文」をTwitterで発言しました。

 結果、Pawooには丸2日で約1万8000人のユーザー(多くは作家とそのファン)が新規登録する動きとなり、結果的にユーザー数は20万を超え、Pawooは絵を描く人にとって必要となり得る場所になったと証明されていると思います。

 いたずらに絵描きが脅かされ一部のコンテンツを描く者が迫害されるなどあってはなりません。強くそう思います。

 また「このジャンルで活動しているから迫害する」などももっての外です。自由に自己表現することは人間が当たり前に求めて良いものです。それを奪うことはその人の大事な「個性」を奪うことになります。

 ところどころで悪意のある人物による集団暗殺が行われている街で国が何も対処しない中、平和を感じる住人など存在しません。

絵描きにとって憩いの場を

 Twitter社が今後、どういった対応をみせるかまだ不明瞭ですがすでに凍結された作家・凍結の事態を知った作家はよほど大きな動きでない限り凍結への不安は取り除けず、信用回復はできないと思っています。

 今後、Twitter上で同じような悲しい過ちが繰り返されないことを祈るばかりです。

 海外企業であるTwitterの事態への対応遅れ、機械的な自動凍結システム・凍結解除申請へのずさんな対応が招いた結果として日本のSNSであるPawooが発展をみせたのも1つあると思います。

 ですが僕自身は、いま脅かされている自由な表現を救うことのできる、一部のユーザーからの表現の差別・一定コンテンツの迫害から作家を正しく守ることのできる唯一の日本のSNSである「Pawoo」に今後の可能性と希望を見出しています。

 Pawooが表現者・創作者にとってよりよい文化であること、今後もより大きなイラストコミュニケーション向けSNSになり、絵描きにとって憩いの場であり安らぎの空間であることを利用者として見つめていき応援していきたいです。Pawooを使ってきている私の友人たちもよりよい発展を望んでいます。

 今後、絵描きだけでなく表現者にとって安心できるサービスが継続されることを強く望みます。

 そして絵を描く全ての人たちが心地よい気持ちで作品発表できる場がより大きくなることに期待しています。

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