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体操界に遅れて来た“IT革命”――採点の常識覆す、富士通の挑戦東京五輪へ連れてって(1/4 ページ)

» 2017年09月14日 07時00分 公開
[村上万純ITmedia]

 「0.099」

 これが何の数字か分かるだろうか。

 2016年のリオデジャネイロ五輪、体操男子個人総合決勝で、内村航平選手が最終種目の鉄棒で逆転し、2連覇を達成したときの「2位との得点差」だ。その差、わずか0.099点。

 0.1点でも採点が違えば、メダルの色も変わっていたことになる。ただ、体操の「0.1点の差」が持つ重みは素人には実感しにくい。選手の演技を見ながら「ここで0.1点の差がついた」と分かる人は多くないはずだ。このシビアなジャッジは、複数の審判員が目視で行う。

 しかし、人間の目には限界がある。審判にもプレッシャーはかかるし、ときには選手や観客が判定を不満に思うことだってある。誤審も起こりうる。人間による採点は常に公平性が問われるもの。そんな悩みを抱える体操界に、“革命”が起きようとしている。

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 それは“採点のデジタル化”だ。

 20年の東京五輪・パラリンピックで国内最高位スポンサー「ゴールドパートナー」となった富士通は、体操採点の常識を覆す「自動採点支援システム」の開発を進めている。スポーツ界にはなじみのない「3Dレーザーセンサー」技術で選手の動きを立体的に捉え、技を認識することで審判の採点を支援するものだ。

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 体操は、「Dスコア」(演技の難しさ)と「Eスコア」(演技の出来栄え)を合算し、ペナルティーによる減点を加味した結果が最終的な得点となる。これまでは、審判員が演技の進行を見ながら手書きで採点シートに記入し、演技終了後に得点を計算。選手や監督から異議があったときのみ、上級審判員が録画された映像を見て「ビデオ判定」を行っていた。

 このビデオ判定にあたる部分を、自動採点支援システムに置き換える考えだ。「ITと聞くと、職を奪われるというイメージが強いかもしれないが、そうであってはいけないと思う。審判は同時に指導者でもある。体操界の発展を考えると、今のところ審判を減らす考えはない」(富士通 スポーツ・文化イベントビジネス推進本部 スポーツセンシングビジネス企画統括部長 兼 東京オリンピック・パラリンピック推進本部 シニアディレクター 藤原英則さん)

 国際体操連盟や日本体操協会と協力し、体操界全体に革命を起こすかもしれないこの新システム。一体どこが革新的なのか。

富士通 左から、 富士通 スポーツ・文化イベントビジネス推進本部 スポーツセンシングビジネス企画統括部長 兼 東京オリンピック・パラリンピック推進本部 シニアディレクター 藤原英則さんと 富士通 応用研究センター ライフイノベーション研究所 所長 佐々木和雄さん
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