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» 2017年10月25日 18時40分 公開

「NOKIZAL」決算ピックアップ:7億円近かった利益余剰金を“投げ打って”勝負 高級バッグのシェアサービス「ラクサス」

日本全国の企業情報を取り扱うアプリ「NOKIZAL」の“中の人”が、気になる企業業績をピックアップしてご紹介します。

[NOKIZAL,ITmedia]

 ブランドバッグのシェアリングサービス「ラクサス」を運営するラクサス・テクノロジーズ(広島県広島市)が10月24日、官報に掲載した決算公告(16年8月〜17年7月期)によれば、売上高は7億5900万円、経常損失は6億200万円の赤字だった。当期純損失は6億500万円の赤字(前年同期は4億2300万円の赤字)、累積の利益や損失の指標となる利益剰余金は6億2400万円の赤字(同1800万円の赤字)。

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 ラクサス・テクノロジーズは2006年の設立。英会話教材「エブリデイイングリッシュ」の販売から、アプリ「ドラゴンメダル」や「iKotodama」の開発、「鯖みそガム」「曲りなりにも箸」といったユニーク商品まで幅広く手掛けてきたが、近年は15年2月に開始したブランドバッグのシェアリングサービス「ラクサス」に注力。15年10月に3億円、17年1月に14億円を調達し、旧社名のエスから現社名に変更した。

ここがポイント

 看板サービス「ラクサス」は、月額6800円(税別)を払えばエルメスやルイ・ヴィトンなど高級ブランドのバッグ(52ブランド、約2万点)を、返却期限なしでレンタルできるサービスです。ターゲットは「ブランドバッグを使いたいが、気軽には買えない女性」で、サービスを利用して継続する割合が高いのが特徴。17年2月現在、1.2万人超という有料会員のサービス継続率は95%に及ぶそうです。

photo 「ラクサス」が取り扱っているブランドバッグの例(公式サイトより)

 確かに、売上高が約7.6億円なので、月額6800円×1.2万人×利用月数から継続率を推測しても相当高いことが分かります。バッグの平均単価は30万円近いそうなので、1つのバッグを購入して5年間使い続けても、月割り5000円になることを考えれば、6800円でさまざまなバッグを使えるというのは、ターゲットとしている女性にはハマりそうです。ユーザーは約1カ月半に1回のペースで交換しているようなので、取りかえて楽しんでいるようですね。

7億円近い利益余剰金を“投げ打って”勝負

 そんな満足度の高い「ラクサス」は、17億円の調達を成功させ、C2Cサービス「ラクサス エックス」もスタート。今後は海外展開も予定し、スタートアップらしくアクセル全開のイメージです。

 同社は、前述の通り「ラクサス」を始める前も多数の事業を展開し、実は「ラクサス」以前の決算(13年)では7億円近い利益剰余金を積み上げていた地力のある会社です。ある意味、それを潔く“投げ打って”勝負をしています。決算書の具体的な数字から事業を推察してみましょう。

photo 13年の決算では、7億円近い利益余剰金を積み上げていた

 今回の決算数字を見ると、売上高7億円に対して、赤字が6億円を超えています。もちろん“攻める時期”なので先行投資は大きく、数字だけでよい悪いは判断できないところですが、少し気になるのは「売上高の7億円に対し、費用面の売上原価と販管費もそれぞれ7億円前後」と結構かかっているという点です。

 サービス継続率の高さやネット上の評判などを見ていると満足度が高いのもうなずけるのですが、裏を返せばバッグの仕入れ、保管費用やメンテナンス、送料など費用に跳ね返ってくるわけです。仮に売価30万円のバッグを15万円で仕入れてきたとして、現状の2万点をそろえた場合、30億円は必要です。それを10年で償却なら年間3億円、5年なら6億円の減価償却費用がかかることになります。さらに前述の費用を乗せると、あくまで試算ですが、サービス品質を担保するには現状のコストはかかりそうです。

 ビジネスとしてしっかり軌道に乗るかは、シェアリングエコノミービジネスの肝である「資産をいかに多数でシェアできるか(サービス化できるか)」という点に掛かってきます。その点、月額6800円の有料会員数が1.2万人というのは、リリース2年半ということを考えれば、決して悪くない数字です。

 しかし、従来のブランドバッグを“所持”することに意味を感じる層と、“プチプラ”などのファッションに慣れた層の間に位置しそうな「ラクサス」のユーザー層が、マスまで広がるかというと、必ずしも楽観視はできないと思います。

 となると、直近の調達後に掲げた戦略には、C2Cサービスは仕入費用の低減、海外展開はターゲット層の水平拡大のため――という意味合いもあるのかもしれません。

 “投げ打った”ラクサスが日本発のシェアリングエコノミービジネスを強かに成功まで導けるのか、戦略に注目です。

ラクサス・テクノロジーズの過去業績、他の企業情報は「NOKIZAL」で確認できます

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《著者紹介》

平野健児。新卒でWeb広告営業を経験後、Webを中心とした新規事業の立ち上げ請負業務で独立。WebサイトM&Aの「SiteStock」や無料家計簿アプリ「ReceReco」他、多数の新規事業の立ち上げ、運営に携わる。現在は株式会社Plainworksを創業し「NOKIZAL」を運営中。

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