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» 2017年12月12日 08時00分 公開

特集・ミライのクルマ:“食べる”ための自動運転技術 「ロボット農機」は農業を救えるか (1/2)

2020年に向けて盛り上がる自動運転技術。公道を走るクルマだけでなく、閉じられた空間(農地)を走る農業機械にも自動運転レベルがあるのをご存じだろうか。

[山口恵祐,ITmedia]

 世界各国の大手自動車メーカーが開発を進める自動運転技術。乗用車やバス、トラックといった人やモノの“移動”に使われる身近な乗り物の革新に注目が集まっているが、人が“食べていく”ために活躍する、農業機械の世界にも自動運転の波が押し寄せている。

photo ヤンマーが公開した次世代トラクターのコンセプトモデル「YT01」

農業の担い手不足問題、解決の鍵は

 食糧供給や自然環境の保全など、国の存続に必要不可欠な役割を持つ農業だが、就業者の高齢化や後継者が見つからないなど、深刻な担い手不足に直面している。農林水産省によると、農業に従事する人の数は2010年時点で261万人だったのに対し、16年には192万人と、6年間で約69万人も減少した(「農業労働力に関する統計」より)。

 さらに、農業従事者は60〜70代の高年齢層が多くを占める。一方、新たに農業へ参入する人の数は15年に6万6000人、16年には6万人と緩やかな減少傾向にある。今後、高年齢層のリタイヤが進むにつれ、人員の確保や就労定着の促進は大きな課題だ。

photo 農林水産省「平成26年度 食料・農業・農村白書より引用」

テクノロジーで農業の参入ハードルを下げるアプローチ

 農業に従事する人、新規参入する人の減少に歯止めをかけるには、少ない人数でより多くの収穫量を確保するための効率化や負担減、マニュアルだけでは成立しない暗黙知や経験則によるノウハウを次世代に伝える取り組みが必要とされる。

 その効率化で欠かせないのが農業ロボット分野だ。農業従事者1人が担う農地面積の増加を目指す上で、農機の自動運転化が及ぼす期待値は大きい。農林水産省は「18年までに農地内での農機自動走行システムを市販化」「20年までに遠隔監視による無人システムの実現」を目指し、ガイドライン策定や安全装置の研究開発など、「スマート農業」に向けた取り組みを本格的に始めた。

 同省は、乗用車で定義されている自動運転レベルと同様に「農業機械の安全性確保の自動化レベル」を次のように定義している。

農業機械の安全性確保の自動化レベル

【レベル0】手動操作。走行・作業、非常時の記入操作など、操作の全てを使用者が手動で実施

【レベル1】使用者が搭乗した状態での自動化。使用者は農機に搭乗、直線走行部分などハンドル操作の一部などを自動化。自動化されていない部分の操作は全て使用者が実施

【レベル2】使用者の監視下での無人状態での自律走行。ロボット農機は、無人で自律走行(ハンドル操作、発進・停止、作業機制御を自動化)。使用者は、ロボット農機を常時監視し、危険の判断、非常時の操作を実施。基本的に居住地域から離れた農地など、第三者の侵入可能性が著しく低い環境などで使用

【レベル3】無人状態での完全自律走行。ロボット農機は、無人状態で、常時全ての操作を実施。基本的にロボット農機が周囲を監視して、非常時の停止操作を実施(使用者はモニターなどで遠隔監視)

(農林水産省「ロボット農機に関する安全性確保ガイドライン」より)

 18年に実現を目指す農機の自動走行システムは、無人でハンドル操作や発進・停止、作業機の制御を自律的に行える「レベル2」に相当するもの。ただし、無人機は有人による監視下に置くことが条件で、危険の判断や非常時の操作は人間が担う。

photo 18年に実現を目指す、農機の自動運転レベル2

 国内農機メーカー各社は、ガイドラインの策定にあわせ、レベル2相当の自動運転に対応する農機を18年に市場投入する。

大手農機各社、ロボットトラクターを18年に投入

 ヤンマーは、年間の作業時間が最も多いとされるトラクターで無人走行を実現する「ロボットトラクター」の実証実験を進めている。

photo ヤンマーが開発中の自動運転トラクター(ヤンマーWebサイト内より)

 人の監視下で、複数台の無人トラクターが全体の工程や進捗具合を把握し、互いに協調しながら自動運転で作業できる。農地のサイズや形状をあらかじめ入力し、高精度のGPSから取得した位置情報と組み合わせることで、5センチ単位の精度で走行できるという。

photo 現行モデルのトラクター。将来登場するロボットトラクターもこのデザインを踏襲するという
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