ITmedia NEWS > 社会とIT >
ニュース
» 2018年02月19日 09時00分 公開

“日本が知らない”海外のIT:“食品ロス”どう減らす? 「食糧難」解決する世界のスタートアップたちの今

世界的に食糧難に対する不安が広がる中、世界のスタートアップたちは食料廃棄の削減を目指して活動をしているという。

[行武温,ITmedia]

 世界の人口は2050年までに90億人に達するといわれており、食糧難に対する不安が広がっている。その対策として、ドイツのInfarmや米国のAeroFarmをはじめとする「アグリテック(農業+テクノロジー)」企業は、垂直農法という新しい農法を使って生産効率の向上を目指している。

 しかし、毎年生産される食用作物のうち約3分の1が無駄になっているといわれる中、社会全体に食物を行き渡らせるためには、生産量を増やすだけでなく、無駄をいかにカットするかも重要なポイントだ。

 そこで今回は、それぞれのアプローチで食料廃棄の削減を目指すスタートアップを紹介したい。

連載:“日本が知らない”海外のIT

日本にまだ上陸していない、IT関連サービス・製品を紹介する連載。国外を拠点に活動するライター陣が、日本にいるだけでは気付かない海外のIT事情をお届けする。


調理時の無駄をカット

 英国・ロンドンに拠点を置くWinnowは、ホテルや商業施設の調理部門向けに、スマートメーターとタブレットがセットになった「廃棄物削減システム」を開発している。

 同システムでは、ごみ箱に何かが捨てられるたびに自動的にその重量を測定。そしてごみを捨てた人がタブレットで何を捨てたのか選択すれば、1日の営業が終わる頃にはその日の廃棄量が品目別に集計されるのだ。さらに、廃棄物はどのくらいの金額に値するか、そして環境にはどのくらいの影響があるのかといった情報まで確認できる。

 Winnowのシステムは、すでにNovotelやSofitelなどの有名ホテルチェーンに導入されている他、世界中に店舗を持つIKEAも彼らの顧客だ。米CNNの記事によれば、Winnowのシステムを導入してからたった8カ月のうちに、IKEAは全体で90万ドル分(35万人分の食事)もの廃棄量をカットできたのだという。

食品ロス キッチン内に取り付けられたWinnowのシステム(同社のWebサイトより)

余り物を新たな収益・税金対策に

 いくら調理時の無駄を減らしたとしても、準備したものが毎日全て売れるとは限らない。そこで英国Too Good To Goは、レストランの余った料理を販売するためのプラットフォームを立ち上げた。

 同社のアプリを開くと、レストランの一覧が表示される。ユーザーはレストランの概要やメニューを確認して注文を確定(余り物の中身は毎日変わる可能性があるため、サンドイッチやスープといった分類程度で、詳細は記されていない)。その後、指定された時間までに店舗を訪れ、注文の品をピックアップする。

 サービスを立ち上げたきっかけについて、Too Good To Go共同創業者のジェームズ・クルミー(James Crummie)氏は次のように語る――「飲食業界では毎年60万トンもの廃棄が出ているにもかかわらず、英国だけでも100万人もの人々がフードバンク(企業などから寄付された食料を生活困窮者に分配する団体)を利用している。なぜ深い関係にあるこれら2つの問題が同時に発生しているのか、そしてなぜこの状況を是正するような動きがあまりないのかという疑問を持ったのがきっかけだった」

アプリ画面 Too Good To Goのアプリ

 米国のデリバリー企業DoorDashも同じようなソリューションをCSR(企業の社会的責任)の形で提供しようとしている。普段同社はUberEatsのような個人へのフードデリバリーサービスの他、ケータリングなど企業向けのサービスも行っており、今年に入ってからは「Project DASH」と呼ばれるプロジェクトを開始している。

 DoorDashは飢餓問題に取り組む慈善団体Feeding Americaと共同で、飲食店で出た余り物をフードバンクやシェルターに無料で寄付するためのプラットフォームを開発・運営している。

 他にも、Copiaは飲食店が余り物を慈善団体に寄付することで、税金の控除を受けられるような仕組みを構築した。Copiaの顧客となる飲食店にとっては、これまでであれば廃棄されていただろう食品が税金対策に化けるだけでなく、寄付を通じて企業イメージの向上も図れるため、Copiaのビジネスは社会的影響だけでなく、きちんとビジネス上のメリットも生み出せている。

家庭でも無駄を削減

 これまでに紹介したような飲食店向けのサービスを個人向けに提供しているのがMealBoardだ。同社のアプリには大きく分けてレシピ、買い物リスト、食材管理という3つの機能が備わっている。

 まずレシピに関しては、複数のレシピサイトをカバーした検索ツールが準備されている。そこから気に入ったレシピを選ぶと、買い物リストが自動で生成され、買い物後にリストの中身を在庫表に移すだけで、食材管理ができる。

 これらの機能は互いに連携し合っているため、買い物リストはレシピと在庫情報をもとに生成され、料理後はレシピに記載された量をもとに在庫量が減少する。そのため、あらかじめ何日間か分のレシピを決めておけば、食材の残り具合をもとに追加購入が必要なものが通知されるという仕組みだ。

 ユーザーの中には夫婦でアカウントを共有し、1週間分のレシピをもとに食材を管理しながら買い物の負担を分散している人もいるようだ。こうすれば、どちらかが冷蔵庫を確認してもう一方に買い物をお願いする必要はないため、家事の分担にも便利だろう。

アプリ レシピと連携した買い物リスト(MealBoardのWebサイトより)

 食糧難のような社会的問題は、複数の企業や団体、そしてときには国家も協力して取り組まなければならない。そして、もちろん慈善団体の存在には意義があるものの、主に外部の支援から成り立っている彼らの活動は、影響の及ぶ範囲や持続可能性という意味ではビジネスに劣る部分もある。

 そこで本稿で紹介したような企業が、ビジネスとしてそれぞれの角度から問題の解決にあたるというのは、より良い社会を目指す上で、そして他の業界にとっても参考になる例だといえるだろう。

執筆:行武温

編集:岡徳之(Livit


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.