2017年12月、NTTドコモとドワンゴが「dアニメストア ニコニコ支店」(以下、ニコニコ支店)をオープンした。dアニメストア同様月額400円(税別)で1500作品以上・約2万話を視聴でき、niconicoのような「コメント付き視聴」もできる、両社のハイブリッドサービスだ。
ただ、オープン直後は「コメントが少なくてイマイチ」「有料動画にコメント文化は根付くのか」など、ネット上で厳しい意見も出た。サービス開始から約2カ月経った今、ニコニコ支店はどうなっているのか。
「ユーザー数は期待値を高めに設定していたが、順調に推移している」――dアニメストア ニコニコ支店を運営しているNTTドコモの田中伸明開発担当部長(スマートライフビジネス本部プラットフォームビジネス推進部)はこう話す。
ドコモが2012年から提供している「dアニメストア」は、2400以上の作品が月額400円で見放題になる動画サービス。14年にはドコモ以外の端末にも開放したが、その名称から、他キャリアユーザーにアプローチしにくい課題があったという。
一方、niconicoはアニメ好きのユーザーを多く抱えているが、多くの作品が月額制で見放題になるサービスは提供していなかった。「互いの特徴を取り入れた新しいサービスは、ユーザーを増やす戦術の1つ」と田中部長は説明する。
だが、ニコニコ支店開設に当たって懸念点となったのが、niconico最大の特徴でもある「コメント付き視聴」だったという。ユーザーが自由に発言できるコメントは、アニメコンテンツを提供する権利元から不安視されることも予想できたからだ。
「当然議論はあったが、ユーザーを集めるためのプラットフォームを考えた時、ユーザーにとって『コメントがあるのが普通』だった。コンテンツを提供してくれている方々にもそれを説明し、一緒に新しいチャレンジをしようと声をかけた」(田中部長)
オープン後にも課題はあった。すでに「コメント文化」が育っているニコニコ動画と違い、サービス開始時のニコニコ支店のコメントは当然ゼロ。ネットではコメントの少なさを不満に思うユーザーも見られ、オープンから数日後には、niconico上の動画コメントをニコニコ支店の同じ動画に重ねて表示するGoogle Chrome拡張機能を開発する人も現れた。
ドワンゴのニコニコ支店担当者は「会員数の増加に伴い、サービス開始時と比べて各作品のコメントも確実に伸びてきている」と話す。
今ではすでに、1話で4000〜5000件ほどのコメントが付いているアニメもあるという。「オープン時はゼロからスタートしたので、このインパクトは大きい」
コメントの付きやすさは、アニメの作風や「ユーザーがどういうことを表現したいか」によって異なるそうだ。「例えばコメントが多い作品だと、『プリパラ』(編注:アイドルとして成長する女の子たちを描くアニメ作品)などは、コメントでキャラを“応援”することで盛り上がっている」という。
「アニメのようにコアなマーケットの人たちは『自分たちの居場所』を大事にしてくれるので、どんな作品のどんなコメントにも、作品への愛情がある。コメントがあることで、旧作も『違った見方』で面白く視聴してもらえていると思う」(ドワンゴ担当者)
ユーザーの意見を受け、今後はniconico上にあるコメントの移植なども検討するという。「同じコンテンツの視聴体験をコメントで共有するというニコニコ動画の原点を、ニコニコ支店を通じて広げていきたい」
ニコニコ支店の画質は本家dアニメストアと同等のものを提供している。「niconicoで指摘を受けていた画質の悪さみたいなところは、dアニメストア ニコニコ支店にはない」という。
ニコニコ支店の今後について、ドコモの田中部長は「ユーザーに喜んでもらえる『いいサービス』を、商売としてどう提供できるかが重要」と話す。現在ニコニコ支店のアニメ配信数は本家dアニメストアよりも少ないが、今後なるべく同じラインアップになるよう拡充していく考えだ。
「(サービス開始時には)厳しい意見もあったが、自分たちの思い込みで運営するよりもずっといい。『何も言われないことが一番切ない』と思っている。ユーザーからいただいた意見から、サービスをどう変えていけるかが重要だと思う」(田中部長)
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