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» 2018年04月04日 17時17分 公開

なぜ地方のクリーニング屋で機械学習? 「無人店舗作りたい」 たった1人、独学でAI作る副社長の挑戦 (1/2)

福岡県のクリーニング屋がAIを活用している。なぜクリーニング業務にAIが必要なのか。エルアンドエーの田原副社長が語る。

[村上万純,ITmedia]

 「中小企業でお金もない、人もいない。ここ10年でIT化に取り組んできたが、今ある課題や業界の将来を見据え、今はAI(人工知能)を自作している」──福岡県田川市でクリーニング店を8店舗展開するエルアンドエーの田原大輔副社長はこう話す。同社はスーツやズボンなどを判別する画像認識システムなどを導入。人材が不足するクリーニング業界の中で業務効率化を図るためいち早くIT化に取り組み、いずれは無人店舗のオープンを目指す。

田原副社長 エルアンドエーの田原大輔副社長。Googleのメディアセミナーに登壇

IT化に取り組んだ10年

 電話からSkypeによるビデオチャットへ、メールからチャットワークへ、ExcelからGoogleスプレッドシートへ──2008年ごろから10年近くクリーニング業務のIT化を進め、15年11月にGoogleの機械学習用オープンソースライブラリ「TensorFlow」(テンサーフロー)が公開されてからは、AI開発にも本格的に着手。現在は(1)RPA(Robotic Process Automation)とチャットbotを使って、報告書の作成などを簡易化する自然言語処理系のAIと、(2)画像処理とディープラーニングを組み合わせ、衣類の認識や分類をする画像処理系のAI開発に取り組んでいる。

IT 同社のIT化の取り組み

 田原副社長にエンジニアリング経験はなく、プログラミングや機械学習などは全て「YouTubeや本を見ながら独学でやってきた」という。田原副社長は「PCが使えず、ガラケーを使っているような70歳のおばちゃんでもこれらのツールを使って仕事をしている」と笑うが、年齢によって従業員のITリテラシーがバラバラで苦労も多かったと振り返る。

 「メールを使うと下書きが20件くらいたまったり、CCの意味が分からなかったり。ファイル共有にGoogleドライブを使ったり、数字の管理にExcelを使ったりしても、高齢だと分からない人もいる」(田原副社長)

 従業員全員のITリテラシーアップを図るのは難しい――そう考えた田原副社長が目を付けたのがAIだった。意識したのは、「触らないユーザーインタフェースとユーザーエクスペリエンス」。13年ごろから自社で使う専用アプリの開発を進め、数回のボタン操作で済む業務アプリを複数作成。そして、現在も開発を進めるRPAとチャットbotの組み合わせや、画像認識システムを独学で開発し始めた。

やって分かった「機械学習の壁」

 17年11月には、TensorFlowを活用した独自の画像認識システムのβ版が完成。実店舗での実証実験を始めている。店舗内に設置したWebカメラが衣類を捉えると、それがスーツなのか、ズボンなのか、ワイシャツなのか、などを24カテゴリーに分けて自動で判別するという。田原副社長は「とにかくデータが重要で、取り扱いが多いスーツやズボン、ワイシャツなどは約99%の精度で認識できるが、事例の少ないダッフルコートなどはまだ判別が難しい」と話す。

分類 画像からズボンを認識
分類 シャツを認識
分類 画像から衣類を自動で判別
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