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» 2018年04月13日 09時00分 公開

「AIが仕事を奪う」への疑問 いま、“本当に怖がるべきこと”は (3/3)

[松本健太郎,ITmedia]
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 なぜなら、今までと同じ職業に就くためには、その仕事に求められる成果を上げるために必要な作業が自動化されても、今までと同じように自分の力で成果を上げないといけないからです。出来ないなら、他の人に代わってもらうか、必死になって覚える他ありません。

 実際に、その変化は既に起きていて、中スキルのルーティン業務は自動化され雇用が少しずつ減少し、代わって高スキルと低スキルに二極化し始めているとOECDレポートは報告しています。自動化しやすいルーティン業務が真っ先に自動化の候補に挙がっていますが、今度は高度に学習した人工知能により、高スキルのタスクが自動化されることが想定されています。

レポート EU、日本、米国への雇用の変化(OECDレポートより)

 例えば、大規模な機械が導入されて、今まで手作業で異物を取り除いていたのに、ディープラーニングを使って自動化するとします。システムを構築後、誰がその機械の運用を行うのでしょうか? ツールベンダーが毎日訪れはしないでしょう。当然、今まで手作業で対応していた人が真っ先に候補に上がります。

 もちろん、何の訓練もなく「お前がやれ」と言うのはむちゃ振りの極みです。OECDレポートにもあるように、自動化するための道具の訓練、教育が必要になります。では訓練、教育したとしても、何も対応できない場合、どうするべきでしょうか。

メディアの責任、私たちの責任

 自動化によって仕事が奪われるのではなく、自動化されたタスクの操作の仕方、運用の仕方が分からなくて、仕事ができない人扱いされ、結果的に「使えない人」扱いになってしまうのです。国の政策によっては、企業からリストラされるかもしれないし、行政から手厚く保護されるかもしれません。

 間違いなくいえるのは、デジタル化に対する教育支援、あるいは再教育の度合いが、良い自動化を後押しするということです。この人は使えないからダメと切って捨てていては、やがて人がいなくなり、なぜこんな自動化をしているのか知見が残っていないダメな自動化を後押しすることになります。

 では、このようなアーンツ論文やOECDレポートをマスメディアは報道してきたでしょうか。オズボーン論文を報道して「人工知能に私たちの仕事が奪われる!」と強弁したメディアこそ報道する責任があるのではないでしょうか。

 情報のアップデートを担うメディアは1社ぐらいあってもいいと思います。もし報道を点ではなく線で追ってくれるメディアがあれば、例えば18年2月に発覚した厚労省の働き方改革データ偽装問題は、16年12月に経産省で発覚した繊維流通統計調査のデータ改ざん問題と全く同じであり、データを自分たちの都合のいいように書き換える官僚が一定層存在する構造的な問題だと分かったはずです。

 いまや「人工知能に仕事が奪われる」という文章のリード文は、ものすごく恥ずかしいのです。世界は既に「デジタル化に向けて私たちは何を学び直すべきか?」を話しているからです。2周どころか、3周、4周回遅れの議題だと言えます。

 「人工知能が原因で失業する」とか、まだ信じてるの? オズボーン論文を持ち出して、なくなるかもしれない職業一覧をまだ紹介しているの? という問いかけで、本文を締めたいと思います。ご静聴ありがとうございました。

著者プロフィール:松本健太郎

株式会社デコム R&D部門マネージャー。 セイバーメトリクスなどのスポーツ分析は評判が高く、NHKに出演した経験もある。他にも政治、経済、文化などさまざまなデータをデジタル化し、分析・予測することを得意とする。 本業はインサイトを発見するためのデータアナリティクス手法を開発すること。

著者連絡先はこちら→kentaro.matsumoto@decom.org


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