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異色のバーチャルYouTuber集団「にじさんじ」なぜ人気? 「月ノ美兎」生んだVTuber企業に聞く(2/2 ページ)

» 2018年04月23日 12時30分 公開
[村上万純ITmedia]
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VTuberの生放送、先駆けに

 いちからは、iPhone X向けのVTuber用ライブ配信アプリをいち早く開発(1月11日に発表)。当時人気があったキズナアイや輝夜月などは、3Dモデルで動画をアップロードしていたが、にじさんじでは2Dモデルでライブ配信を行った。岩永COOは「2Dと3Dで視聴者の体験はそこまで変わらない。それより、当時はまだフタが開いていなかった、VTuberによる生放送という体験を提供できたことが大きい」と話す。

iPhone X向けのVTuber用ライブ配信アプリ「にじさんじ」(にじさんじは、アプリ名と配信者グループ両方を指すという)
にじさんじアプリを開発・提供するいちからの岩永太貴COO

 「動画と同じように語られがちだが、ライブ配信はコメントで配信者に干渉でき、未来を変える可能性もある。視聴者も自分事として捉え、視聴体験が受け身にならない」(岩永COO)

 4月7日に放送された「月ノ美兎の放課後ニコ生放送局」は、来場者数(アクセス数)20万人、コメント数42万を突破。いちからは、あくまで配信者とファンのエンゲージメントを大切にしているという。「生放送は視聴者数で優劣が付けられない。視聴者が多いとコミュニケーションの密度が薄まってしまう」と岩永COOは考える。

 にじさんじのメンバーはTwitterアカウントを持っているが、ツイートへのリプライ、いいね、などに加え、ファンアートもよく投稿されている。「キズナアイさんのYouTubeチャンネル登録者数は月ノ美兎の約10倍だが、ファンアートの数も10倍かというとそうじゃない」(岩永COO)

 ライブ配信中の投げ銭や、配信者のボイスなどのアイテム販売を通したマネタイズも視野に入れているため、ユーザー・配信者間のエンゲージメントは運営としても重要な指標となるようだ。

にじさんじは、VTuberの登竜門

 VTuberの生放送を他に先駆けて行ったにじさんじ。iPhone1台で手軽に配信できることから、「VTuberの登竜門」としても位置付けられる。

 「iPhoneで気軽に配信できるので、VTuberの駆け出しはにじさんじでいいよね、と思ってもらえればいい」と岩永COOは話す。にじさんじは公式ライバーを募集しているが、応募者のモチベーションはさまざまで、「プロの声優になりたい」「有名になりたい」という人もいれば、「にじさんじに入ることがゴール」という人もいるという。

 4月9日には、ミライアカリも所属するVTuberのマネジメント事務所「ENTUM」(エンタム)が開設された。こちらのオーディションは「18歳以上」という条件があり、事務所も配信者を手厚く支援する方針。応募に条件を設けず、配信者に干渉しないいちからとは運営スタンスが異なる。

【訂正:2018年4月23日13時50分更新 ※初出時、エンタムのオーディション募集条件について誤りがありました。お詫びして訂正致します。】

エンタム バーチャルYouTuberのマネジメント事務所「ENTUM」(エンタム)

 「VTuberデビューはにじさんじで、例えばCMに出たいから次はエンタムで活動するという選択肢があってもいい。AKBグループも、卒業したら女優になったり、歌手になったりといろいろですよね。にじさんじも、たくさんの出口を用意したい」(岩永COO)

 配信者視点で見た場合、「VTuberをやってみたいけど、機材の用意とか大変そうだし、難しそう」「会社で働きながら、空いた時間でライブ配信してみたい」など、VTuberに興味はあるけどハードルが高くて踏みとどまっている人にとって、結果へのコミットを要求しないにじさんじは魅力的に映るのかもしれない。

 昨今のVTuberブームは「おじさんが美少女になれる」という文脈で語られることが多いが、にじさんじでは男性VTuberも人気だ。岩永COOも自身のTwitterで、3期生の男性倍率は300倍になるかもしれないとツイート。女性ファンを狙ったイケメンライバー集団についても構想を練っているという。

 目まぐるしく状況が変わっていくVTuber界。異色ライバー集団の今後の活動にも注目が集まる。

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