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「オラソニック」ブランドが復活 第1弾は「AI入力」付きワイヤレススピーカー

» 2018年05月17日 15時41分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]

 インターアクションは5月17日、新生「Olasonic」(オラソニック)ブランドの第1弾商品としてBluetoothスピーカー「IA-BT7」を発表した。スマートスピーカーとの接続を想定した「AI入力」を持つユニークな製品だ。6月8日にオープン価格で発売予定。店頭では3万円前後(税別)になる見通し。

「IA-BT7」写真の「ウォルナット」のほか、ピアノ塗装の「シルクホワイト」がある

 オラソニックは、ソニー出身の山本喜則氏が東和電子で社長を務めていた時代に立ち上げたオーディオブランドだ。2010年3月に発売した卵形のPC用スピーカーで注目を集め、その後もCDジャケットサイズのオーディオシステム「NANOCOMPO」(ナノコンポ)などを送り出してきた。

 しかし16年3月に山本氏が退社。東和電子は17年10月にOlasonicブランドを含むオーディオ事業を、半導体検査装置などを手掛けるインターアクションに譲渡した

 一度は終わったかと思われていたオラソニックだが、インターアクションはコンシューマー市場への参入を目指し、山本氏が新たに設立した設計事務所・SOZOデザインとタッグを組む。「SOZOデザインが設計し、インターアクションが売る」という形でオラソニックブランドは復活を果たした。

 「ソニーや東和電子の時代から一緒に仕事をしているスタッフたちもSOZOデザインに在籍している。これまでと変わらない仕事ができる」(山本氏)

スマートスピーカーは割に合わない

 ブランド復活の第1弾商品として、当初はスマートスピーカーを検討していた。インターアクションがIoT事業を手掛けていたためだが、「スマートスピーカーを作ろうとしても、音質に注力すると価格を3〜4万円程度に設定しないと見合わない。一方でGoogleやAmazon.comから6000円程度の製品が出ている。投資は得策ではないと判断した」(山本氏)

 次に考えたのは、スマートスピーカーに接続するアクティブスピーカーだった。スマートスピーカーは「Spotify」などの定額制ストリーミングサービスで手軽に、音声操作で楽しめることが大きなメリット。しかし内蔵スピーカーは音質面で満足していない人達も多いことに目を付けた。さらにターゲット層の拡大を狙ってBluetoothスピーカーというスタイルを選択する。「ソニーやBOSEといった大手ブランドからも3万円前後で音が良いBluetoothスピーカーが出ている。これを超えようと思った」(山本氏)

Bluetoothモジュールは音質重視で自社設計。チップはクアルコム製でコーデックはLDAC、aptX HDをサポートする
天面にNFC

 IA-BT7は、ラジカセのような薄型ボディーに変則的なステレオスピーカーを搭載している。中央に11センチ径のサブウーファーが陣取り、その左右に4万Hzまで再生できる新開発の57ミリ径フルレンジユニットを配置した。指向性の高い中高音はステレオ配置にしながら、大きなサブウーファーを使って低音の迫力を増すレイアウトだ。背面にはドローンコーン型のパッシブラジエーターを設け、薄型の筐体に見合わない豊かな低音を作り出す。木製キャビネットを採用したことで自然な響きを実現できたという。

木製キャビネット
フルレンジとサブウーファーのクロスオーバー周波数は200Hz

 各スピーカーユニットは、TIの新型デジタルアンプ「TAS5782」を用いてバイアンプ駆動。TAS5782は前段にDSP(デジタルシグナルプロセッサ)を持ち、チャンネルデバイダーやイコライザーとしても働く。

 音質チューニングは、著名アーティストを何人も手掛けている音楽スタジオのミキサーズラボが協力した。「ミキサーズラボの人達は大胆に音をいじり、華やかなボーカルと音量を絞っても楽曲のイメージが崩れないチューニングにしてくれた。一般の家庭向きだと思う」(山本氏)

「AI」入力の意味

 IA-BT7の入力操作部には「AI/Audio」と印刷があるが、背面には“ただの”アナログステレオミニ端子しかない。これはAmazon Echoの音声出力と接続するための入力端子だという。「Google Homeの場合もChrome Castを使えば同じことができる。4万Hzまで対応できるアナログ端子になっているため、音質面でBluetooth接続より有利だ」(山本氏)

「AI/Audio」の表記。製品の外形寸法は275(幅)×144(高さ)×65(奥行き)ミリ。重量は2.2キログラムとなる。バッテリーは内蔵せず、ACアダプターが付属する

 「AI」という表示には、長らくオーディオ業界に身を置いてきた山本氏のオマージュも含まれている。1980年代、CD黎明期のミニコンポに見られた「CD」という表示。その多くは普通のアナログ入力端子で他の端子(PHONO入力を除く)と変わらなかったが、「CDプレーヤーがつながる、という安心感でよく売れた」。AI入力は、その現代版だという。

 同時にBluetoothスピーカーの新しい用途を提案する意図もある。「スマートスピーカーと組み合わせてストリーミング音楽を楽しめる他、DAP(デジタルオーディオプレーヤー)などをつないでハイレゾ再生もできる」(山本氏)。新生オラソニックブランドの第1弾商品は、ワイヤレスの手軽さを入口としながら、奥の深いスピーカーに仕上がった。

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