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» 2018年06月26日 07時00分 公開

“中の人”が明かすパソコン裏話:GPSがないPCで現在地を特定できる理由

メーカーの中の人だからこそ知っている“PCづくりの裏話”を明かすこの連載。今回は、GPSが無くても大まかな位置情報が分かるPCの仕組みについて解説します。

[白木智幸(日本HP),ITmedia]

 こんにちは。日本HPで製品企画を担当している白木智幸です。皆さんはPCのブラウザでマップを開いたときに、現在地が表示されてびっくりした経験はないでしょうか。GPSを搭載しているスマートフォンなどでは当たり前の機能ですが、「PCでも現在位置が分かっちゃうの?」と不思議に思った方もいるかもしれません。今回はそんな素朴な疑問に切り込んでみたいと思います。

おなじみの「GPS:グローバル・ポジショニング・システム」とは

 現在位置を特定する仕組みといえば、GPSを思い浮かべる方が多いはずです。もともと米国の軍事用途に開発されたといわれていますが、実際、スマートフォンはおろか、フィーチャーフォンの時代以前からGPSはは民生機などに組み込まれ、一般の人にとっても身近な存在となりました。

 まるでスパイ映画のように、ジャングルの奥地でも太平洋上でも、基本的に空が見渡せる場所であれば、地球上どこでも居場所を特定できる素晴らしいものです。

photo 船舶などでは欠かせないものです

 GPSは、地球上を周回する人工衛星から送られる「衛星の位置情報」と「その位置情報を含む電波を発した時刻」を使って自身の位置を特定します。1度に4つ以上の人工衛星から電波を受信することで、現在位置(緯度、経度)を割り出すのです。

 少し余談ですが、一般相対性理論で解説されているように、地球上と宇宙空間は重力が異なり、後者はわずかに時間が早く進んでいます。正確な時計を使っていても必ず誤差が生じるため、人工衛星は時計の誤差を自動的に修正しながら運用しているそうです。こんなストーリーから、私はGPSにちょっとロマンを感じてしまいます。

 さて、GPSで得られる情報は緯度と経度だけです。この数字をネットから取得した地図に当てはめることで、私たちユーザーは便利に見やすく使えるようになります。

 ちなみにGPSにはA-GPSといって、「携帯の基地局から送られる衛星軌道データとGPSの時刻信号を組み合わせて位置を割り出すタイプ」と、「衛星から送られてくる衛星軌道データとGPSの時刻信号を利用するスタンドアロン」の2つがあります。

 スタンドアロンの場合は、電源を入れてから最初の測位を完了するまでに時間はかかりますが、ネットにつながらない圏外でも位置を割り出せます。A-GPSの場合は、携帯基地局からGPS測位に必要な衛星軌道データを高速に得られるので、電源を入れてから素早く測位できるのが特徴です。

 登山や航海にも欠かせないGPSですが、弱点もあります。

GPSの弱点は……都会?

 スマートフォンのカーナビアプリを使っていてトンネルや高架下に入ったとき、マップに表示されていた自車のアイコンが前に進まなくなった経験がありませんか? 衛星が発する電波は、地下、高架下、建物の中、ビルの影には届きにくく、上空がひらけている場所でなければその力を発揮できません。シンプルに言えば、GPSは「都会が苦手」なのです。

photo ビルの陰に隠れてしまい、4つのGPS衛星からの電波を受信できないとGPS測位ができない

 カーナビ専用機の場合はGPSから位置情報が得られないとき、クルマの車速信号やジャイロセンサー、加速度センサーによる方向、傾き、速度といった情報によって位置を特定し続けます。

 PCの場合、屋内で使う用途が比較的多いはずですから、積極的にGPSが活用される場面は限られるでしょう。PC市場を見渡しても、GPSを内蔵したPCはほぼ見かけません。では、どのようにしてPCは現在地を取得できるのでしょうか。

PCが現在地を取得する方法はさまざま

 実は、PCやタブレットもカーナビと同じようにGPSが頼りにならない場面(=搭載していない)では、Wi-Fi、携帯電話基地局の位置情報、ネットワークのIPアドレス情報を使って現在地を特定しています。

 なぜWi-Fiで位置情報が分かるかというと、GoogleやAppleといったプラットフォーマーが、Wi-Fi機器固有のMACアドレスと位置情報がひも付けられたデータベースを構築しており、それを参照できるからです。この情報は頻繁に更新されており、とても正確です。

 Wi-Fiや携帯基地局の電波は届く範囲が限られているので、ユーザーがその範囲内にいることを推測できます。また、Wi-Fiはビルや建物の中、地下など、GPSが使えない場所でも大いに役立ちます。

 特にWi-Fiの電波は携帯基地局と比べてもあまり遠くには届きませんから、より正確な位置を特定できるというわけです。

 IPアドレスは、プロバイダーの所在地情報から大まかな位置情報を割り出せます。地域に密着した内容のWeb広告を表示するような用途に活用されています。

 これらの位置情報は「Geolocation API」として、アプリやブラウザ経由で開発者が利用できます。GPSの位置情報が得られなくても現在地に応じたコンテンツを表示するなど便利に使えます。

 では、「GPSの存在意義は?」と疑問に思われる方もいるでしょう。それは、なんといってもその正確性です。衛星からの電波が取得さえすれば、最も正確に現在位置を割り出せます。


 働き方改革によってモバイルPCを持ち出す機会がどんどん増えていきます。そんな中で位置情報も仕事の効率化やセキュリティといった目的で活用が進むでしょう。そんなときに位置情報の取得手段としてどういったものを検討すべきか、参考になれば幸いです。

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著者:白木智幸(しろき・ともゆき)

日本HP PC&タブレットエバンジェリスト。パーソナルシステムズ事業本部に所属し、法人向けタブレット製品のプロダクトマネージャ(製品企画)とビジネスプラン(販売計画)を担当。PCやタブレットの楽しさや素晴らしさを広くお伝えすることを通じ、グローバル化の進む現代でよりよい働き方を実現するためのエッセンスを提供することがテーマ


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