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聴力サポートに自動外国語翻訳 もう“聞く”だけじゃない完全ワイヤレスイヤフォン最新事情(1/3 ページ)

» 2018年06月26日 07時00分 公開
[山本敦ITmedia]

 完全ワイヤレスイヤフォンといえば音楽を聞くためのデバイスであるというのが一般的な認識だが、「イヤフォン+α」の価値を提案するスマートなイヤフォンが続々と生まれている。今回はその中から面白い3つのスマートイヤフォンをピックアップしてみよう。

 左右イヤフォンの接続にもケーブルを使わない完全ワイヤレスイヤフォンは、約2年前から徐々に製品が増えてきた。今では左右デバイス間の接続が安定し、バッテリーの駆動時間も延びてきたことから、従来のネックバンドタイプワイヤレスイヤフォンに取って代わるくらいの勢いで完全ワイヤレスイヤフォンが普及しつつある。現在、人気の製品の1つは多くのスポーツ選手も愛用するAppleの「AirPods」だ。

完全ワイヤレスイヤフォンの代表格、Appleの「AirPods」

 一方、直近の2年前後で急速に注目されてきた完全ワイヤレスイヤフォンの中に、音楽を聞くこと以外のさまざまな機能を搭載し、さらに“スマート化”した製品がある。例えばソニーの「Xperia Ear Duo/XEA20」だ。

複数のAIアシスタントが使える「Xperia Ear Duo」

AI連携を特徴とする完全ワイヤレスイヤフォン「Xperia Ear Duo」

 Xperia Ear Duoは、スマートスピーカーでおなじみの「AIアシスタント」に対応した完全ワイヤレスイヤフォンだ。Android OSを搭載するスマートフォンと一緒に使うと、ソニー独自のAIアシスタント「Assistant for Xperia」と4基のビームフォーミングマイクを搭載するイヤフォン部でユーザーの音声コマンドを認識し、声による操作で電話をかけたりメッセージが送れたりする。またはカレンダーの予定やニュース、天気などを訪ね、音声で情報を得ることも可能だ。

 設定を行えばLINEの「Clova」や「Googleアシスタント」に「Siri」、ドコモの端末とペアリングして使う場合は「my daiz」と複数のAIアシスタントと連携しながら便利な機能やサービスが使えるところも、このイヤフォンの特徴だ。

本体内のドライバーが出力した音は、耳の下にまわるフックを兼ねた音道管を通って、ノズルの先端から耳穴に届くオープンエア構造を採用している

 ハウジングをオープン型としたことで、周囲の音や人との会話の声を再生中の音楽と同時に聞き取れるのもXperia Ear Duoならではの体験である。商品を企画開発したソニーモバイルの狙いは、日々の生活に欠かせなくなってきたスマホの画面に四六時中目を落として過ごす生活スタイルからユーザーを解放することだという。メッセージやLINEのやりとりがスマホの画面を見なくても音声だけでできて、さらに周囲の音にも注意が向けられるイヤフォンを身に着けていれば、次第に目線をスマホの画面から「Look Up」できるという考えだ。

 実際にXperia Ear Duoによる音楽の“ながら聞き”スタイルには独特の魅力があるし、意外と音楽もしっかりと聞ける。AIアシスタントとの連携はGoogleアシスタントやClovaの操作感が特に良かった。ただ、せっかく数々のスマート機能をそろえていながらiPhoneとペアリングした時にまだ使えないものが多いのは残念。早くiOS対応を強化してほしいところだ。

ソニー独自のAIアシスタントのほか、LINEのClovaとの音声操作によるスムーズな連携を可能にしている

 オープン型のXperia Ear Duoを使っていると周囲の音が自然に聞こえてくるので、ついイヤフォンを着けっぱなしにしてしまう。作ったソニーとしてはまさしく「狙い通り」なのだろうが、バッテリーライフがもっと必要になるという課題も浮き彫りになってきた。いまイヤフォンの内蔵バッテリーだけで音楽再生は連続4時間、通話は連続2.5時間に対応する。スタンバイ状態であればもっと長い時間充電せずに使えるのだが、1日の中のどこかでチャージは必要だ。スタミナ性能を上げて、急速充電にも対応する方向で現在の課題を解決すれば、多くの人がスマホやスマートウォッチのようにイヤフォンを常時身に着けるようになるかもしれない。

 ちなみに宅内であれば、スマホなどモバイル端末やウェアラブルタイプのIoTデバイスを身に着けたままワイヤレス給電ができる技術も芽吹いている。筆者が以前にCESを取材した時に見つけた、アメリカのベンチャー企業Ossiaが開発するワイヤレス給電技術「Cota」(コタ)もその一例だ。

2016年のCESに米のスタートアップOssiaが出展したワイヤレス給電技術の「Cota」

 CotaはWi-Fiと同じ2.4GHz帯の電波を使い、約10メートル離れた場所からスマート機器に最大1ワットの給電ができるという特徴を持っている。宅内にセットした送信側のチャージャーから受信側の端末に組み込んだレシーバーに常時チャージができて、しかも送受信端末の間に遮蔽物があったり、受信側が動いたりしても給電する。

2.4GHzデジタル無線技術を使って10m以内の場所にある、“動いているもの”も含むデバイスへのワイヤレス給電・充電を実現している

 以前、筆者が取材した時にはKDDIがCotaに出資して実用化に向けた開発を始めた段階だったが、技術の成熟とともに電波法の改正など法整備も必要になることから、Xperia Ear Duoのようなスマートイヤフォンで使えるようになるまでにはもう少し時間がかかりそうだ。同様の技術が海外から普及して日本にも上陸することになるのか、今後の動向に注目したい。

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