おおつね これまで竹中さんが謝罪と広報視点で今までマスコミ対策、雑誌対策とかやられていたのと同じように、ネットの謝罪対策・広報対策とかネットメディア特性に合わせたものがあると思うんですよね。日大事件に関して言うと、アメフトの試合中の動画がネットで公開されてみんなが見て「これはあかんわ」って言えるようになったからこそ、燃えあがったっていう。
竹中 SNS上の動画とか画像だから広がったのは確かですね。それもまたSNSという新たなメディアが持つ力やと思います。そんななかでテレビの特性も、SNSに刺激を受けて変わってきてると思うんです。例えばこの前の学生さんが会見されたときは、前日に「翌明日何月何日の14時にどこどこでやります」というリリースが入ったんですよね。
おおつね 14時台は、ワイドショーとかお昼の番組がある時間帯ですね。
竹中 昼にワイドショーで生放送。それも被加害者の彼が自分の言葉を選びながら生放送でやるっていう同時性があった。一方、大学側の会見は翌日の20時からだったんですけども、告示したのが当日の19時だったんですね。
おおつね もう直前ですか。
竹中 直前ですよ。記者の方々が昼間に取材してその編集や次の日の打ち合わせをやってらっしゃる時間帯に「はい、1時間後に来てちょうだいね」って。
おおつね ちょっとした悪意みたいなのもありますよね。
竹中 「やるからええやんか」みたいな。「来られへんかったらあんたのほうが悪いねん」いう勢いですわ。しかも、段取りが悪かった。あの日の会見は謝罪だったのか現状の報告だったのか、ゴールが見えなかった。前日の選手の会見を受けて、反論を用意するとか準備ができたはずなんですけど、ばたばたばたーってして。その上、登場したのがあの迷司会者。あんな人久しぶりに見ましたね。
おおつね 日大の広報の方らしいですね。
竹中 あの後、打ち上げか何か入れてたのか、急いでる理由がわからなかったですね。監督がしゃべろうとしたらあの司会者が口挟んでしゃべれない。1時間半で終わらなあかん理由があるんだったら事前に「20時まででお願いします」って言うてたら、記者さんも理解してくださるはずですけど。そんなんも無いまま「はい時間が来ました」って。どの口が言うてはんねん、でしょ。
おおつね (笑)。
竹中 で、その後、学長さんの会見があった。説明してるときに「志願者が減るんちゃうか」とか「就職減るんちゃうかって心配してますねん」みたいないらんこと言うでしょ。それ言いに来たん? みたいな。そりゃ日大に通ってらっしゃる人とか親御さんとか関係者に「すみません」っていうのはある必要だと思います。でも「ご心配かけてすみません。早く名誉挽回します」というのは内輪の話ですよ。会見は、天下のメディアを通して全国民の方へのメッセージを届ける場じゃないですか。
おおつね 監督やコーチも「ちょっとタチの悪い反則は確かにしたけれども、ここまで大事になるようなことじゃないだろう」っていうスタンスで会見の場に来てましたね。
竹中 やっぱり立場も考えて言わないとあかんのですよね。大学側は学生を守らないとあかんですよ。それを見てて、例えばお母さん方も「うちの子、日大行っても大丈夫か」ってなったわけでしょ。はたから見てる人も「就職率知らんで」「受験者数減るよね」って。それがネットを通じて大きな声になっていくわけで。
おおつね 上層部の方は「インターネットで日大がいじめられてる」という風に見えるんでしょうね。一般の人たちの「あんな対応するのはひどいじゃないか」っていう普通の感想でも、何万人という人の声がネット上に溢れかえったら、彼らからしたらいじめられてるように見える。
竹中 ものすごい力になっていきますよね。
おおつね それって20年前はみんなの家庭とか居酒屋で収まってたような話が、いまネット上で見えるようになったっていうことですね。
(第2回に続く)
竹中功著「よい謝罪」は謝罪会見の段取り、謝罪シナリオ、日頃からの準備、コンプライアンス研修など、広報・PR関係者必携の内容と評価が高い。
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