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はやぶさ2が“黒い小惑星”に到着 「局面変わった」と期待

» 2018年06月27日 20時16分 公開
[片渕陽平ITmedia]

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機「はやぶさ2」が6月27日に到着した小惑星「リュウグウ」は、黒い見た目の小惑星だ。プロジェクトチームの杉田精司さん(光学航法カメラ担当)は「炭素に富んだ惑星といえる」と説明する。

photo JAXAの資料より

 現在、米国航空宇宙局(NASA)が探査を進めている別の小惑星「ベヌー」との類似点も多いと分かり、杉田さんは「比較できる点が増えた。局面が変わった」と期待を寄せている。

 6月27日午前9時35分(日本時間)、はやぶさ2はリュウグウの上空約20キロ地点に到着した。飛行時間1302日、総飛行距離は約32億キロだった。はやぶさ2に搭載するカメラが、約22キロ地点から捉えたリュウグウは、そろばん玉のような姿。表面にはクレーターと、無数の岩塊が見られるという。赤道部分の直径は約900メートル。

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 「大き目の岩塊がたくさんあると、模様、構造や組成などを調べられる。これほどのサイズの岩塊は、リュウグウで生まれたものではなく、母天体から来た可能性が高い。岩塊の構造が分かるということは、母天体の起源を知ることにつながる。母天体は寿命が非常に長いはずで、太陽系の起源や進化を議論する材料にできる」(杉田さん)

 表面の色合いは、地球などと比べると暗い。杉田さんによれば、光の反射率が「炭素質コンドライト」という隕石に近く、炭素を多く含んだC型小惑星と考えられる。一方、NASAの探査機「OSIRIS-REx」が2018年内に到着を予定している小惑星ベヌーも、同様の小惑星で、形も似ていることから「比較点がずっと増えた」という。

 「ベヌーの研究者(NASA側)はJAXAが公開する写真を毎日見ては盛り上がっていて、『ちょっと待って』と言いたいほどだ」(杉田さん)

 はやぶさ2は、可視光のカメラの他、赤外線で温度を測るカメラや、レーザーで距離を測るLiDAR(Light Detection and Ranging)などを搭載している。そうした機器を駆使し、上空観測した結果から、プロジェクトチームはリュウグウの立体模型を作成。物質の分布状況などを見ながら、はやぶさ2が着陸、表面物質を採取する地点を決める。

 着陸位置は8月下旬に決定。9〜10月に着陸を予定している。その後は、上空から銅の塊を打ち込み、人工クレーターを作成して地下物質を採取する計画もある。19年11〜12月にリュウグウを出発させ、2020年末に地球へと帰還する予定だ。

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小惑星探査は「はやぶさが入口を切り開いた」

 はやぶさ2の津田雄一プロジェクトマネジャーは「到着するだけで成果があるが、そこから探査が始まる。慎重さと大胆さが必要」と難しさを語る。はやぶさ2は(1)到着、(2)上空探査、(3)着陸と表面物質の採取、(4)地球への帰還――と「通常の探査と比べると3〜4倍のステップがある」(津田さん)

 小惑星の多くは、火星と木星の間の「小惑星帯」に存在している。太陽から距離が近いところにはS型、小惑星帯の中間にはC型、さらに遠くには、太陽系が生まれた初期の情報を多く持っているというD型、P型の小惑星が存在しているとされている。

 「D型、P型と調べていくことで、太陽系の謎、われわれ生命を取り巻く環境の謎を解明できる。現段階では、地球へ帰ってくるとなるとC型が限界。これを遠くに伸ばすと、別の世界が見えてくる」

 「(前回の)はやぶさが入口を切り開き、研究がS型からC型へと移ってきた経緯がある。さらに小惑星探査を推し進めたい」(津田さん)

photo JAXAのプロジェクトチームメンバー。中央が津田雄一プロジェクトマネジャー、最も右が杉田精司さん(光学航法カメラ担当)=JAXAのWebサイトより

【訂正:2018年6月27日23時30分更新 ※当初、リュウグウの直径を約900キロとしていましたが、正しくは約900メートルの誤りでした。お詫びして訂正いたします。】

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