Google検索のアルゴリズムは昔から謎です。FTCやEUから「不公平なことしてるんじゃないの?」と文句を言われたときも、結局詳細な説明はしなかったようです。たぶん、説明しても理解できる人はほとんどいないのではないでしょうか。それに、「透明性」が重視される昨今とはいえ、検索アルゴリズムを開示してしまうと、SEOで悪用されてしまうので、なかなか単純にはいきません。
そんな検索にまつわる複雑な話を、背景もしっかり把握して噛み砕いて記事にしてくれるのが、米検索専門メディア、Search Engine Landです。このメディアは、20年以上前(つまりGoogle誕生より前)にダニー・サリバンさんがスタートしました。ずいぶん参考にさせてもらっています。そのサリバンさんが昨年6月に引退宣言したときは、さみしかったです。でもなんと、彼はその4カ月後、Googleの社員になったのでした。
米CNBCのインタビューで、サリバンさんはGoogle従業員としての初出社日は緊張しちゃった、と話しています。
なにしろサリバンさんは、Googleの動向についてはいいことも悪いことも、公正な立場で報道してきました。Googleにとって耳の痛いこともいろいろ。だからキャンパスから放り出されるんじゃないかと思ったそうです。
そんなサリバンさんをスカウトしたのは、4月から検索の責任者になっていたGoogleのベテラン従業員、ベン・ゴメスさんでした。サリバンさんの引退宣言を読んで、アプローチしたのです。
サリバンさんは引退宣言で、これからは大好きなSF関連のブログを書いていくと言っていたのに、「うちにきて、Googleや検索について解説して、普通の人たちとの関係改善に協力してほしい」とお願いされ、ジャーナリストとしては知り得なかった内情を見られる魅力にひかれてOKしたのでした。
LinkedInによると、肩書きはなし。「一般の人々がGoogle検索とGoogleの理解を深めることと、一般の意見を聞き、Googleに改善を促すのを助ける」人となっています。
2017年11月に「Google SearchLiaison」という専用Twitterアカウントを開設し、そのミッションのために日々ツイートしています。このアカウントの概要には、「Googleの検索担当公的リエゾン(連絡係)、@dannysullivanがGoogle検索のしくみについての洞察を共有しています」とあります。
まだ46ツイートしかしていませんが、就任そうそう、テキサス州での銃乱射事件でGoogle検索でデマ情報が上位に表示されると批判されたとき、誠実に説明(リンク先はTwitterのモーメント)し、鎮火に大きく貢献しました。
アルゴリズム変更についてのツイートなどもしていて、かつての同僚ジャーナリスト、バリー・シュワルツさんにいろいろつっこまれたりしながら日々奮闘しています。
Googleの中の人として、公式ブログで解説もしています。今のところ新機能の発表ではなく、既にある機能を理解してもらうのが目的の長い記事です。丁寧で分かりやすいのですが、それだけに長くて、残念ながらあまり読まれていないかも。
いろんな情報があふれる中、Googleの検索のしくみについてちゃんと理解するためにわざわざ時間を費やしたいとは、なかなか思えない。わかりにくいと文句は言っても、長い解説は読みたくない。それが普通のユーザーというものだと思います。
「Googleは“真実エンジン”ではありません。Googleの役割は皆さんに良い情報を提供することではあっても、最終的には皆さんが皆さん自身で情報を処理しなければならないということを、どうやって理解してもらうかが大きな課題です。Googleは情報は提供できますが、物事の真実を告げることはできません」(サリバンさん)
フェイクニュースやデマ問題は、ユーザーが裏をとる習慣をつけることで、ある程度は回避できるものではないでしょうか。サリバンさんにはこれから、そういうユーザー啓蒙の発信もしてほしいです。
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