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中国は「VR大国」になるか 東京ドーム約28個分、巨大テーマパークの正体“日本が知らない”海外のIT(1/2 ページ)

» 2018年07月25日 06時00分 公開
[中井千尋ITmedia]

 2018年4月29日、中国南西部・貴州省に巨大なVR(仮想現実)テーマパーク「Oriental Science Fiction Valley」(東方科幻谷)が開園した。その大きさはなんと東京ドーム約28個分に匹敵する。

 さすがは人口13億人超の中国。スケールの違いを感じるが、なぜここまで大規模なテーマパークが出現したのか。果たしてどのようなテーマパークなのか。中国VRマーケットの現状と合わせてお伝えする。

35個のVRアトラクション

VR 東京ドーム約28個分の広さを誇る(公式サイトより)

 Oriental Science Fiction Valleyのテーマは「SF」。入り口には、人気アニメ「トランスフォーマー」に出てきそうな高さ53メートルのロボットがそびえ立ち、その上にはバンジージャンプ台を設置。後方にはさまざまなアトラクションが15のパビリオンに分かれて並ぶ。

VR テーマパーク入り口付近でビジターを出迎える巨大ロボット(中国CGTNのYouTubeより)

 通常のテーマパークと異なるのは、全てのアトラクションにVRテクノロジーを活用していること。ローラーコースターやゴーカート、フリーフォールなどといった一般的なアトラクションは一切ない。

 アトラクションは全部で35個、その種類は宇宙船ツアーやバーチャルローラーコースター、シューティングゲームなど。ビジターは各アトラクションの乗り場で渡されるVRヘッドセットを装着して楽しむ。

VR ローラーコースターに乗り込みヘッドセットを装着するビジター(中国CGTNのYouTubeより)

 人気SF映画「スター・ウォーズ」をテーマにした第1パビリオンの注目アトラクションは、VRを導入したローラーコースターだ。乗客は18人乗りの車両にヘッドセットを装着して乗り込む。実際のローラーコースターと同様、約2分間ホール内を走ることで、臨場感のあるVR映像に加え、身体的にもスリリングな体験を楽しめる。

 同じく、スター・ウォーズをモチーフにした第3パビリオンは「トレーニング・キャンプ」がテーマ。カーブしたスクリーンの目の前にある椅子に座って宇宙船を操縦しているかのような体験ができるコーナーや、VR動画を見ながら360度回転するマシンに乗るコーナーなど、宇宙旅行に向けて訓練しているかのような体験ができる。

 そして、第15のパビリオンでもある前出の巨大ロボットの内部には、貴州省の主な景勝地を上空から360度見渡す体験ができるコーナーも。ドローンで撮影された、東アジア最大級の滝の1つである「黄果樹瀑布」や、仏教の聖地であり世界の同一緯度で唯一の原始植生が完全な形で残っている「梵浄山」、貴州省中部の真珠とたたえられる「紅楓湖」などを、上下左右に動く座席に座って重力を感じながら、自分自身が上空にいるかのように眺められるという。

 テーマパークの入園料は、大人260元(約4500円)、子供160元(約2800円)。その他ファミリーパスなども販売されており、テーマパークの公式サイトから購入可能だ。

背景には中国テーマパーク市場における競争激化

 Oriental Science Fiction Valleyは、上海に拠点を置くShuimu Animationと貴州省のジョイントベンチャーが、総工費4億7000万ドル(約512億円)かけて建設した。

 貴州省がある中国南西部は、ラオスやミャンマー国境に近く、チベット自治区とも隣接している中国で最も貧しい地方の1つ。そこに巨額の建設費用をかけて、テーマパーク×VRという新しい分野で仕掛けたのは、大きな賭けだったに違いない。

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