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» 2018年07月27日 07時00分 公開

特集・ITで我慢をなくす「流通テック」:「宅配ボックスだけでは解決できない」 業界のパイオニアが挑む「再配達ゼロ」への道 (1/3)

宅配便の再配達問題でにわかに注目を集めている宅配ボックス。そのトップランナー、フルタイムシステムに宅配ボックスの果たしてきた役割と再配達問題解決に向けた取り組みを聞いた。実は宅配ボックスは、既に労働問題を1つ解決していた。

[芹澤隆徳,ITmedia]

 ECの拡大で宅配便の再配達問題がクローズアップされ、にわかに注目を集めている宅配ボックス。最近ではスマートフォンで解錠操作が行えたり、納入記録をブロックチェーン上に記録するといった高度な「IoTボックス」も登場している。しかし、宅配ボックスは37年前に誕生したときから“つながっていた”ことはあまり知られていない。そして今、それが便利なシェアリングサービスや再配達問題の対策につながっていることも。

宅配ボックス誕生のきっかけは労働時間問題

 フルタイムシステム(東京都千代田区)は、1983年に「フルタイムロッカー」の名称で集合住宅向け宅配ボックスを初めて商業化した「宅配ボックスのパイオニア」だ。ハードウェアの設計からソフトウェア開発まで自社で行うが、同社の原周平副社長は「メーカー」ではなく「サービスプロバイダー」と表現する。

フルタイムシステムの原周平副社長。社長で創業者の原幸一郎氏は父親だ

 理由は宅配ボックス開発のきっかけにも関係している。「フルタイムシステムの前身はマンションの管理会社です。70年〜80年代、マンションの入居者に届く荷物は管理人室で預かっていました。しかし、預かりメモを入れてもいつ受け取りに来るか分かりません。当時は住み込みの管理人さんもいて、夜中に荷物を取りに来られると大変。(管理会社として)対応を考えなければいけませんでした」(原副社長)

 管理人に代わって荷物を預かり、入居者は24時間いつでも受け取れる——そんな仕組みとして宅配ボックスを考案した。開発に際しては事前にテストマーケティングを行い、マンションに届く宅配物の大きさや数を検証、ボックスのサイズを決定したという。

 「当時はネット通販などありませんから、郵便局が扱うミカン箱サイズの荷物か、お中元、お歳暮が中心。またゴルフバッグやスキー板の入るロングボックスも必要でした」。サイズが異なる複数のボックスを用意し、マンション全体で共用する。「今で言うシェアリングの先駆けです」(原氏)

 宅配ボックスには、いつでもコールセンターにつながる電話の他、荷物を入れたり、取り出したりした際に証明となる紙のレシートを発行する機能などを備えた。専用回線を使ってコールセンターから集中管理を行い、例えばレシートの紙が切れそうになったり、ボックスの扉が開かないといった不具合があるとすぐにセンターに警報が届く。遠隔操作でボックスの扉を開閉できるなど、リモート管理に対応した高度なシステムだった。同社は「ロボットシステム」と名付けた。

最新の宅配ボックス。操作しているのはマンションの情報システムとして利用できるiPadだ

 「当時の専用回線は毎月12万〜13万円はしました。ごついカメラも設置していたのでコストはかかります」。費用をかけてもトラブル対応を重視したのは「管理会社のロジック」だ。管理を業務の中心と捉えている同社は、今も「サービスプロバイダー」を名乗り、開発する宅配ボックスはコールセンターとつながることを前提にしている。

 「管理会社だったころから社内では『即時対応と安心感』というキーワードがあります。トラブルは小さいうちに素早く対応し、早期に解決する。このスタンスは今でも変わりません」(原氏)。結果として、宅配ボックスを「作って売る」だけの競合他社との明確な差別化になったという。

 ただし、宅配ボックスも登場してしばらくは認知度や制度、慣習に阻まれて使われないケースが多かった。受取人のサインや印鑑がもらえない宅配ボックスに荷物を入れるかどうかは運送会社次第。荷物の取扱量が多い郵便局も使わないケースが多かった。

 創業者の原幸一郎社長は、「普及のためには国に認めてもらう必要がある」として郵政省(当時)に働きかけ、2年越しの交渉を実らせる。93年、「配達ボックスの普及促進に関する調査研究会」が発足。翌94年には全国の郵便局に対し、宅配ボックスへの預け入れを可能とする通達が出て、ようやく“お墨付き”を得た。「これが(宅配ボックスの)一番の転機だったと思います」と原副社長。99年には郵便規則改正により、宅配ボックスは指定場所配達と認められた。

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