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オフライン通訳デバイス「ili」に新型“プロ仕様” 約1万超の「接客で使いたい」要望で

» 2018年07月31日 17時22分 公開
[山口恵祐ITmedia]

 ログバー(東京都渋谷区)は7月31日、オフライン環境で使えるスティック型音声通訳デバイスの法人向けモデル「ili PRO」(イリー プロ)を発表した。接客に必要な翻訳精度を強化し、インバウド事業者向けの多言語支援サービス「ili INBOUND」(イリー インバウンド)とともに同日から提供を始めた。価格は月額2980円(税別)から。

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 ボタンを押しながら話し掛けるとリアルタイムで翻訳し、相手に合成音声で伝えられるオフライン音声通訳デバイス。日本語、英語、中国語、韓国語に対応。PCの専用ソフトウェアに接続すると、通訳を「日本語→英語、中国語、韓国語」「英語、中国語、韓国語→日本語」の2パターンに切り替えられる。

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 翻訳機能には、総務省の情報通信研究機構(NICT)と共同開発した第2世代オフライン翻訳エンジン「STREAM 2」を搭載。個人向けのiliが一般会話のうち、旅行会話に特化していた(第1世代)のに対し、ili PROは翻訳できる範囲を一般会話全体に広げ、接客会話の精度も高めた。接客会話のカバー率はiliに比べて3倍以上になったという。

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 接客でよく使う長文のフレーズを一言で再生できるショートカット機能も用意した。例えば「免税の説明」と話すと、「こちらのレシートを免税カウンターまでお持ちいただければ、消費税分を現金で返金します」といった長文を発話する。業種や地域特有の固有名詞を登録できる機能も備える。これらカスタマイズ機能はPCと接続して設定する。

 ili PROのデバイス提供を含む「ili INBOUND」は、宿泊施設、小売店、交通機関、飲食店、病院などで接客業務を行う事業者向けの多言語支援サービス。ili PRO本体とカスタマイズ機能の他、15言語対応の24時間365日電話通訳サービスをセットで提供する。

 「日々の接客はili PROで行い、本格的なトラブルやクレーム、ili PROでは対応できない言語などは電話通訳を行う。言語サービスをトータルで提供できる」(同社)

photo 「ili INBOUND」のプラン一覧

「接客で使えないか」約1万3000の要望を受けて開発

photo ログバーの吉田卓郎社長

 「画面を見なくてもボタンの感触だけで扱える、ボタンは1つだけ、ワンタッチで使えるリピート再生機能など、本当に現場で実用できる使いやすさに注力した」──そう話すのは同社の吉田卓郎社長だ。個人向けiliは世界13カ国、413店舗で展開しており、主なユーザーは40〜70代だという。吉田社長はili PRO開発のきっかけを次のように説明する。

 「オフラインで使える点と簡単操作が人気の理由だ。iliは海外旅行に特化していたが、『接客に使えないか』という要望が約1万3000通も届いた」(吉田社長)

 接客向けに強化した翻訳エンジン「STREAM 2」はNICTとの共同開発。NICTが提供している音声翻訳アプリ「VoiceTra」(Android、iOS)の技術も取り込んでいるという。

 発表会に登壇した総務省の増子喬紀室長補佐(国際戦略局技術政策課研究推進室)は、「数年後のイベントに向けた来日外国人はもちろん、これから日本で働く外国人も増えていく。コミュニケーションの問題を解決していくことが非常に大きな課題で、われわれも音声翻訳技術に取り組んでいる。こういった技術によって言葉の壁を感じることなくコミュニケーションできる社会が実現できればうれしい」と話した。

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