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» 2018年08月19日 07時10分 公開

Googleさん:Googleは「邪悪な」検閲付き検索で中国に進出するのか?

米国防省へのAI技術提供に続いて中国での検閲付き検索サービス提供計画発覚で揺れるGoogle社内。問題を話し合うはずだった全社ミーティングは外部レポーターへのリアルタイムリークにより中断されてしまいました。

[佐藤由紀子,ITmedia]

 Googleが多くの従業員にもヒミツに中国市場再参入計画「コードネーム:Dragonfly」を進めていると米The Interceptが報じ、「やっぱりGoogleさんは“Don't be evil”(邪悪になるな)のモットーを捨てたのか?」と話題になっています。

 evil 1 Googleの「Code of Conduct」には今でも「Don't be evil」が掲げられています

 中国市場に参入するには、国民の言論の自由を制限する中国政府の承認を得るためにどうしても検閲に加担しなければならず、それは民主主義の立場からみれば邪悪なことです。Appleも中国でiCloudサービスを始めており、こちらも批判されています。

 Googleは2010年、中国政府の検閲や人権活動家へのサイバー攻撃への抗議を込めて、中国でのサービス提供を事実上停止しました。このとき共同創業者のサーゲイ・ブリンさんは「(中国の)全体主義権力に対するわれわれの抗議だ」と語り、かっこいいなと思いました。

 ブリンさんは、もともとソ連(現ロシア)から亡命してきた一家の人なので、言葉に重みがあります。この人が経営陣にいる限り、Don't be evilは守られる、そんな気がしていました。

 evil 2 サーゲイ・ブリンさん近影(2017年の世界経済フォーラムの動画より)

 Googler(Googleの従業員)の中にも、Dragonflyにショックを受けた人がいたようで、「どゆこと?!」と幹部に問う署名が約1400人分集まったそうです。

 この件については、Googleの良き伝統の1つである全社ミーティング「TGIF(Thank God It's Friday)」の8月16日の回(今では毎週木曜日になってる)で幹部から説明があるはずでした。


 全従業員(物理的に集まれない人も含む)が注目する中、ブリンさんとスンダー・ピチャイCEOが登壇し、この件について説明を始めたところ、なんとその内容をThe New York Timesの記者、ケイト・コンガーさんがほぼリアルタイムでツイートしはじめ、それがミーティング会場の巨大スクリーンに映されたのでした(Business Insiderより)。

 これには従業員もびっくりし、場内は騒然。結局、途中でミーティングはお開きになってしまい、ブリンさんはほとんど何も言いませんでした。

 TGIFは幹部と一般従業員が腹を割って話せる貴重な場だったので、少なくともこのような形でのリークはこれまではみんな自粛していました。それを裏切る従業員がいたのか、というショックで幹部を問い質そうという雰囲気も吹き飛んでしまったようです。

 コンガーさんは6月、Googleが従業員からの圧力で防衛省へのAI提供契約の更新をしないと約束したことを報じた記者なので、従業員の誰かがDragonflyの件もリークしようと思ったのかもしれません。

 コンガーさんがツイートしたのは、ピチャイさんとブリンさんが話し始めたところだけで、この先が聞きたかったのに、と残念です。

 ピチャイさんは「このプロジェクトは慎重にしなくちゃいけないので、中国で検索サービスを立ち上げるのはまだ先のことだ」と言い、ブリンさんは「私がDragonflyについて知ったのは正直な話、騒動になってからだ。Googlerは原則に反していると感じることなく、自分の仕事に誇りを持つべきだ」と話し始めましたが、ライブでその内容をツイートされていることに気づいた段階で「今はこれ以上Dragonflyについて話し合えない」と打ち切りました。

 報道では「検閲付き検索サービスはほぼ完成していて、あとは中国政府の承認をとりつけるばかり」となっていて、ピチャイさんの「まだ先のことだ」となんだか違います。その当たりについて、来週のTGIFでまた説明があるのかどうか、TGIF自体が開催されるのかどうか、気になるところです。

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