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人工知能で「ヒット曲」難しい理由 ”良い音楽”は科学できるのかこれからのAIの話をしよう(音楽編)(2/5 ページ)

» 2018年11月08日 08時00分 公開
[松本健太郎ITmedia]

 深山さんはこうした考えもあり、音楽に合わせてダンスを自動生成し、3D CGキャラクターが踊る様子を鑑賞できるサービス「Songroid」(ソングロイド、α版を試験公開)を開発。自動作曲以外の“表現方法の幅”の可能性についても模索しています。

音楽 音楽に合わせてダンスを自動生成し、3D CGキャラクターが踊る様子を鑑賞できるサービス「Songroid」(ソングロイド、α版を試験公開)
音楽 公式サイトより

 構成、表現、場面。私たちは耳だけでなく、目や匂い、その場の空気感など五感をフルに使って音楽を味わっているのかもしれません。だとしたら、目隠しをされた芸能人たちがアマチュアとプロの違いを見極められなかった理由も納得ができます。

 では実際のところ、人工知能の作曲能力はどれほどなのでしょうか。深山さんが携わられたOrpheusの能力はアマチュア、セミプロ、プロフェッショナル、どの辺りに位置しているのか尋ねてみました。

自動作曲の実力はもうプロ並み?

 「セミプロくらいですかね。例えば音大を受験する学生は、試験対策でピアノの先生に“これはしてはいけない”という減点対象になるNG項目を教えてもらいます。Orpheusもそのように減点が少ない曲を仕上げるようにルールを組み込んでいます。しかし、面白い曲になるよう工夫したりはしませんし、長い曲を作ったりするのも苦手です。好き勝手に曲を作っているわけではないですが、利用者の要求に完璧に応えてくれる曲を作れるわけではないので、セミプロかなと

 歌詞のイントネーション解析に基づいてメロディーを作るのがOrpheusの特徴と述べました。自分で作詞・作曲するプロのアーティストの中には「突然、歌詞やメロディーが頭に降りてきた」と話す人もいますが、人間がメロディーを作るときの考え方で、自動作曲システムに取り入れられる要素はあるのでしょうか。

 深山さんは「自動作曲システムは、人間の発想法とは全く異なるアプローチで、もっと愚直なものです」と説明します。

 「例えばピアノの場合、88鍵盤あれば88通りの音、88の音符の組み合わせがあります。そこで“何らかの制約”を設ければ、その中から1つを選べるだろうという発想です。そういう考え方は人間にはできません。その制約を定式化できると、どういうものが良いか悪いかという評価関数が作れます」

 人間の場合は、いろいろな音楽の作り方がありますが、自身でも音楽をたしなむという深山さんは、「まずメロディーの断片を思い付いて、それを他のメロディーとどうつなぐか」と考えるそうです。自動作曲システムの場合は、こうした自由な発想はできず、あくまで人間がルールを設けて、試行錯誤しながら良いとされるものを作りだしていきます。

 今年2月に放送された音楽番組「ミュージックステーション」(Mステ)では、AR技術やプロジェクションマッピングを生かしたパフォーマンスの他、タレントの黒柳徹子さんのアンドロイド「totto」が生放送で司会のタモリさんと共演しました。

 例えば、こういった特別企画で自動作曲した4分ほどの曲を流して「MステでAIが作曲した音楽が流れる」と宣伝すれば盛り上がりそうだと思いましたが、4分の曲でもまだ完全自動は難しいようです。なぜでしょうか。

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