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「世界中で住所革命が起きている」 3つの言葉で位置を示すwhat3wordsの仕組みと課題(1/2 ページ)

» 2018年11月22日 19時17分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]

 「お花見で場所取りしたとき、その位置を素早く正確に仲間に伝えられます。もう人混みの中で迷うことはありません」——日本人に馴染み深い例えを使って自社技術をアピールしたのは、what3words(イギリス・ロンドン)のCMO(最高マーケティング責任者)、ジャイルズ・リース・ジョーンズ氏だ。「///いちがつ・わたくし・ねむい」といった3つの言葉でピンポイントの位置を示す新技術「what3words」は、世界各地でこれまでにない利便性を生み出しているという。

what3wordsのCMO、ジャイルズ・リース・ジョーンズ氏

 ジョーンズ氏によると、what3words開発のきっかけは音楽イベントだという。「CEOのクリス(クリス・シェルドリック氏)が、音楽イベントのまとめ役をしていたとき、人や機材が指定した場所に届かなかったそうです。そこで住所がない場所にも物や人が到達できる仕組みを考えたのです」。当初はGPSの座標を用いることを検討したが、「(座標の)18文字を利用者が覚えられない」と断念。シェルドリック氏が悩んでいたとき、テーブルの上にある辞書が目に入ったという。

what3wordsの3ワードアドレスならイベント会場で機材の設置場所はもちろん、機材の搬入口など細かい指示も可能。作業を効率化できる

 複雑な数字も言葉に置き換えれば人は無理なく覚えられる。また、「数字を“いじる”と全世界の住所を表現できることが分かりました」。そのアルゴリズムは「とても複雑」(ジョーンズ氏)とするにとどめたが、このブレークスルーによって世界全体を57兆個の正方形に分割し、それぞれに3つの言葉を割り当てた3ワードアドレスが誕生した。

 使用する言葉は、英語の場合で約4万語。4万の3乗(64兆)もの組み合わせが可能で、世界全体をカバーできる。それぞれ意味のある言葉を使用するのは、覚えやすさを重視したから。また日本語を含む26もの言語に対応したことも特徴だ。「どこの国や地域でも、自分たちが使っている言葉で話せることが重要です」とジョーンズ氏。「言葉の選択では、不適切な言葉を使わないように細心の注意を払いました。日本語に対応したときは、30人の言語学者に依頼して2万5000語をチェックしています」(ジョーンズ氏)

似た発音の3ワードアドレスが東京やイスタンブールにある

 もう一つ重要なのは、似た発音の言葉が使われる場所をなるべく離して配置したこと。例えば、「テーブル、チェア、ランプ」という3ワードアドレスは米国のある場所を指すが、「テーブル、チェア、ダンプ」はオーストラリアだ。スマートフォンなどではGPSを併用することで、所在地が米国であれば「オーストラリアではない」と判断できるという。ジョーンズ氏は、「what3wordsは、エラー防止システムを標準装備した唯一の位置情報です」と胸を張った。

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