ITmedia NEWS > セキュリティ >
ニュース
» 2018年12月04日 07時00分 公開

迷惑bot事件簿:“転売ヤー”がbot悪用、ECサイトで限定品買い占め 「アクセスの8割がbot」への対策は? (1/3)

あるオンライン小売サイトでは、ピーク時のアクセスの8割がbotによるものだった。限定商品を買い占め、転売を行うbotの活動実態を紹介する。

[中西一博,ITmedia]

連載:迷惑bot事件簿

さまざまなタスクを自動化でき、しかも人間より早く処理できるbot。企業にとって良性のbotが活躍する一方、チケットを買い占めるbot、アカウントを不正に乗っ取るbot、アンケートフォームを“荒らす”botなど悪性のbotの被害も相次いでいる。社会や企業、利用者にさまざまな影響を及ぼすbotによる、決して笑い事では済まない迷惑行為の実態を、業界別の事例と対策で解説する。著者は、セキュリティベンダーの“中の人”として、日々、国内外のbotの動向を追っているアカマイ・テクノロジーズの中西一博氏。

 「欲しかった限定スニーカーが発売と同時に売り切れ、直後に転売サイトに高額出品された」「人気の玩具をECサイトで買い占められ、子どもにプレゼントを渡せない」――行き過ぎた転売行為にそんな怒りを覚える人も多いだろう。折しもブラックフライデーに始まり、クリスマス、そして年始と、セール品や限定品が出回るシーズンを迎えている。こうした商品も転売のターゲットだ。

 そこで連載第3回は、限定商品を買い占め、転売を行うbotの活動実態を紹介する。その舞台裏で起きているECサイト担当者と迷惑botとの戦いにも迫っていこう。

photo 写真はイメージです

著者紹介:中西一博

1992年、日立情報ネットワークにシステムエンジニアとして入社。日立グループを統合するネットワークで各種のインターネットセキュリティサービス、モバイルアクセスサービスなどを開発し、当時黎明期にあった企業のサイバーセキュリティ運用のひな型を築いた。その後2000年にシスコシステムズに入社。セキュリティスペシャリストとしてシステムエンジニア、プロダクトマネジャー、マーケティングを担当し、新技術を元IT部門の視点を生かして分かりやすく解説するソリューション提案でネットワークセキュリティの業界を15年間にわたりリードした。2015年1月からはアカマイ・テクノロジーズ合同会社でプロダクト・ マーケティング・マネジャーとして、同社のクラウドセキュリティソリューションを担当。TVニュースや記事、セミナーなどで最新のサイバー攻撃動向などを解説している。

“転売ヤー”がネットでbotを購入している

 人気商品や限定商品の高額転売で利益を得ている、いわゆる“転売ヤー”の存在は今更説明するまでもないだろう。転売目的とみられる実店舗での買い占め行為が社会問題としてしばしば話題になるが、こうした行為はECサイトでも頻繁に行われている。ここで利用されているのが“買い占めbot”だ。

 例えば人気の限定スニーカーや衣料品を購入するための専用botが、ECサイトの許諾なく作られインターネット上で販売されている。転売ヤーはこうしたbotを購入して利用する。高額で転売できそうな、アーティストや人気キャラクターの限定グッズ、コラボグッズなどのオンライン販売でも、こうした買い占めbotが観測されている。

 また、ECサイトで行われるセールを狙うbotもよく見られる。セール期間中に販売される数量限定の人気商品を、セールの開始と同時に瞬時に買い占めてしまう。買い占めの対象になるのは限定商品だけではない。例えば紙おむつや化粧品など、日本ならではの高品質な商品は買い占めの対象になりやすい。セール期間中に特価商品や目玉商品の在庫を買い占め、同時にeBayやオークションサイトに出品してアジアを中心に転売するところまで全て自動で処理をする、そんな“越境EC”ならぬ“越境転売” botも存在するという。

 こうした買い占めbotは、迷惑botの中でもポピュラーな存在だ。スクリプト言語を使って簡単に作られたbotから、GUI(グラフィカルユーザーインタフェース)でログインや購買設定などができるもの、さらにbotを束ねたbotネットに指令を出して分散して買い占めを行うものまで確認されている。

ピーク時には8割がbotによるアクセス

 ECサイトでの発売日やセール初日に欲しい商品や限定グッズを手にできないばかりか、その日のうちにオークションサイトで高額転売されているのを見て、悔しく悲しい思いになった人もいるだろう。こうした転売行為が起こると「このECサイトではいつも買えない」、中には「実は、最初から在庫はほとんどなかったのではないか」と勘繰る声も出てくる。またキャラクター、アーティストの限定グッズやコラボ商品の販売で「転売品しか買えない」「わざと品薄感を演出しているのではないか」とSNSでうわさが立てば、築き上げたブランドにまで致命的な影響を与えかねない。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.