1人目の神様は現場部門から現れた。どうやら、情シスが固めた要件定義に現場からの要望が十分に反映されていなかったらしい。現場の神様は「現場はもっと○○な機能を求めている」と仕様変更を求める。人事担当の上司は「現場がこう言っているし、あと2カ月待つから実装してよ」とむちゃぶり。情シスとトライエッティングがそのあおりを受けることになった。
要件定義だけでなく、AIやユーザーインタフェースも実装し直しだ。全て実装が完了するまでに、プロジェクト開始から12カ月がたっていた。すると、新たな神様がコーポレート本部から登場した。
情報共有が不十分だったため、本部はプロジェクトが8カ月で終わるものと思っていたのだ。本部の神様は納期がずれ込むことを嫌い、当初のスケジュール通りに終わるよう、情シスに他の会社を探すよう命令した。
情シスは10社ほど要望を実現できそうなAI会社に相談したが、どこも断られたという。長江社長は「いま思うと、われわれは相当しんどい技術的要求を乗り越えていた」と苦笑する。
現場の神様も黙ってはいない。新たに実装したシステムを提示すると「Excelレベルの、もっと使い心地のいいものが欲しい」と要望はエスカレート。現場の要望と納期、2人の神様の板挟みにあい、トライエッティングは苦しい状態だった。
災難はまだ終わらない。何とかシステムのリリースにこぎつけたが、本部の神様は無慈悲にも「4月から人事構成図が変わり、従業員の所属IDも変わるからデータ変更に対応するように」と告げた。
社員のマスタデータが全て変わるため、1件1件IDを振り直す必要が出てくる。せっかくシステムが完成したのにデータの問題で動かないという事態に陥り、このころからトライエッティング社内で「メテオフォール型開発」というワードがはやり始めたと長江社長は苦笑しながら思い出す。
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