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「笑い男」事件は実現可能か 「攻殻機動隊 S.A.C.」好きの官僚が解説アニメに潜むサイバー攻撃(6/12 ページ)

» 2019年05月24日 08時00分 公開
[文月涼ITmedia]

F: 肯定的な認知バイアスでしょうね。この人間のポジティブシンキング、もしくは無関心をなんとかしないと、未来でも、人の意識に任せたままでは「IoTのセキュリティ問題は深刻」なままだと痛感しました。

K: 確かに。

F: さてこのインターセプター不正設置が警察の内部犯行だったことを受けて、警視総監の大堂、笑い男事件発生当時県警本部長だった人物の謝罪会見から、「笑い男事件」の第2幕が始まります。前回の事件から6年後のことです。

 会見の途中、壇上の警察幹部の一人が電脳をハックされ、「笑い男らしき誰か」のメッセージを語り始めます。放送画像中の彼の顔、そして一呼吸置いて彼を見ている大堂の目に、笑い男マークがオーバーラップします。

photo (C)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会

F: 高く構えて不遜でありながら慇懃(いんぎん)に、「掃きだめのような世界に付き合っていると嫌になるので、いままで関わるのをやめていた。事件の真相を分かっていたのに。しかし今日の茶番劇はあまりにひどすぎる。だから不本意だが僕はまたあなた方に挑戦しなければならない。3日後の警察関係者のパーティで本当のことを話せ。そうしなければお前をこの舞台から消去する」という趣旨のことをしゃべり、指鉄砲で大堂を撃つしぐさをします。

 これに呼応して、笑い男事件の容疑者としてセラノ・ゲノミクス社に在籍した経歴のある元活動家のナナオ=Aという人物が浮上。しかし彼は電話で、事件の黒幕に近い人物、もしくは自作自演を疑われる警察内部から「笑い男」としての仕事を請け負ったように語り、警視総監殺害の犯行予告も「ご好評いただいており、あらかじめ用意していたプランの内だった」と語ります。しかし電話を切ると「あれをやったのは俺じゃないんだけどな」とフロックであったことを独り言つのです。

 ただ、警視総監をパーティで襲撃することそのものは彼の仕事であり、パーティ当日、分割した遅効性ウイルスを散発的に送ることで捜査関係者の目を欺きつつ、大堂を警護していたSPの電脳を乗っ取り、殺さない程度に襲撃させることに成功。「これで特捜部に逮捕されて、晴れて俺も『笑い男』として歴史に名を残すわけだ」と語ります。だが、その喜びもつかの間、黒幕に関係があるだろう笑い男事件特捜部の男に、口封じのため射殺されてしまいます。

 このナナオ=Aは、そこそこ腕はあるものの、街頭生放送に登場したコートの男とは明らかに印象が異なる、軽薄でシニカルなサラリーマンハッカーだと思いました。

photo (C)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会

 一方、公安9課の草薙素子(「攻殻機動隊」シリーズのメインキャラクター)は、SPが大堂に襲い掛かったときこれを制圧しつつ、ワクチン作成のためSPの電脳からウイルスを取得しようとして、そのウイルスをコピーしている手際の良い別のハッカーの存在を発見、追跡しようとして攻性防壁(電脳を焼く致死性の逆ハック)で逆襲され、これを取り逃します。

 その後ワクチンの作成を本部に指示しつつ、大堂を守り、現場から避難させようとするのですが、今度は何人もの「我こそは真の笑い男」や「笑い男から啓示を受けた」という者が現れ、次々と大堂に対し拳銃などを使って物理的な制裁を下そうと襲い掛かります。しかし、この襲撃者たちは皆捕えられ、後の検査の結果、洗脳を受けた形跡も電脳ウイルス感染の可能性も見受けられなかったと報告されたのでした。

 以上が「笑い男事件」第2幕の概略です。この第2幕では警察幹部の電脳を乗っ取り、警視総監殺害を予告した誰かと、分割した遅効性ウイルスでSPをハックし殺害されたナナオ=A、SPからウイルスをコピーしていたハッカーの、そして謎の「笑い男」集団を生んだ「何か」の存在が明らかになりました。

K: うーん、話が複雑ですね。

F: 簡単に読み解けるものから行くなら、まずはSPの電脳ハックでしょうか。分割送信された遅効性ウイルスです。

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