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格ゲーの駆け引きはAIにもできる? 憧れのプロ選手、AI化の可能性も(2/4 ページ)

» 2019年12月06日 07時00分 公開
[西川善司ITmedia]

サムスピ新作には、人間の操作を学習するAIが登場

 そんな中、人間がプレイするように、方向レバー入力とボタン操作をして対戦ゲームをプレイするAIプレイヤーの開発が行われつつあります。先陣を切って商品化にこぎ着けたのが、SNKが6月に発売した「SAMURAI SPIRITS」(サムライスピリッツ。以下サムスピ)です。対戦を通じてAIが人間プレイヤーの行動パターンをディープラーニングで学習し、プレイヤーの分身(ゴースト)を自動生成するというものです。

 サムスピのAIプレイヤーは、「プレイヤーという存在」をシンプルな入出力演算器とみなしています。人間がプレイした際の「1フレーム単位のゲーム状況」と、そのプレイヤーのレバー・ボタン操作を機械学習させることで、そのプレイヤーのプレイスタイルを模倣するAIを構築可能にしたのです。

 AIが出力するレバー・ボタン操作は、実際にロボットアームで物理的にコントローラを操作するわけではありませんが、人間プレイヤーと同じようにレバー方向入力やボタン押しのコマンドを出力します。つまり、実質的には人間プレイヤーと同じようにゲームを操作するのです。具体的にはAIもキャラクター移動で←や→を出力し、飛び道具の必殺技を出す際には「↓↘ →+パンチ」を出力します。

 話は戻り、サムスピのAIプレイヤーに入力される「ゲーム状況」とは、画面上で戦う2体のキャラクターの位置とモーション状態、両者のゲージ状態、バトルの残り時間、現ラウンド数(ラウンド取得状況)などを指します。

 現状のゴーストAIは、残念ながら「ガードが甘い」「攻撃がやや単調」といった弱点が指摘されるなど、やや荒削りな印象があります。

 しかし、これは純粋に学習量が少ないためでしょう。不要な学習データがノイズを生んでいる可能性も考えられます。

 9月に横浜で開催されたゲーム開発者向けイベント「CEDEC 2019」では、サムスピと同じような手法で敵プレイヤーAIを作成した技術者の講演が行われました。

 「『強い』を作るだけが能じゃない!ディープラーニングで3Dアクションゲームの敵AIを作ってみた」をテーマに登壇したのは、スクウェア・エニックス系列の開発スタジオLuminous Productionsのプログラマー 上段達弘さん。上段さんは、「ファイナルファンタジーXV」のキャラクターのような、3DバトルゲームのプレイヤーAIを作成しました。

 下の動画は、講演で公開された動画の一部です。

 動画中に登場する2体のキャラクターのうち、黒服キャラが敵AI(ゲームコントローラを操作して動かしている敵キャラクター)、白服キャラがプレイヤーAI(人間の操作を学習して構築されたAI)となっています。AI同士の戦いを記録した動画ですが、攻撃が命中した後に飛び道具で追い打ちしたり、相手の攻撃に備えてバックステップで回避したりする様子は、人間同士の戦いのように見えます。

共にゲームコントローラを操作してキャラクタを動かしているというのがとても興味深い(C)Luminous Productions

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