そんな中、人間がプレイするように、方向レバー入力とボタン操作をして対戦ゲームをプレイするAIプレイヤーの開発が行われつつあります。先陣を切って商品化にこぎ着けたのが、SNKが6月に発売した「SAMURAI SPIRITS」(サムライスピリッツ。以下サムスピ)です。対戦を通じてAIが人間プレイヤーの行動パターンをディープラーニングで学習し、プレイヤーの分身(ゴースト)を自動生成するというものです。
サムスピのAIプレイヤーは、「プレイヤーという存在」をシンプルな入出力演算器とみなしています。人間がプレイした際の「1フレーム単位のゲーム状況」と、そのプレイヤーのレバー・ボタン操作を機械学習させることで、そのプレイヤーのプレイスタイルを模倣するAIを構築可能にしたのです。
AIが出力するレバー・ボタン操作は、実際にロボットアームで物理的にコントローラを操作するわけではありませんが、人間プレイヤーと同じようにレバー方向入力やボタン押しのコマンドを出力します。つまり、実質的には人間プレイヤーと同じようにゲームを操作するのです。具体的にはAIもキャラクター移動で←や→を出力し、飛び道具の必殺技を出す際には「↓↘ →+パンチ」を出力します。
話は戻り、サムスピのAIプレイヤーに入力される「ゲーム状況」とは、画面上で戦う2体のキャラクターの位置とモーション状態、両者のゲージ状態、バトルの残り時間、現ラウンド数(ラウンド取得状況)などを指します。
現状のゴーストAIは、残念ながら「ガードが甘い」「攻撃がやや単調」といった弱点が指摘されるなど、やや荒削りな印象があります。
しかし、これは純粋に学習量が少ないためでしょう。不要な学習データがノイズを生んでいる可能性も考えられます。
9月に横浜で開催されたゲーム開発者向けイベント「CEDEC 2019」では、サムスピと同じような手法で敵プレイヤーAIを作成した技術者の講演が行われました。
「『強い』を作るだけが能じゃない!ディープラーニングで3Dアクションゲームの敵AIを作ってみた」をテーマに登壇したのは、スクウェア・エニックス系列の開発スタジオLuminous Productionsのプログラマー 上段達弘さん。上段さんは、「ファイナルファンタジーXV」のキャラクターのような、3DバトルゲームのプレイヤーAIを作成しました。
下の動画は、講演で公開された動画の一部です。
動画中に登場する2体のキャラクターのうち、黒服キャラが敵AI(ゲームコントローラを操作して動かしている敵キャラクター)、白服キャラがプレイヤーAI(人間の操作を学習して構築されたAI)となっています。AI同士の戦いを記録した動画ですが、攻撃が命中した後に飛び道具で追い打ちしたり、相手の攻撃に備えてバックステップで回避したりする様子は、人間同士の戦いのように見えます。
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