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未来のAIに“意識”は宿るか AI・認知科学の専門家に聞く(2/3 ページ)

» 2020年03月19日 19時00分 公開
[井上輝一ITmedia]
ロボットから脳機能を研究する谷淳教授

谷教授 意識の正体はすでに私の中でははっきりしている。例えば、ここに赤い(PC用)マウスがあるとする。それを見たときになぜ「赤いマウス」と認識するかというと、脳の中にその情報を折りたたんだ“モデル”があるから、それを展開して「赤いマウスである」と認識する。これが脳から末端への“トップダウン”の流れ。

 その一方で、物体を認識するには目で見たり、手に取ったりといった感覚器官からの情報が必要。これは末端から脳への“ボトムアップ”の流れ。トップダウンの抽象化されたモデルと、現実世界の光量などボトムアップの状況は全ては一致せず、コンフリクト(衝突)する。このぶつかりを何とか最小化しようと、「こうかな、こうかな」と神経活動が活発になる。これが意識だと考えている。

 この意味では、例えば自閉症は“過学習”の傾向があるのではないかと考えている。他人の挙動をうまく説明できるように毎回すごく学習して過学習状態になってしまうが、他人はそもそも予測から外れた動きをするもの。普通程度の学習なら予測から外れても「誤差」として許容できるところ、過学習状態では毎回予測から大きく外れ、コンフリクトが大きくなる。これをまた修正しようと過学習し、次の予測がまた外れるので、対人関係が難しくなってしまうのではないか。


 谷教授はこうした仮説を基に脳機能をロボットへプログラムすることで、ロボットが持つ“トップダウン”の予測と、機械の体から受ける“ボトムアップ”の感覚を再現し、ロボット上に4歳児程度の知能や心を生み出すことを目標としている。

 しかし、それでもロボットに大人の人間ほどの自由意志が宿るかについては懐疑的だ。

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