マツ で、このMachを開発していたのがCMU。それを開発していたのがアヴィー・テヴァニアンという学生で、彼がNeXTに入って、そこでNeXTSTEPを作り上げていった。
ヤマー NeXTはジョブズがAppleを追放された後に作ったワークステーションなどを手掛ける企業ですね。
マツ そうです。この頃のPC用OSは、低機能なものだったんだけど、テヴァニアンが中心となって作っていたMachはマイクロカーネルで移植性の高いものだった。NeXTSTEPではMachマイクロカーネルにBSDカーネルなどを追加したXNUというコアOSを採用していて、これはマイクロカーネルとモノリシックカーネルという2つのいいとこどりをしたハイブリッドカーネルという方式らしいんですが。
で、当時のワークステーションメーカーはみんなUNIXを自社向けに移植・拡張したものを使っていた(もともと独自OSを使っていたIBMやDECのような例外もあったけど)。PCの先にはこうしたワークステーションで使われているUNIXがあって、それが未来像だ、というのは多くの人が共通認識として持っていたんですよ。
ヤマー どれもUNIXベースだけど、ワークステーションメーカーごとにバリエーションが存在していたんですね。当時のPC用のOSって、MS-DOSやそれから派生したWindows、あとはSystem 7から発展したMacOSですよね。
マツ そうです。でも、MicrosoftもUNIXやってたんですよ。
ヤマー え、そうなんですか??
マツ XENIXというのを作ってました。
ヤマー 完全に初耳の単語ですw
マツ だから、MicrosoftがUNIX系のLinuxを包含するようになったというのも、そうおかしなことではない。
ヤマー おおお、XENIXってAT&Tからライセンスを受けつつ、BSDの要素も加えたハイブリッドなOSだったわけですね。
マツ で、この頃はSystem VかBSDかという論争があったくらいだったんだけど、いつの間にかLinuxという新参者がやってきて市場をかっさらっていってしまった。
一方、XENIXをMicrosoftから買って8086用にUNIXを売り始めたSCO(Santa Cruz Operation)が、UNIXの権利を得てからNovellとかIBMとかLinuxとか業界の大半を巻き込んだ訴訟を始めちゃって、それがようやく決着したのがごく最近の2010年。アナキン・スカイウォーカーがダース・ベーダーとなったようにSCOが闇落ちしていく様子は、大原雄介さんが記事にしているので、そちらをぜひ。
ヤマー Linuxは1991年に登場と。当時私は4歳だったんですが、Linuxはかなり画期的だったんですか?
マツ Linux開発でリーナス・トーバルズが参考にしていたMinixというOSはもともと学習用のこじんまりとしたOSで、こんなおもちゃみたいなもので? という印象を持ってたのを記憶しています。Linuxが注目され始めた当時はBSDをベースにPCやMacに移植したものとかもあって、必ずしも画期的な存在ではなく、たくさんあるUNIX系OSの1つとして捉えられていました。FreeBSDかLinuxか、君はどっちにする? みたいな。ただ、安価なIntelベースのPCに無料で配布されているOSをインストールすればUNIX(系)ワークステーションを構築できるというので受け入れられたというところかな。おかげでそれまで高価なUNIXワークステーションを売っていたSun、HP、Silicon Graphicsといった企業は徐々に侵食されていきます。
ヤマー LinuxってMinixっていうOSを参考に作られてたんですね。そしてそのMinixはUNIX version 7を教育向けに再設計したものと。
マツ 古いMacをUNIXサーバとして再利用するのも流行っていて、僕はBSDをMacに移植したMacBSDでサーバを立てたりしていました。Linuxが登場してからはPowerPC MacにLinuxを移植したディストリビューションも出て、それがMkLinux。
マツ 「MacはもともとLinuxだった」というのは、この一点を捉えれば間違いじゃない。 ちなみにこのMkLinuxのコアはMachなんですよ。しかもAppleがNeXTを買収する前にスタートしている。
ヤマー あくまでもMacintoshの時代はユーザー側の動きですよね。
マツ MkLinuxは開発にAppleも協力していたらしいですね。そうそう、Microsoftと同様に、Appleも初期にUNIXを出していたんですよ。A/UXというOSを。
ヤマー えーー知らなかったです。
マツ うちにもフロッピーの束がある。
ヤマー なんで持ってるんですかw
マツ Macの雑誌「MacUser日本版」をやってたから(笑)
ヤマー 何も言い返せないです。しかもA/UXの歴史結構古いんですね。
マツ それとは別に、Tenon IntersystemsのMachTenというソフトは、Mac OSの上にBSDを乗っけたもので、これも使ってました。並列で動いていましたけど、当時のMac OS自体がちゃんとしたマルチタスクじゃなかったんですよね。
ヤマー たしか、真のマルチタスクを実現するOSを作るべく、Copland計画が立ち上がりますよね。確か1994年辺りの話だった気がしますが。
マツ 自社でしっかりしたOSを作り上げるというCopland計画が大失敗に終わって、その基礎部分をどこから仕入れるかという話になった時に、いくつかの選択肢があって。
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