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もうPCIでは遅すぎる さらなる高速化目指すPCはPCI Expressへ“PC”あるいは“Personal Computer”と呼ばれるもの、その変遷を辿る(3/4 ページ)

» 2022年04月02日 08時00分 公開
[大原雄介ITmedia]

第3世代I/O、PCI Expressの登場

 次はそのPCI Express。もともと2001年の春ごろ、「現在次世代向け規格の作業を行っている」という話がIntelから出ていた(写真3)。

photo 写真3:これを説明したのは誰あろう現在のIntel CEOであるパット・ゲルシンガ−氏。当時の肩書きはCVP兼CTOだった。これは2001年4月に行われた、IDF 2001 Spring Japanにおける講演から
photo 写真4:これは当時PCI-SIGが作成したブローシャであるが、配布したのはIntel。IDF 2001 Fall(2001年8月)におけるIntelの3GIOのRound Tableだった記憶が

 同年秋のIDFでは“3GIO”(3rd Generation I/O)という名称で概略の説明があり、またPCI-SIGからも2005年辺りから製品が投入されるという見通しが語られた(写真5)。

 3GIOそのものの骨子はIntelが開発した(開発を率いていたのは、ここでも出てきたアジャイ・バット氏である)が、早い時期からPCI-SIGと共同での作業となっており、仕様はやはりPCI-SIGに寄贈され、Revision 0.7辺りからほぼPCI-SIG側で仕様策定のハンドリングが行われている。

photo 写真5:これはIDF Fall 2001で行われたPCI-SIGとのRound Tableにおけるスライド。

 実際にPCI ExpressのBase Specification 1.0は2002月7月にリリース、さまざまなベンダーがこれに取り組んでいく。

 とはいえ、当初はPCI Expressの実装がかなり大変だったのは事実である。例えば当時VIA Technologies傘下だったS3はDelta Chrome GPUの開発をしていたが、PCI Expressを統合するとダイサイズが倍になるとかいう話で、次世代(Chrome S)までPCI Expressの統合を先送りにしている。

 NVIDIAはGeForce 6000シリーズで初のPCI Express対応を果たすが、そのGeForce 6000シリーズはHSI(High-Speed Interconnect)という名称のAGP/PCI Express Bridgeチップ経由での対応になっていた。

 ATIはこれに対して「当社はNativeでPCI Express対応だ」とアピールしたが、そのATIも同時期に投入されたX800こそNative PCI Express対応だったものの、下位にあたるX600シリーズはやはりAGP/PCI Express Bridgeを利用していることが後でバレるといった具合に、各社苦労していた。

 技術的に見れば、PCI Expressでは、

  • パラレルバスを廃し、Point-to-Pointのシリアルバス形式。また信号にDifferential(差動式)を使う事で信号の高速化とノイズ耐性強化を狙う。ちなみに送受信は別の信号線を使うので、結局1レーンあたり4本の信号線が必要。
  • 送受信のタイミング制御のためのクロック信号を、データ信号に埋め込むEmbedded Clockを採用。クロック信号+8bit分のデータを10bitのシンボルにして、このシンボルを2.5GHzの速度で転送する(ので、表記は2.5GT/secとされる事が多い。2.5G Transfer per secの略である)。このため1レーン当たり250MB/secの双方向となる。
  • 1対のレーン(x1)以外に、2/4/8/16/32対(のちにx12なども追加されたが、最新版ではx32と併せて削除された)の信号を束ねて送るという技法が採用された。これがパラレルバスと異なるのは、電気的には各々は別の信号として扱われ、上位プロトコル層(正確にはDataLink層)で束ねた形になる点である。これにより配線はあくまでも1対2本単位で等長でありさえすればよく、配線がだいぶ楽になっている。また必要とする帯域に応じてレーン数を調整しやすいのもメリットとされる。
  • アプリケーション(つまりOSとかデバイスドライバ)から見ると、PCIとの互換性が保たれている(多少拡張はしているので、その追加分のハンドリングは必要だが、そうしたものはデバイスドライバで吸収されているので、OSからはPCIとPCI Expressが等価に見える)

といった点が特徴になる。

 当初は2.5GHzという高速信号を通すために苦労したようだが、幸いにもRambusのDirect RDRAMである程度技術の底上げがなされていたこともあり、Direct RDRAMのときほどには問題にならなかった。

 チップセットとしてもIntel 915とかATIのRadeon Xpress 200、NVIDIAのnForce 4、VIAのPT880 Ultra/PM880/K8T890など2004年以降に登場したものは各社グラフィックス用のI/FがAGPからPCI Express x16に切り替わり、ただしグラフィックス以外はまだPCIという状況が続いた。

 それでも2010年手前には、例えばストレージカード(RAIDコントローラー)とかEthernet、Soundカード、USB拡張カードなどが相次いでPCI Expressに移行を果たし、その一方でPCIのスロットはどんどんマザーボードから減っていくようになった。PCI Express自体もどんどん進化しており、2007年には速度を5GT/secに引き上げた2.0、2010年には8GT/secに引き上げた3.0、2017年には16GT/secの4.0、2019年に32GT/secの5.0と来て、2022年にはついに64GT/secの6.0がリリースされている。

 実効転送速度ではx1レーンで1.0が250MB/sec、以下2.0が500MB/sec、3.0が1GB/sec、4.0が2GB/sec、5.0で4GB/sec、6.0では8GB/secまで引き上げられている。

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