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» 2012年05月09日 16時00分 UPDATE

エネルギー管理:電力見える化システムのよく効く使い方 前編 「節電の基本戦略を練る」 (1/2)

LED照明や発電システムなど、節電に直接役立つ機器が注目を集めている。しかし、各メーカーが販売している「電力の見える化」システムに目を向けると、「活用法が分からない」という人が多いのではないだろうか。前編では、電力の見える化システムの基本的かつ効果的な利用法を解説する。

[目黒眞一/エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ,スマートジャパン]

 夏が近づいているが、電力会社からの電力供給量の見通しはいまだはっきりしない。今年の夏も深刻な電力不足に陥る可能性が高い。

 昨年の夏は国家的危機ともいえる緊急事態を乗り切るため、日本が一丸となって電力消費量削減に取り組み、最悪の事態を回避できた。しかし、企業の操業時間短縮や業務日のシフトなど、企業活動や人々の生活に多大な犠牲を強いる結果となった。今年も昨年と同じように多大な犠牲を払って節電しなければならないのだろうか? 夏に向けて各企業は節電の準備ができているのだろうか?

昨年のような我慢の節電を繰り返すのか?

 企業が取り組める節電対策として最も一般的な方法は、夏なら空調の設定温度を高くすることであろう。当然、執務室の気温は上がるので、同時にノーネクタイなどの軽装、いわゆるクールビズを推奨する例も多い。昼休みに照明を消灯することや、使っていない会議室の空調や照明をこまめに消すなどの活動も多くの企業に定着した感がある。

 以上に挙げた対策を実行すれば、確実な節電効果を期待できる。ただし、いろいろな対策を計画し実施しても、どの程度電力を削減できたのか分からず、節電対策の効果をなかなか把握できないという声も聞こえる。これでは、場当たり的な対策しか立てられない。

 効果的な節電活動を長く継続するには、PDCA(Plan Do Check Action)サイクルを回す必要がある。節電対策を計画、実行し、その効果を定量的に計測し、分析して、必要に応じて節電対策を見直す(図1)。この活動を続けていけば、節電してもそれほど暑さを感じない「我慢の必要がない節電」を実現できる可能性がある。

PDCA 図1 節電対策を効果的なものにし、長く続けられるようにするには、PDCAサイクルを回す必要がある(出典:エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ、以下 NTT-AT)

節電効果を把握するために欠かせない「見える化」

 PDCAサイクルを回す前の現状を把握するときや、PDCAサイクルのC(Check)、つまり効果測定と分析には、消費電力量を計測し、結果を集計してグラフや数値の形で見えるようにする「電力の見える化」が欠かせない。現状を知らないまま、むやみに節電対策を打っても、その対策が効いているのか効いていないのかが分からない。

 ただし、電力の見える化を実現するシステムは、導入するだけで効果を得られる魔法のツールではない。電力の見える化システムを導入しようと検討している企業から、電力の見える化でどのくらい消費電力量を削減できるのかとよく聞かれる。電力の見える化は、消費電力量を削減する方法を考えるために欠かせないものではあるが、導入するだけでは消費電力量削減効果はまったく期待できないということを理解してほしい。

 電力の見える化システムを導入して消費電力量を測定し、どういう対策を打てば効果が上がるのか検討し、実行に移す。実行後に再び消費電力量を測定することで、対策の効果が分かる。電力の見える化システムで得られる測定データを検証しながらPDCAサイクルを回すことで、節電対策の改善を進められる。その結果、節電対策の効果を最大限に引き出せるのだ。

現状を知るだけでも効果あり

 先に少し説明したが、電力の見える化システムを導入したら、節電対策を実行する前の現状を把握することだ。電力消費量削減の目標を立てようにも、現状を知らなければ何も始まらない。

 本格的な見える化システムの導入が難しいという場合、業者に頼んで短期間だけでも消費電力量の推移を調べてみると良い。NTT-ATが提供している「ウィークリー電力見える化サービス」は、消費電力量を1週間ほど計測してくれるサービスだ。このようなサービスを利用して対策を立てるだけでも、その効果は大きくなるだろう。

多大な電力を消費している部分を特定し、対策を打つ

 電力消費量削減策を立てるときの戦略は3つに分けられる。1つ目はオフィス、あるいはビルなど、全体の中で最も電力消費量が多い機器、あるいは場所に注目する戦略だ。電力消費量が多い部分を把握して、そこに集中して電力消費量削減策を講じるのだ。

 こうして立てた削減策は、実現できれば最も大きな削減効果を見込める。ただし、電力消費量が多いと特定した機器の能力や生産性を損なうことなく電力消費量を節減する方法を見いだす必要がある。

 例えば電気炉など大電力を消費する機器を運用している製造業なら、機器の運転スケジュールを見直すという方法が考えられる。暖気運転や空き運転の時間を短縮し、生産性を損なわずに消費電力量削減に成功した例もある。

 一般的なオフィスでは、空調機器と照明が大きな電力を消費している。サーバなどのコンピュータやネットワーク機器も大きな電力を消費する。オフィスで電力消費量削減を考えるなら、これらの機器が標的となる。

細かい無駄を見付けて取り除く

 2つ目は電力の見える化システムを利用して、全体の中から少しでも無駄に電力を消費している部分を探し出す戦略だ。無駄が見つ付かったら、それを取り除く方法を考える。

 この戦略では、無駄が見つかりさえすれば、対策は極めて簡単に立てられる。ただし、無駄を発見しても、全体から見ると微々たるものである場合が多く、無駄を1つ取り除いても大きな電力削減効果は期待できない。

 ただし、無駄な部分は1カ所とは限らない。探してみればいくつも見つかるということも多い。無駄を探すという行動を続けるうちに、電力消費量削減に対する意識が高まるという効果も期待できる。

成功例に学ぶ

 3つ目は、他の企業や、他の部門で実施した消費電力量削減策を参考にするという戦略だ。成功した事例を参考にして、同じ対策を実施してみるとよい。よいアイデアを拝借するというわけだ。

 拝借するアイデアを選ぶときは、できるだけ業務形態の近い企業を見ることだ。そこで成功した事例をまねて、効果があればさらに継続し、効果がなければ効果が上がらない理由を分析し、対策を改善していくと良い。先人の知恵に倣うという意味で、賢い方法と言える。

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