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» 2012年05月16日 06時00分 UPDATE

エネルギー管理:電力見える化システムのよく効く使い方 後編 「データを集めてさらに節電」 (1/2)

後編では、具体的に見える化システムを活用した例を紹介する。見える化システムで課題を洗い出した例のほか、見える化システムを使って初めて大きな無駄を見付けたという例などを取り上げ、解説する。

[目黒眞一/エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ,スマートジャパン]

 前編の冒頭で説明したように、一般のオフィスで消費電力量を削減するなら、空調機器の設定温度を変更する方法が最も簡単で効果的だ。オフィス全体の電力消費量を機器別に分類すると、空調機器が最も大きな割合を占める。その割合は40〜60%にもなる。

 空調機器の消費電力量削減策として、夏は冷房時の設定温度を28度、冬は暖房設定温度を20度にするという方法が一般的になりつつあるが、ほかに方法はないのだろうか。室温を細かく計測すると、見えなかった事実が見えてくる。

室内の温度分布にはむらがある

 実は、空調機器の設定温度というものは実態を反映していない。空調機器の設定温度と実際の室温が大きく異なるということはよくあることだ。温度管理が行き届いているはずのオフィスでも、例えば日中の南側に面した窓際は、空調機器の設定温度よりも気温が高くなりがちだ。そして、このような場所では、夜間になると空調機器の設定温度以上に涼しく感じることがある。

 複合機やサーバなどの大きい機器のそばも室温が高くなる。一方、日光が当たりにくい場所など、空調機器の設定温度よりも実際の気温が低くなっているところもある。実際にオフィス内のいろいろな場所に温度センサーを設置し、室温を測定すると、時間によって室温が変動しているだけでなく、場所によって室温に差が生じていることが分かる(図1)。

temp 図1 オフィス内に取り付けた温度センサーが検知した温度の推移を表したグラフ。外気の温度と空調機器の消費電力も合わせて表示している。温度センサーの位置によって温度に差があることが分かる(出典:エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ、以下 NTT-AT)

 空調機器の設定温度と比べて、実際の室温が低い場合があるという点に注目すると、さらなる消費電力量削減の余地があることが分かる。空調機器の設定温度よりも実際の室温が低いということは、設定温度以下の場所でも空調機器は冷房運転を続けているということだ。室温が設定温度を下回ったときに、空調機器を正確に止められれば、消費電力量を削減できる。

 空調機器の設定温度と実際の室温が食い違う原因はいろいろ考えられる。その中でも大きな原因と考えられるのは、空調機器が備える温度センサーの位置だ。空調機器は、この温度センサーが感知した値に合わせて動作している。

 しかし、空調機器が利用する温度センサーは、空調機器の中や吹き出し口のそば、リモコンの中など、「室内の気温」を計測するには無理がある場所にあることが多い。その結果、空調機器は一定のペースで運転していても、部屋の場所によって室温がばらつくのだ。

こまめに計測して設定温度を変更

 最新の空調機器の中には室内の複数の地点に温度センサーを設置して、正確な室内温度に合わせて最適に制御する機種もある。また、既存の空調機器に制御アダプタを取り付け、室内に設置した温度センサーから情報を得るようにして、部屋の温度を一定に保つように空調機器を自動的に制御させるシステムも存在する。

 最新の空調機器に入れ替えたり、温度センサーの値を正確に反映させるシステムを導入するとなると、それなりの資金が必要だ。そこまで大掛かりなことをしなくても、もっと簡単に空調機器が消費する電力を削減する方法がある。室内のあちこちに温度計を取り付け、こまめに室温を確認しながら、人手で空調機器の温度設定を調節するだけでも大きな効果が期待できる。温度を計測するために、高価な計測器を用意する必要はない。安価なものでも十分役立つ。これも一種の「見える化」だ。

待機電力も機器が増えれば意外に大きくなる

 現代のオフィスでは、コンピュータやネットワーク機器は欠かせないものになっている。このような機器にも電力消費量削減の余地はある。図2はあるオフィスの1日の電力消費量の推移を示したものだ。これを見ると、全従業員が帰宅した後も、消費電力量があまり減っていないことに気付くはずだ。

transition 図2 あるオフィスの1日の電力消費量の推移を示したグラフ(出典:NTT-AT)

 オフィスによっては、執務室内に共有サーバを設置していることもある。従業員が使うパソコンからインターネットに接続するには、ネットワーク機器が欠かせない。誰もいないオフィスでも一定量の電力を消費している原因としては、サーバやネットワーク機器が24時間動作していることが挙げられる。しかし、これらの機器は簡単に止めるわけにはいかない。

 夜間に一定の電力を消費している原因としてはもう一つ、待機電力が挙げられる。従業員が使用するパソコン、ディスプレイ、コピー機、プリンタなど、電源を切ったように見えても、待機電力を消費し続ける機器は少なくない。これらの機器の電源を切り忘れていたという事例もある。

 電力の見える化システムによって、夜間の電力消費量が多いと分かったときは、待機電力を疑うべきだ。待機電力で無駄に電力を消費しないようにするには、帰宅時にパソコンなどの機器の電源プラグをコンセントから抜くようにすれば良い。最終退出者が部屋のブレーカーを落として帰宅するように決めている企業もある。

 やれることはすべてやった、ほかにやれることはないとあきらめていたとしても、以上に挙げた例が示すように電力の見える化システムを有効活用すれば、見えていなかった無駄がはっきり見え、さらに対策を打てるようになる。電力の見える化システムがもたらす効果の中でも、この効果は大きい。

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