広域機関の需給調整システム、小売全面自由化に向けて10月から開発に着手動き出す電力システム改革(18)

2015年4月に業務を開始する「電力広域的運営推進機関」には2つの重要な役割がある。1つは全国レベルの需要と供給を調整すること、もう1つは小売事業者を支援することだ。この2つの業務を効率的に実行するために必要な情報通信システムの開発作業がまもなく始まる。

» 2014年08月28日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

第17回:「電力広域的運営推進機関を国が認可、2015年4月に100人体制で業務開始」

 「電力広域的運営推進機関」(略称:広域機関)の業務開始を前に、大規模な情報通信システムの開発が10月から始まる予定だ。広域機関の中核業務である全国レベルの需給調整機能を果たすための「広域機関システム」である(図1)。

図1 広域機関の業務に必要な2つの情報通信システム。出典:広域的運営推進機関設立準備組合

 このシステムを使って発電事業者の供給計画をとりまとめたうえで、小売事業者からの需要見通しと合わせて需給計画を策定できるようになる。さらには地域をつなぐ連系線を含めて電力系統(送配電ネットワーク)の計画と監視を実行しながら、各地域の系統運用者(送配電事業者)に融通の指示などを出す役割がある(図2)。

図2 「広域機関システム」の全体像と業務フロー(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 全国レベルの需給調整を従来よりも機動的に実行できるかどうかは、広域機関システムの機能と担当者の運営能力にかかっている。すでに広域機関の設立準備組合がシステムの要件(RFP:Request For Proposal)をまとめて、それに基づく提案を複数の開発会社から集めた。各社の提案を評価して8月末までに開発会社を決定することになっている。

 計画では10月から開発に着手して、2015年12月までに作業を完了する(図3)。これと並行してシステムを稼働させるためのサーバーを2015年7月から複数の拠点に導入していく。開発したシステムは2016年1月から3カ月間かけて試験を実施して、小売の全面自由化を開始する2016年4月に本番の運用へ移行する予定だ。

図3 「広域機関システム」の開発スケジュール(画像をクリックすると拡大)。出典:広域的運営推進機関設立準備組合

 広域機関システムで策定する需給計画の基本になるのは、各地域の最大需要電力と供給力である。システムが稼働する2016年4月までは、電力会社が広域機関に対して定期的に需要と供給の予測値を提出することになっている(図4)。

 翌日の予測値は17時30分までに提出が義務づけられていて、現在の「でんき予報」よりも早い時間帯に報告する必要がある。これを受けて広域機関は全国の需給予測を17時30分以降に迅速に公表する。状況によってデマンドレスポンスなどの対策を発動することになる。

図4 電力会社が提出する需給計画(広域機関システムが稼働する2016年4月までの期間)。出典:広域的運営推進機関設立準備組合

 このほかに広域機関が運用する重要な情報通信システムに「スイッチング支援システム」がある。電力の需要家が小売事業者を変更しやすくするためのシステムで、同様に2016年4月から稼働する予定だ。広域機関システムよりも1カ月遅れて2014年11月に開発作業に着手する計画である(図5)。

図5 「スイッチング支援システム」の開発スケジュール(画像をクリックすると拡大)。出典:広域的運営推進機関設立準備組合

第19回:「発電と小売をつなぐ一般送配電事業者、需給調整能力に課題が残る」

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