自由化に向けて組織強化に動く新電力会社、いま求められる人材はエネルギー業界の転職市場動向(2)

電力小売の全面自由化を控え、新電力会社(PPS)から人材紹介の依頼が増加している。特に今後の事業運営を支える幹部候補の採用に各社とも積極的だ。採用が多い職種や求められる経験・スキルなどを、ジェイ エイ シー リクルートメントの転職コンサルタントが解説する。

» 2015年03月27日 13時00分 公開

第1回「求人数が2倍以上に増加、2015年のエネルギー業界」

 2015年3月11日現在、新電力会社(PPS)の届け出は596社に達した。ジェイ エイ シー リクルートメント(以下、JAC)が人材紹介の依頼を受けた新電力会社(PPS)の数は前年同月と比較すると10倍にのぼる(図1)。求人数も6倍に増えている。あるPPSでは2年前と比べて社員数が2倍以上に拡大しており、新電力市場の成長に向けて企業の組織強化が進んでいる。

図1 採用に動くPPS企業数(左)と求人数(右)の伸び。出典:JAC

 すでに自由化されている特別高圧・高圧分野で事業を展開しているPPSでは、業績好調による増員を図る企業が多い。一方、スタートアップ企業では事業開始に備えた新規の採用が目立つ。いずれにも共通するのは、事業の根幹を支えるキープレーヤーを求めている点だ(図2)。具体的な職種を見ていこう。

図2 PPSが求める代表的なポジション。出典:JAC

1.電力ビジネスの事業運営を担う『事業企画』

 異業種から参入したPPSの中でも、特に既存の顧客ネットワークを強みにできるケースでは、ビジネススキームの策定や事業計画の立案・推進を担う経営企画部門の人材強化が必要とされている。新規事業を立ち上げた経験のほか、エネルギー業界の知識・経験のみならず、構想力や行動力、人脈などを持つ人材が即戦力として歓迎される傾向にある。

2.安定的な電力供給に不可欠な『需給管理』

 PPSにとって重要な需給管理の分野では、大手電力会社や特別高圧・高圧分野で事業展開している企業以外に経験者が存在しないため、採用にあたっては幅広い業種・業界から人材を探さざるを得ない状況だ。天候など不確定要素に基づいた発電量と電力需要の見通しを立てる業務の特性から、金融機関での定量分析によるリスク管理業務の経験者をはじめ、ビッグデータ解析の経験者などは比較的近い能力を持つ人材と考えられている。

3.発電事業者から電力を確保する『調達』

 需給管理とともに電力自由化により採用の拡大が見込まれる新しい職種である。発電事業者に対して電力の買い取り営業を行うことから、営業経験を必須とする場合が多い。需給管理と同様に経験者が圧倒的に少ないため、電力に関する知識や電力ビジネスに関する素養がある人材は特に歓迎される。さらに官公庁による電力の競争入札もあり、官公庁とのパイプを持つ人材が優遇される傾向にある。

 PPSが急速に増加する状況にありながら、事業の実態は依然不透明とも言われている。とはいえ今後の日本の電力市場を牽引する数多くの有力企業は本格的な事業化に備えて組織の強化を進めている。2016年の電力小売全面自由化、2020年の発送電分離に向けて、新たなエネルギー産業を支える人材が求められている。

第3回「グローバルなキャリア形成と高年収が魅力、外資系エネルギー企業への転職」

著者プロフィール

由里 朋久(ゆり ともひさ、左)株式会社 ジェイ エイ シー リクルートメントEnergy Infra Plant Team電力業界(再生エネルギー、節電ビジネス、IPP、PPS)専任コンサルタント。転職コンサルタントとして10年以上の経験を持つ。

上野 浩幸(うえの ひろゆき、右)株式会社 ジェイ エイ シー リクルートメントEnergy Infra Plant Teamプラントエンジニアリング業界、建設コンサルタント業界専任コンサルタント。入社以来一貫してプラントエンジニアリングと建設コンサルタント企業を担当している。


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