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» 2015年05月07日 09時00分 UPDATE

エネルギー列島2015年版(3)岩手:「鉄と魚のまち」がエネルギーのまちへ、太平洋の波と風を電力に (1/2)

製鉄と漁業が盛んな岩手県の釜石市で再生可能エネルギーの導入プロジェクトが続々と始まる。国が推進する海洋エネルギーの実証フィールドに選ばれて、釜石湾の周辺海域で波力発電と洋上風力発電を推進する計画だ。陸上では風力に加えて木質バイオマスを活用した発電事業が広がりを見せる。

[石田雅也,スマートジャパン]

 釜石市はラグビーで有名な「新日鉄釜石」を中心に製鉄業で栄えてきた。太平洋に面して漁業も盛んな地域だが、東日本大震災を機に再生可能エネルギーを導入して災害に強い都市づくりに力を入れている。

 その象徴が海洋エネルギーの開発プロジェクトである。政府の支援を受けて波力発電と洋上風力発電の実証実験に取り組むことが先ごろ決まった。実験の対象になる海域は2カ所を想定している。地形が複雑なリアス式海岸に沿って、1カ所は沖合に、もう1カ所は釜石湾の入り口付近で実施する予定だ(図1)。

kaiyou1.jpg 図1 釜石沖の海洋再生可能エネルギー実証フィールド。出典:釜石市産業振興部

 沖合では洋上風力と波力の発電設備を浮体式で設置する(図2)。この一帯は水深が130メートルもあって、発電設備を海底に固定する着床式では建設できない。日本では陸から近い場所でも海底の深いところが多い。発電設備を海上に浮かべる釜石沖の実証実験の成果は今後の洋上風力や波力発電の拡大に生かせる。

kaiyou3.jpg 図2 実証フィールドの配置計画と周辺環境。出典:岩手県商工労働部
kaiyou0.jpg 図3 リニア式の波力発電システム。出典:NEDO、東京大学

 もう一方の釜石湾の近くでは波力発電の小規模な試験を実施して、沖合の実証実験につなげていく。水深は50〜60メートルと浅く、波の高さも沖合に比べると低いために試験運転に向いている。

 波力発電のシステムは東京大学などが開発を進めているリニア式を採用する予定だ(図3)。リニア式は波のうねりによる上下運動を利用して、発電機を回転させる仕組みになっている。

 現在のところ実証実験の具体的なスケジュールは決まっていないが、洋上風力と波力ともに2017年度までに運転を開始できる見込みである。並行して沖合の実証設備から陸地の変電所(サブステーション)まで送電用の海底ケーブルを敷設する。

 陸上にも再生可能エネルギーが豊富なエリアは広がっている(図4)。特に山間部を中心に風力と木質バイオマスの導入が活発だ。陸上の風力発電では「釜石広域ウインドファーム」の規模が圧倒的に大きい。

kamaishi1.jpg 図4 釜石市の再生可能エネルギー導入可能エリア。出典:釜石市復興推進本部
kamaishi_kouiki1.jpg 図5 「釜石広域ウインドファーム」の風車。出典:ユーラスエナジーホールディングス

 市の北部に連なる丘陵に43基の風車が並び、発電能力は43MW(メガワット)に達する(図5)。豊田通商と東京電力が合弁で運営するユーラスエナジーグループが2004年に運転を開始した。この同じ区域に57基の風車を増設する計画が進んでいる。

 新設する風車は1基あたり2MWの発電能力で、合計すると114MWになる見込みだ。2020年1月に運転を開始する予定で、既設分と合わせて157MWの巨大な風力発電所が誕生する。島根県にある日本最大の「新出雲風力発電所」(78MW)の2倍の規模になる。

 陸上風力の設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)を標準の20%として計算すると、年間の発電量は2億7500万kWh(キロワット時)まで拡大する。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して7万6000世帯分になる。釜石市の総世帯数(1万7000世帯)の4倍以上に相当する発電量だ。

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