全国の電力会社が首都圏の家庭を対象に相次いで小売に乗り出した。東北電力が3月10日に料金プランを発表、すでに営業活動を始めた中部・北陸・中国・四国電力と合わせて5社が東京電力の管内に攻め込む。基本料金が無料、一定の使用量まで固定料金など、シンプルで割安なメニューを用意した。
連載:「電気料金の新プラン検証シリーズ」
これまで東京電力が独占してきた関東一円の家庭・商店向けの市場規模は2兆5000億円に達する。全国の3分の1を占める巨大な市場に向けて、他の地域の電力会社が割安な料金プランで営業活動を開始した。地元では従来と変わらないメニューで守りの姿勢を固めながら、首都圏に広がる東京電力の管内では特色のあるメニューを投入して顧客開拓を進めていく。
3月10日までに東北・中部・北陸・中国・四国電力の5社が、首都圏の家庭・商店を対象にした料金プランを発表している。さらに九州電力グループの九電みらいエナジーも参入した。残る北海道・関西・沖縄電力の3社は自社の発電コストが高いこともあり、今のところ静観の構えだ。
各社が発表した新プランの中で、思い切った料金体系でのぞむのが中国電力と四国電力の2社である。中国電力は「ぐっどずっと。プラン シンプルコース」というユニークなネーミングのメニューを発表した。東京電力の標準メニューである「従量電灯B」を利用中の家庭が対象になる。
このプランでは基本料金が無料で、毎月の使用量に応じて課金する電力量料金の単価は一定だ(図1)。名前の通り非常にシンプルな料金体系である。契約電力が60A(アンペア)以下の家庭すべてに適用できる。最低料金が3240円に設定されているため、月間の使用量が127kWh(キロワット時)以上の家庭で利用することが望ましい。
電力量料金の単価(25.62円)は「従量電灯B」の2段目(120kWh超〜300kWh)の単価(25.91円)よりも安く設定した。「従量電灯B」の30Aで契約している場合には、月間の使用量が123kWhになると3240円を超える。それ以上に使用量が多くなれば、「ぐっどずっと。プラン シンプルコース」のほうが割安になる(図2)。
一方の四国電力は2種類の料金プランを用意した。契約電力が30〜60Aの標準的な家庭には「オリーブプラン」、60A超の家庭や商店・事務所には「イエロープラン」を提供する(図3)。20A以下の家庭は対象に入らない。
「オリーブプラン」は月間の使用量が300kWhまで一律7800円の固定料金である。300kWhを超えると1kWhあたり28.3円を加算する仕組みだ。東京電力の「従量電灯B」の3段目(300kWh超)の単価(29.93円)と比べて1.63円安い。月間の使用量が増えるほど割安になっていく。
四国電力は契約電力が40Aの家庭をモデルケースに、月間使用量の違いによる「オリーブプラン」と「従量電灯B」の料金を比較した。使用量が300kWhでは月額318円の違いだが、500kWhまで増えると644円の差がつく(図4)。
ただし東京電力の管内ではガス会社や電話会社をはじめ、セット割引などを通じて年間に1万円以上も割安になるプランを発表している。首都圏に参入する電力会社にとって、料金面では厳しい競争が待ち受けている。
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