文化庁の「AIと著作権の考え方」を理解するための“3つのポイント” 弁護士が簡潔に解説(3/3 ページ)
3.生成・利用段階は“依拠性の考え方”に注目
生成・利用段階でも、さまざまな重要論点が挙げられていますが、1つ挙げるとすると、著作権侵害に関する考え方が注目されます。
例えば、イラストの生成AIでは、AI利用者が意図せずに既存イラストに似たイラストを生成することがあり得ます。この場合に、利用者が既存イラストの著作権を侵害したといえるか、という点は、考え方が定まっていませんでした。著作権侵害の成立には、他人の著作物に依拠した、という「依拠性」の要件があるところ、AIの場合に「依拠性」をどう捉えるかについて議論があったためです。
「考え方」では、AI利用者が既存の著作物を認識していなかった場合について、AIの学習用データに既存の著作物が含まれる/含まれない場合に分けて検討されています。
まず、AI学習用データに既存著作物が含まれない場合ですが、生成物が既存著作物に類似していても、偶然の一致として、依拠性は認められず、著作権侵害は成立しないと考えられるとされています。
他方で、AIの学習用データに既存の著作物が含まれる場合は、著作権侵害になり得るとしました。ただし、一定の場合は著作権侵害にならないとの例外も示されています。
ごく簡略化して記載しますと、生成AIにおいて学習に用いられた著作物が生成されないように技術的措置が講じられているなど、生成・利用段階で利用されていないと評価できることをAI利用者の側で主張・立証できた場合は、著作権侵害にならないとの考え方です。
こちらも、さまざまな意見があり得、何かの措置が講じられていようが、学習した著作物と似た著作物が生成された以上、依拠性ありとして著作権侵害になるという考えもあり得るでしょう。
仮に「考え方」の現行案が最終版に採用された場合は、各生成AIを利用する際に「技術的措置」が講じられているかどうかを利用者は確認することが重要になります。
この他、著作権侵害があった場合に、著作権者が生成AIの開発事業者に何を請求できるのかという論点や、AI利用者のみならず「AIの開発事業者」や「AIのサービス提供事業者」が責任を負うことはあるのか、という論点についても考え方が示されています。
以上「考え方」のポイントを簡単にお伝えしました。生成AIを活用中または活用予定の方は、今回の「考え方」の最終版が出された場合には、内容をよく確認頂くことをお勧めいたします。
今回は本当にごく簡単に内容をご紹介しておりますので、現時点で、各論点について、より詳しく知りたい方は、記事執筆時点で最新版である、2024年2月29日版の「考え方」の本文をご確認ください。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia AI+に関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
引退した人型ロボ、“溶けた鋼の海”に沈む アーノルド・シュワルツェネッガー氏が提案 米企業が動画公開
-
2
「FDE」は常駐SEのすげ替えなのか “人月商売の死”を打破したい国内SIer、打開策は意外なところに?
-
3
総額2.3兆円、千葉市に巨大な「AIデータセンター」建設へ 発電大手JERA参画の“ドリームチーム”、勝機どうつかむ?
-
4
ChatGPTにAIでバーチャル試着機能とカメラでの書類スキャン→PDF化機能
-
5
SIE、PS5向けAI採用画質向上技術「QSSR」発表 AMDと共同開発、「Marvel's Wolverine」と「Ghost of Yōtei」が初対応
-
6
Google、「Gemini 4 Pro」ではなく「Gemini 4 Argon」発表 まずはサイバー防御組織に限定提供、出力上限は100万トークンに
-
7
人間は「取締役2人だけ」 実務をAIが担う新会社、セキュリティサービスのHENNGE
-
8
「まず、その業務なくせない?」 野村不動産HDが経理DXで「年間9000時間」を生み出した“引き算”の考え方
-
9
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
-
10
「AIを使えば早くできるでしょ」と言われがち――エンジニアを困らせる"勘違い"の正体とは?
SpecialPR
ITmedia AI+ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmedia AI+をフォロー
あなたにおすすめの記事PR