戦後80年、カラーでよみがえる“戦時中の動物たち”の姿とは? AIと人力で戦争写真を着彩、第一人者が語る思い(4/4 ページ)
AIで写真を動画化 プロモーションに“使えなかった”理由とは?
「動物たちがみた戦争」では、モノクロ写真のカラー化の他に、動画生成AIによる写真の動画化にも取り組んだ。毎日戦中写真にある動物が写ったモノクロ写真を、AIを活用した動画生成サービス「Kling AI」などで動画化。巻末のQRコードを読み込むと、動画を視聴できる仕組みになっている。
動画は当初、同書のプロモーションとしても利用する予定だったという。しかし結局、プロモーションとして一般に公開しない方針に変更した。その理由の一つが、渡邉教授が「本物にしか見えなかった」と形容するほどの動画のクオリティーだ。
このAI動画は、新聞に関する展示を行う日本新聞博物館(横浜市)で開催中の企画展「戦後80年・昭和100年 報道写真を読む『1億人の昭和史』から『毎日戦中写真アーカイブ』へ」の展示としても公開している。渡邉教授によると、来場者の中には動画を「本物だと思っている人もいる」という。
他にもAIによる動画化は、モノクロ写真のカラー化に比べて「視覚的に強烈なのに、作る手間は減っている」点も考慮した。例えばKling AIでは、モノクロ写真をアップロードして、「日本兵が馬と遊んでいる」といったプロンプトを入力。わずか数分で動画が完成するという。
加えて「カラー化は人ができる。AIが無くても、根気で塗ればいい」一方、動画化については「人が作れない。静止画から矛盾なく動画にするのは、(人では)物理的に不可能」と渡邉教授。「カラー化に比べてさらにブラックボックス化が激しい」として、プロモーションでの利用は断念した。
一方で「すごい時代であることを実感して、AIとどう付き合うか考えてほしい」という意図から、同書巻末のQRコードからは動物が写る毎日戦中写真のAI動画を視聴できるようにした。
人間が“創造性”を発揮する時代は終わり? 今後の挑戦は
渡邉教授は、モノクロ写真のカラー化以外にも、広島県の原爆被害に関する資料をデジタル地球儀上に表示する「ヒロシマ・アーカイブ」を始め、ウクライナの戦争被害を示すデジタルマップ「ウクライナ衛星画像マップ」や、能登半島地震の被害状況を3Dデータ化した「能登半島災害3Dデータ」など、さまざまな戦争や災害に関するデジタルアーカイブに携わっている。
AI技術も積極的に活用しており、最近では、ヒロシマ・アーカイブをリニューアルする際、米GoogleのAIモデル「Gemini」を使ったコーディングができる「Google AI Studio」を利用。当初は「あまり期待していなかった」というが、既存のコードを入力して「改良案を出して」と依頼するだけで作業が進み、約1時間で更新が完了した。
また、TBSとのコラボレーションで、海底に沈んでいる特攻機の3Dモデルを表示するコンテンツを作成した際にも、Google AI Studioを活用した。3Dデータを表示する部分の制作をAIに依頼したところ、UI・UXデザインの観点からも「悪くない」と思えるようなものを出力したという。
渡邉教授は、こうした事例を踏まえて「人間の創造性が問われる時代になっている」と指摘する。モノクロ写真のカラー化でも「AIがわれわれを納得させる色を全て出してしまい、『人間が創造性を発揮する場所がなくなったね』みたいな時代がすぐ来るような気がする」(渡邉教授)
では今後、渡邉教授はどのようにデジタルアーカイブに関する活動に取り組んでいくのか。渡邉教授は「やっぱり汗をかくところをやりたい」と語る。これからは「人間だけが資料を作っていた時代は終わり、AIが資料を作り出す時代になる」一方で、「人しかいなかった時代の資料の価値は高まる」と予測。「過去の出来事をなるべく未来的に表現するというミッションに変わっていく」との展望を示した。
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