ここで登場願ったのが、筆者がレポート作成の際に頼っているもう一つの生成AI系サービス、Googleの「NotebookLM」である。これは米国で23年7月にリリースしたサービスで、日本でも24年6月から利用可能になった。
NotebookLMは複数の情報源(特定のサイトやアップロードしたファイルなど)を指定すると、それに基づいてユーザーの質問に回答してくれるというサービスで、参照したい情報が既に特定されているトピックについて文章をまとめるときに多いに役立つ。例えば、特定の事件やイベントについて分析した複数の記事をNotebookLMに与え、そこから要約を生成させるといった具合である。
それとまさに同じことを、先ほどdeep researchとDeep Researchが作成した、お互いの比較記事に対して行ってみた。これら2つの記事をインプットとして整理された、deep researchとDeep Researchの主な長所3つ、ならびに推奨されるユースケース3つが以下の通りだ。
| ChatGPT Deep Search | Gemini Deep Research | |
|---|---|---|
| 主な長所 | ・レポートの分析の深さと詳細さ ・適応型分析戦略(調査結果に基づいて、検索戦略をリアルタイムに適応させることで、関連性の高い検索を行う) ・ユーザーが用意する情報の取り込み |
・膨大な情報の処理 ・マルチメディア分析(テキスト、画像、音声、動画など、さまざまなモダリティの理解と推論が可能) ・Google Workspaceとの統合 |
| 推奨ユースケース | ・トレンド分析と新規市場調査 ・クリエイティブ企画 ・問題解決の発想 |
・学術研究のレビュー ・法律・規制調査 ・企業の財務分析 |
要するにChatGPTのdeep researchは、探偵のようにさまざまな推論を行いながら、調査の途中で柔軟に深掘りポイントを選んでくれるエージェント。一方、GeminiのDeep Researchは、学者やアナリストのように、大量のデータをしらみつぶしに確認してくれるエージェントといえるだろう。
筆者はdeep researchを使い始めてからまだ1週間しかたっていないが、この2つのサービスの比較・分析結果は、体感的にも納得できるものだ。そこで最後に、(1)新しいアニメーション作品の企画立案、(2)特定の法制度の分析、の2つのテーマを用意して、両サービスがどのような結果を出してくれるか、実際に検証してみたい。
先ほども触れたが、25年のNHK大河ドラマ「べらぼう」は、18世紀後半に江戸で活躍した蔦屋重三郎が主人公だ。これに便乗して、新しいアニメーション作品の企画を立ててみたい。deep researchとDeep Researchに対して「新しいアニメーション作品の企画を考えています。18世紀後半の江戸を舞台に、実在の人物が活躍する、ノンフィクションに近い作品にしたいのですが、良い案はあるでしょうか?」と尋ねてみよう。
まずはChatGPTだ。前述の通り、deep researchは調査を開始する前に、方向性を絞り込む質問をしてくる。今回は次のような問いが表示された。
どれも悩むところだが、今回は「犯罪・ミステリーを中心に描きたいので、そうした物語がつくれるような情報を集めてください」と答えてみよう。
一方のGeminiは、次のようなリサーチ計画を立ててくれた。
先ほどChatGPTに対して追加指示を行ったので、Geminiに対しても「犯罪・ミステリーを中心に描きたいので、そうした物語がつくれるような情報が集まるような計画にしてください」と指示を与え、計画を修正させた。
以上の準備を行った上で、レポート作成を実行したところ、それぞれ次のような結果が得られた。
| ChatGPT deep reearch | Gemini Deep Research | |
|---|---|---|
| 出力されたレポート(日本語)の文字数 | 約1万5000文字 | 約3000文字 |
| 参照した情報源の数 | 23 | 80 |
| 主な内容 | ・犯罪の実例 ・司法制度と犯罪捜査 ・犯罪に関連する実在の人物 ・江戸の闇社会 ・町人文化と犯罪の関係 |
・江戸の社会情勢や文化、風俗、犯罪 ・江戸の犯罪やミステリーにまつわる事件 ・犯罪・ミステリーにまつわる実在の人物 ・既存作品分析 ・作品案 |
やはりDeep Researchのレポートの方が網羅的な内容となっている。しかし分量が約3000字ということで、それぞれの項目の薄さは否めない。一方でdeep researchはというと、新書本の1章程度に相当する分量で、各項目について十分な解説がなされている。例えば次のスクリーンショットは「江戸の闇社会」の一部なのだが、このようなエピソードトークが各所にちりばめられており、読み物としても楽しめるレポートとなっていた。
クリエイティブ企画や新商品立案のように、オープンエンドの質問に関する調査については、deep researchがその威力を存分に発揮してくれるだろう。
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