XIIIの秘密~プログラマブルシェーダを使わなくてもできる効果的な表現(中編)(2/2 ページ)
XIIIのセルシェーディング手法は「重いけど軽い?」
XIIIのセルシェーディングは互換性が高く、特殊処理系の大部分をCPUで処理できるのでGPU性能に依存しない。だからこそプログラマブルシェーダを持たない旧式GPUでもXIIIが動作できてしまうのだ。
だが、これが逆に欠点と言うこともできる。 例えば、ジオメトリが膨大なシーンにおいて、XIIIの手法ではGPUによるアクセラレーションができないために、処理が重くなってきてしまうはずなのだ。具体的に言えば、陰影処理では陰影の付き方に応じてポリゴンが増加し、輪郭描画においては、取り扱うポリゴン数が常に2倍になってしまう。
ところが、こうした問題点に対する対処も、XIIIではかなり大胆な発想で行っている。
まず、XIIIではセルシェーディングの対象とする3Dオブジェクトを「動くキャラクター」に限定してしまっている。具体的にいうと、XIIIでは敵キャラにはセルシェーディングを施すが、背景や小道具、大道具オブジェクトにはセルシェーディングを適用していない。
そして、セルシェーディングが適用される3Dキャラクターの構成ポリゴン数は、わずか1000ポリゴン前後と、少なめに抑えられている。これなら、輪郭描画処理を配慮しても2000ポリゴン前後ということになる。あの「トゥームレイダー-美しき逃亡者」のララ・クロフトが約5000ポリゴンというから、XIIIの少なさがいかほどか実感できるだろう。
こうした工夫によって、GPUにかかる処理負荷はそれほどでもなく、最近の3Dゲームにしては「異様なまでに」軽く仕上がっているのだ。
セルシェーディングされたキャラクターと、普通に陰影処理された背景グラフィックスとの質感の違いは、やはりプレーヤーに分かってしまう。しかし、それが逆にFPSというゲームシステムの中で「敵を狙いやすい、見つけやすい」ことにつながるため、プレーヤーに有利に働いている。
その技術背景から考えると、狙ってこのようなシステムにしたとは思えないが、とにかく、こうしたビジュアル処理の不均一さがゲームプレイにおいてマイナスイメージになっていないのはお見事……というか、ラッキーだったといえよう。
技術上の弱点を補うために。漫画らしく見せるために
さて、先ほど解説した輪郭線描画の負荷以外に、実はかなり重大な問題をXIIIでは抱えている。それは、この方法では描画されない輪郭線が多々あるということだ。
例えば、サイコロや段ボール箱のような立方体を3面が見える俯瞰視点で見てみよう。本来ならば、3面を区切る内側の3本の線分にも輪郭線が現れないと「それっぽく」ない。しかし、XIIIの手法でこの立方体を描画すると、最外殻にしか輪郭線が現れないのだ。
もちろん、こうした弱点を克服している他手法も存在するのだが、互換性を重視したXIIIでは、ここでも大胆な対策で弱点を目立たなくしている。
それは、3Dモデルに貼り付ける画像テクスチャに対し、あらかじめ、それっぽい輪郭線を描き込んでおくといった、えらく単純な解決策だったりする。
下の図は、XIIIに登場する、あるキャラクターのテクスチャを示したものだ。服のシワ、顔の凹凸、指の切れ目など、面の陰影や輪郭線などが細かく描き込まれている。これらの表現はリアルタイム3D処理された陰影ではないので、物理的な光学現象としては間違いだらけなのだが、最終的な映像を見る限りは、それほど大きな不自然さを感じさせない。
なお冒頭で触れたように、XIIIIはアニメではなく漫画らしいビジュアルを目指している。そこで、このテクスチャのデザインに当たっては、あえて紙に印刷したような色ばかりを選定し、色数の使用も限定的にしている。
モレト氏によれば「キャラクターによっては最近のゲームではあり得ない、たった16色しか使っていないものもある」とのことだ。
(次回は、プログラマブルシェーダを使わない特殊描画処理について解説する予定だ)
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