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Maxellのデジタルペンは、“ITバリヤフリー”を目指す(2/3 ページ)

» 2004年06月28日 12時47分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 デジタルペンの構造をよく見てみると、ペン先の下に小さなカメラが付いているのがわかる。このカメラでボールペンの筆跡をなぞっていく……わけでは全然ない。デジタルペンのミソは、実はペンではなく、紙のほうにあるのだ。

 デジタルペンが読み取れるのは、表面に極小のドットパターンが印刷された専用紙だけだ。この極小パターンは「アノトパターン」といって、スウェーデンのアノト社が開発したものである。

 アノトパターンは、格子からちょっとズレてる6×6の36個のドット群から絶対アドレスを算出する方法で、つまりはインターネットのIPアドレス同様、だぶったアドレスというのが存在しない。だからこのパターンが印刷された紙の位置はおろか、どの紙か、あるいはどのノートの何ページ目かといったことまで、わかるのである。

デジタルペンの秘密は、紙のほうにある

 アノトパターンで表現できるアドレス面積は実に広大で、論理的にはユーラシア大陸に匹敵する面積があるという。世田谷の道ばたから宮崎県は白浜海水浴場の砂浜からデカン高原の斜面を登ってスペインの牛の背中に至るまで、「うりゃうりゃうりゃっ」と果てしなくメモを取り続けることが可能なのである。メモ用紙というのは一度書いたら使い捨ての運命にあるメディアだが、アドレス的には世界中の人がデジタルペンを使っても、相当余る。

 こんな話を聞いたのが、今年の2月であった。そのときは個人で買っても使い道がないというので、なんだーと思ったのだが、なんとこれがこの7月1日に一般に販売されることになったのだ。むろん一般用として発売されるからには、アプリケーションもちゃんと付いている。

「時間軸」がある筆記具

 実際に発売されるデジタルペンセットをお借りしてきたので、どういうものか使ってみた。セットには、デジタルペンとソフトなどの他に、専用A5、A4ノート、6穴システム手帳サイズのビジネスメモ、ビジネスメール用紙が付いてくる。まず簡単な例から、A5のノートを使って見よう。

7月1日に発売される「デジタルペンセット」

 ノートを使い始める前に、表紙の次にある「New Digital Note」というボックスをデジタルペンの先っちょでチョンとさわる。これでこのノートとデジタルペンが1対1で割付けられた。ノートに名前を書くようなものだ。

 あとは普通のノートと同じように、ウリウリと書いていけばいい。面白いのは、書いているときは普通の青のボールペンだが、PCに転送したときに色が付くように設定ができる。付属品として、色とペンの太さが書いてある名刺サイズのカードがあり、書きたい色と太さのところをそれぞれチョンとタッチして書けばいいのだ。もちろんノート上ではただの青いボールペンなので、その辺は想像力が必要なのだが、アイデアとして可能性を感じる。

 書いたあと、PCにデジタルペンを接続すれば、データ転送が行なわれる。閲覧するのは「デジタルノートビューワー」というソフトで、見た感じはAdobe Acrobat Readerの簡易版のようだ。書いたデータは、パーツごとに別々に拾い上げて、コピーや場所移動など、自由に編集することができる。さらにWordやPowerPointに画像データとしてエクスポートする機能もある。

アクロバットっぽいスタイルの「デジタルノートビューワー」

 面白いのは、書いた順番でそのページを「再生」することができる機能だ。今まで平面のメモは、全面書き上がった状態がすべてであり、それ以上でもそれ以下でもない。

 だがデジタルペンの世界では、書いたものに対して「時間軸」という考え方が含まれてくる。あとでメモを見直したとき、どういうプロセスでそのメモができあがってきたのかが分かるのである。これは自分で見直す時にもいいだろうし、人に順番に何かを説明するときにもいいだろう。

 簡単なプレゼン資料も、ノートにメリメリ書いていっただけで、ある程度できてしまう。イラストなどがうまい人なら、絵が描き上がっていく様子まで人に見せられるので、訴求力も全然違うはずだ。

 もう一つ面白いのが、「ビジネスメール用紙」だ。これは6穴システム手帳サイズの紙なのだが、ここに書いた内容を、PC側の「Business Mail」というソフトウェアを経由して、メールできるのだ。まず事前にソフトウェア側で、発信する側のメール設定をやっておく。次に10件まであるリストに、送信したいメールアドレスを登録しておく。

 そこまで準備ができたら、あとはビジネスメール用紙に書くだけだ。内容を書いて、送信したい相手のマスにチェックを付け、送信にもチェックを付けておく。あとはPCと接続するだけで、勝手にメールが送られていく。メモ自体はJPEG添付となっており、ケータイなどにもメールできる。

メール専用紙にメールしたい内容を書いてPCに接続する
内容がPC側のソフトに読み取られ、メール送信される
届いたJPEGがこれ。マクセルの専用サーバにも一定時間保管される

 今まで素早く誰かにメールを送るには、PCやPDA、あるいはケータイで文章をチマチマと打つ必要があった。だがデジタルペンの世界では、PCはただの送信機に過ぎない。手書きの原稿やメモ、図版などが、つないだだけで素早く送れるのだ。

 この機能は、いろいろな可能性を含んでいる。

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