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Web2.0テクノロジーが間近に見せる災害の現場

» 2007年10月25日 16時15分 公開
[Steven J. Vaughan-Nichols,eWEEK]
eWEEK

 ノースカロライナ州アッシュビルの郊外にある山腹のわが家では、空は暗く灰色に見える。だが、わたしのPCの画面に映るサンディエゴの空は、焼けた家から立ち上る煙に覆われている。

 テレビのおかげで、わたしたちはかつてないほど災害に近づいている――それがいつどこで起きてもだ。マンハッタンやワシントンD.C.、United 93が墜落したペンシルベニア州の野原にいなくても、わたしたちは9/11の恐怖を知ることができた。数十年前からそうだ。若いころを振り返ってみれば、ベトナムのことを、泥と血にまみれて疲れた若い兵士たちを映す、いつまでも続く夜のニュースとして思い出す。

 だが今日、自宅から見えるのは全体像だけではない。多数の技術を収束したことで、遠くの災害が個人のものになっている。

 例えば、わたしはYouTubeで、サンディエゴのテレビリポーターが燃え尽きた家の中を歩き回る映像を見た。焼けたのはそのリポーターの家だった。

 このすごいビデオを見つけたのは、友人のアンディ・パトリジオのおかげだ。彼もジャーナリストで、わたしと同じくInternet Press Guildに所属している。この組織ではメーリングリストという「古い」インターネットコミュニケーションツールを使って、連絡を取り合っている。テクノロジージャーナリズムにおいて誰がどこで何をやっているかに加えて、メンバーが心臓発作から回復する過程や、誰が新しい仕事を得たのか、誰が最近引っ越したのか、カリフォルニア州南部に住んで働いているメンバーがどうしているのかを知ることができる。

 わたしたちはもっぱらインターネットのおかげで存在しているコミュニティーだ。ただ、そのみすぼらしいWebサイトとメーリングリストはまだ90年代のままだ。わたしは、ソーシャルネットワーク、LiveJournal、Facebook、MySpaceのサンディエゴグループを通じて互いの消息を確認し、ニュースを共有し、どのサイトの山火事のニュースが一番豊富で情報が新しいかを教え合っている人をたくさん知っている。要するに、彼らは「ご近所さん」になったのだ。

 50年代のご近所さんの概念――隣家の子供、週末に出かけるときに芝の水やりを頼める向かいの家の女性――は、21世紀には古くさい紋切り型のように思える。昔のテレビ番組にしかない、あるいはシンプソンズ一家をびっくりミラーに映したような考えだ。

 だが、わたしたちはご近所さんになっている。隣に住んでいる人の名前も知らないかもしれないが、自分と同じ「LOST」ファンで、サンディエゴのバルボアパーク近くに住む友人を知っている。World of Warcraftのプレイ仲間で、サンディエゴの海軍基地にいる人を知っている。わたしたちはジム・フォーブスのテクノロジーニュースForbesOnTechを読んでいたかもしれないが、今はDEMO Fall 07で何がホットだったかではなく、山火事で避難命令を受けた彼の、自称「テクノロジー難民」とそのペットの旅の話を読んでいる。

 もっとも、オンラインコミュニティーやブログには言葉以上のものがある。テレビのカメラマンがたまたまいた場所だけではなく、ネット対応の携帯電話を持った人がQUALCOMMスタジアムに避難した友人や家族の写真を撮れるような場所で、人々の姿を見られる。「Witch Creek Fire(ウィッチクリーク火災)」になりつつあった火事の煙の中に仲間が突っ込んでいく様子を撮影した消防士と一緒に消防車に乗っているような体験もできる。

 良くも悪くも、わたしたちは1つの世界、1つの地域になった。クリック1つで友人や見知らぬ人の個人的な災難や勝利に触れられる場所だ。わたしたちは皆、今サンディエゴに住んでいるのだ。この街に仕事や家を持つ人たちの状況が良くなることを祈っている。

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