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» 2008年05月12日 15時30分 公開

科学なニュースとニュースの科学:翼竜って、結局鳥なの? 恐竜なの?

昨年から、北九州、大阪、長崎、名古屋、東京と、国内を巡回しながら「世界最大の翼竜展」が開かれています。ところでこの翼竜って鳥類でもなければ恐竜でもないってご存じでしたか?

[堺三保,ITmedia]

 昨年から日本各地で巡回開催されている「世界最大の翼竜展」が、現在名古屋市科学館で開かれているが(6月15日まで)、もう見に行った方はおられるだろうか?

 この世界最大の翼竜展、夏には東京お台場の日本科学未来館で開かれる(6月28日〜8月31日)とのことなので、今夏帰国したさいには、筆者も見に行こうと思っているんだけど、翼竜に特化した展示というのは、なかなか珍しいんじゃないだろうか。

 この展示の目玉は、第一に、「世界で1番大きい翼竜」ケツァルコアトルスの全身復元骨格、第二に、2000年以降に中国・遼寧省熱河層群で発掘された様々な化石の世界初公開という、他では見ることのできない展示品にあるという。

 なんとなく眺めてまわるだけでも、ずいぶん楽しそうではないか。

 さてそれでは、翼竜とはいったいどんな生物だったのだろう?

 今回、タイトルに「鳥なの? 恐竜なの?」と書いてみたけど、答が「どっちでもない」ということなのは、知っている人も多いはず。

 いわゆる「恐竜」というのは、あくまでも四足歩行や二足歩行の陸生動物たちで、「翼竜」とは違う種類の動物なのだ。

 まあ、どっちも「爬虫(はちゅう)類」の仲間には違いないんだけど、翼竜と恐竜はラゴスクス類という共通の祖先から、進化の過程でそれぞれ派生している。

 すごく大雑把な言い方だけど、今も生きてるトカゲやワニ(いずれも冷血動物の爬虫類)と、ティラノサウルス(たぶん温血動物だったと考えられている肉食恐竜)があきらかに種類が違うように、翼竜と恐竜も違う種類の生き物なのだ。

 同じことは、翼竜と鳥のあいだでも言える。どちらも空を飛ぶ生き物だけど、全然違う種類の動物だ。さらに言うと、けっこう類縁関係も遠い。なぜなら、鳥類は恐竜から進化したというのが定説になっている生き物だから、恐竜の子孫と言ってもいいんだけど、翼竜とは直接の類縁関係はないからだ。翼竜と恐竜を兄弟みたいなもんだとすると、翼竜と鳥は叔父と甥みたいな関係なのである。

 そのわりには、恐竜と翼竜、恐竜と鳥より、よっぽど翼竜と鳥のほうがよく似てる(なんたって、どっちも空を飛ぶしね)んだけど、これは収斂(しゅうれん)進化のせい。

イラスト

 収斂進化というのは、まったく異なる種に属する生物が、同じような生態的地位についたとき、似通った特徴を持つ姿に進化することをいう。

 翼竜も鳥類も、進化の過程で空を飛んで生活するのに適する方向に発達してったら、同じ機能を持つ組織は似たような形になってったってこと。哺乳(ほにゅう)類のコウモリや空を飛ぶ昆虫なんかも同じことだ。

 ただ、鳥類の翼は腕自体に羽毛が生えることで形成されてるけど、コウモリや翼竜の翼は長く伸びた指(と脚)の間に張った膜でできてるという違いがある。しかも、コウモリの翼の膜は4本の指のあいだに張られてるけど、翼竜の場合はたった1本の指で支えてる。そのくせ、もっとも巨大な翼竜、ケツァルコアトルスの翼長は10メートルを超えるというのだから、たいしたものだ。

 さて、そんな薄くて構造的にも弱そうな翼を持つ翼竜は、たぶん羽ばたくことはできなくて、グライダーみたいに滑空してたんだろうと昔は思われていた。

 でも、現在ではこの説はほとんど否定されてて、翼竜もちゃんと羽ばたくことはできたんだろうと考えられている。

 もっとも、例えばケツァルコアトルスみたいに巨大な生き物が常時ばたばた羽ばたいてたとは考えにくいんで、ある程度以上の大きさの翼竜は、羽ばたきと滑空を織り交ぜて飛んでたんじゃないかとも言われている。

 また、地上での歩き方についても今では、鳥のような二足歩行ではなく、前屈みになって翼のある前足も地面につけ、四足歩行をおこなっていたという見方に変わっている。

 こうした新しい発見は、新しい化石の発見からだけではなく、その分析技術や研究方法の進歩からも生まれている。

 われわれ素人は、古生物学というと、化石を掘ってる姿ばかりを想像しがちだけど、例えば、CTスキャンで化石の内部構造を調べてみたり、実際に模型を作って飛ばしてみたりと、どんどん新しい研究がおこなわれているのだ。

 特に、筆者より上の世代の人間は、怪獣映画なんかの影響もあって、古いタイプの翼竜像を思い描きがちだと思うけど、どうやら最近は、ずいぶんと復元像も変わってきてるみたいなのである。

 今回の「翼竜展」に限らず、どこかの博物館なんかに最新の展示を見に行く機会があれば、そういったことも気にかけつつ見て回ると、一層おもしろいんじゃないだろうか。

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堺三保氏のプロフィール

作家/脚本家/翻訳家/批評家。

1963年、大阪生。関西大学大学院工学研究科電子工学専攻博士課程前期修了(工学修士)。NTTデータ通信に勤務中の1990年頃より執筆活動を始め、94年に文筆専業となる。得意なフィールドはSF、ミステリ等。アメリカのテレビドラマとコミックスについては特に詳しい。SF設定及びシナリオライターとして参加したテレビアニメ作品多数。最近の仕事では、『ダイ・ハード4.0』(翻訳:扶桑社)がある。2007年1月より、USCこと南カリフォルニア大学大学院映画学部のfilm productionコースに留学中。目標は日米両国で仕事ができる映像演出家。

ブログは堺三保の「人生は四十一から」


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