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「Yahoo!は衰退資産」――MicrosoftがYahoo!から手を引いた理由

» 2008年07月25日 16時41分 公開
[Joe Wilcox,eWEEK]
eWEEK

 「Yahoo!は衰退資産だ」とMicrosoftのクリス・リデルCFO(最高財務責任者)は言った。

 クリスは7月24日、金融アナリスト向け説明会でこの発言を行った。これに先立ち同日、Microsoftのスティーブ・バルマーCEOは「そのことで話をしたが、うまくいかなかった。結構。これで終わりだ。われわれは先に進める」と述べている。

 クリスとスティーブの発言は、Yahoo!買収について対照的ながら補完的な見方を表している。とらえ方が対照的なのは、単純に見る角度が違うからだ。CEOは経営者の視点で、CFOは金融アナリストの視点でとらえている。

 Microsoftは2月1日、Yahoo!を446億ドル(1株31ドル)で買収する一方的な提案を行った。当時、Yahoo!株は20ドル前後で取引されていた。

 クリスによると、Microsoftが「相当寛大な提案」を行ったのは「スピード」が前提だったが、「時間が経過し、価値が減退して事情が変わった」。経済的に見るとこの取引はもはや意味がなくなったと同氏は言い、「経済的に正当化できる理由が必要だ」と話した。

 スティーブのYahoo!に関する発言は、この見方を補うものだった。「なぜYahoo!を買収しないのかって? Yahoo!を買収するにしても、検索で提携するにしても、合併に伴う莫大な経費が掛かることは避けられなかった。この選択肢を検討するに当たり、常にその帳尻は計算していた。率直に言って、Yahoo!買収という大きな課題がなければ、検索・広告モデルを再編する上で、われわれはもっと柔軟に対応できる」

 つまりスティーブが言っているのはこういうことだ。「メリットがあればMicrosoftは合併が正しいと言えた。しかしYahoo!が冷たくした」

 最後の質疑応答で、あるアナリストは交渉決裂に至るまでの日数を整理しようとし、5月の13日間だけだったように自分には見えたがと質問した。

 これに対しスティーブは「交渉がストップした。われわれはあの会社のCEOと話し合ったが合意に至らなかった。われわれは先に進んだ」と強調、「期限が過ぎた」と話した。

 クリスは、Microsoftが買収を提案した時点で、交渉が5月にまでずれ込むとは自分は思っていなかったと打ち明けた。「3月ごろだったら良かったのだが」

 スティーブは、2月に持ち掛けた好条件の提案について、5月まで本格的な交渉が行われなかったのは「少しばかりおかしい」と話した。

 クリスは基本方針の説明で、完全買収の可能性は「基本的にごくわずか」だが、「検索事業を何らかの形で取得する可能性はまだある」と述べている。

 スティーブが「衰退資産」を切り捨てたことは、ある意味、笑える。明らかにYahoo!は均衡を崩し、恐らくMicrosoftから見れば、Googleとの検索提携でGoogleの手に落ちた。「検索と広告は2社の一騎打ち」、つまりGoogleとMicrosoftの戦いだとスティーブは言った。

 Microsoftは2008年度に24件の買収を行っている。Yahoo!は25番目になるはずだった。買収額の平均は4500万ドルだった。

 「当社は買収を成長加速の基本的手段と見なしている」とクリスは説明している。

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