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» 2007年11月14日 20時57分 公開

その4、5「細かいことにこだわって」やる気をくじくやる気をくじく、8つの方法(2/2 ページ)

[平本相武(構成:房野麻子),ITmedia]
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5──「競争が強すぎる」と、やる気がくじける

 競争が強すぎると、やる気がくじけます。競争があると、やる気が出る人は確かにいるのですが、強すぎると、やる気がなくなります。

 例えば、進学校でよくあると思いますが、学校の中で競争をさせると、一番になってやる気が出てくる人がいるのは確かですね。ところが、本当にむちゃくちゃ強く競争させると、やる気が出るのは10%程度ですね。下手したら5%です。トップ5%〜10%くらいは、常にこのポジションを守る、ということでやる気が出るのですが、残りの8割くらいは、「もういいや、いつも同じだし」みたいになってしまうのです。

 学校の方針が「できないヤツは放っておいていい。とにかく競争させて、年間3人でも1人でも、東大、早稲田、慶応に入れたい」というものだったら、そうするのはやむを得ないかもしれません。しかし、それでは実はクラスの総生産性は低くなります。1割の人間だけやる気を出させて、残りの8〜9割のやる気をくじいてしまうと、40人全体の成績という見方では下がるわけです。

 では、競争を止めればいいか、何も比べず楽しいことだけを好きなようにやらせればいいのか、というと、それでは成長がない。成長はしてほしい。そこで何と比較するかというと、自分と比較するのです。

 比較には2つのやり方があって、個人“間”評価と個人“内”評価があります。個人間評価、つまり他者と比較すると、競争が強すぎる状況が起きてしまいますね。なので、個人内評価をしてほしい。昨日の自分と比べて、どれくらい伸びたかを見てほしいのです。

事例──昨日の自分と比べて、どれくらい伸びたかを見る

 私が塾の講師をしていた頃の話です。算数の苦手な小学3年生の男の子がいました。3年生なのに3年生の問題ができなかったので、家族もその子をダメな子だといっていたのですが、国語やスポーツはできるし、算数でも2年生のテキストを持ってくるとスラスラできる。「そんなの当たり前じゃないか、3年生なんだから」と周りは言うのですが、私は素直に感動したのです。2年生の問題をスラスラ解いたのを見て、すごいね、と言い、毎回、今日はこんなにできたね、こんなにできたね、とやっているうちに、半年もしないうちに3年生の問題もスラスラできるようになりました。つまり「あの子に比べて、あんた劣っているでしょ」といわれると、やる気がなくなるけれど、「昨日に比べてこんなにできたね」と、本人がどれだけできたかを見ていくと、やる気になるのです。

 私のプライベートな体験でいうと、以前、毎日水泳をやっていた時期があったのですが、水泳部の人と比べちゃうと泳ぐのが嫌になりますね。あの人たちはできるに決まっているのです。なので、自分の中で、ここから向こうまで前回は1分何十秒かで泳げたから、じゃあそれを5秒縮めようとか、もしくは時間ではなく、いつも20周を通して泳いでいるから、今日は25周にしようとか、こんなふうにすると楽しいですね。もちろん、目標が高すぎてはダメです。昨日は20周だから、今日は40周にしよう、なんて高すぎます。高すぎない範囲で、以前の自分と比べて評価するのがいいのです。


 このように、高すぎない目標にして、自分のダメなところは探さず、昨日の自分に比べてどれだけできたかの方に意識を向けましょう。

 個人間評価の問題点は、自分が相手に勝てると思ったときはすごくがんばるのですが、「勝てないな」と思った瞬間に、急にやる気がなくなって生産性が低くなる点です。「あの会社はウチのライバル。あの会社に負けないようにがんばろう!」といって、ヒーヒーいいながらもがんばれて、ギリギリでも勝てているときは、もっとがんばろうと思います。そんな時期に業績が飛躍的に伸びるのは事実です。でも、永続的には無理ですね。3カ月から1年くらい、せいぜい3年まではガツガツとがんばれます。しかし、10年も20年も競争していたら疲れてきてしまいますね。そして、勝てないと思ったら、急にやる気がなくなります。相手が一気に先に行ってしまうと、いきなり会社のムードが「ああ、もういいや、あいつらには勝てない。もういいよ」みたいな感じになってしまうのです。

 ところが、昨日の自分と比べていたら、勝てるときもあれば勝てないときもあるけれど、常に昨日よりは成長しているから、「じゃあ、もっとやろうかな」みたいな気持ちになります。だから、個人内評価の方がやる気が出ます。個人間評価は時には大事ですが、やりすぎるとやる気をくじきます。

 くれぐれも、競争がダメだと言っているわけではありません。それが強すぎるのがいけない、という話です。自分との競争はいいですが、それも強すぎるといけません。その基準は人によって違うので、よく自分を見つめてみてください。

 次回は最終回。やる気のくじき方の6つ目の方法から8つ目まで一気に紹介します。

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やる気 | モチベーション | ストレス


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ピークパフォーマンス 代表取締役

平本相武(ひらもと あきお)

 1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は「成功するのに目標はいらない!」。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。


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