社内資料に付けられた“名前”は複雑怪奇で、何に使うのかよく分からないものが多いもの。しかも誰も正式名称で呼ばない……となれば、名称に問題があるのです。
今回の課題:似たような社内資料で混乱を招かないようにするには?
コツ:業務の目的に沿って名前をつける
チームで仕事をしていれば、連絡や情報共有の目的でさまざまな社内資料が必要になります。特に、定期的に開催されるミーティングにおいては、チームとしての意志決定をスムーズに行うためにも、チームの活動実績を定点観測し、過去から現在までの変化を正確に把握しておく必要があります。
そのためには、毎回のミーティングにおいて、一定の方針や基準に沿って作られた会議資料があると便利です。「前月と比べて今月はどうか?」といった比較検討がしやすくなるからです。
こうして、資料の種類が増えてくると、それらを区別して正しく使い分けるための資料の名前が重要になってきます。要件としては次の2つがあります。
まずは、内容を過不足なく表すような名前であることが基本となります。
例えば、問題編にも出てきた「月別商品別地域別売上実績」のように、名前を聞いただけでその資料の内容が分かるようにするわけです。とはいえ、内容を正確に表しているとしても「月別商品別地域別売上実績」ではいささか長すぎます。
そこで、2つめの要件として、そもそもその書類が業務全体の中でどのような役割を担うのか、すなわち業務の目的から見て適切かどうか、という視点が挙げられます。
1つずつ具体的に見ていきましょう。
これは筆者がかつてかかわったシステム開発の現場で実際にあった話です。その会社では毎月第6営業日になると前月1カ月間における部門の取引実績を資料にまとめて、経理部に提出するという業務があり、そこで「月次請求入金履歴一覧」という資料が作られていました。この資料以外にも請求書や領収書など何種類かの資料を提出するのですが、この資料はすべての提出資料の最後に添付するということもあり、担当者の間では「添付資料」という通称で呼ばれていました。
「月次請求入金履歴一覧」という正式名称に比べると「添付資料」という通称は短くて言いやすいですから、担当者同士での日々のコミュニケーションにおいては都合がいいわけです。
でも、担当者の異動があると困ったことになります。資料自体にも書かれている「月次請求入金履歴一覧」という名前とは別に、「添付資料」というコードネームがあるようなものですから、1つの資料について2つの名前を覚えなければならなくなるからです。
さらに、単に「添付資料」だけでは、もともとの意味である「毎月第6営業日に経理部に提出する各種資料に添付する資料」を表しているとはいえないでしょう。
そもそも、通称で呼びたくなるのは、それだけ正式名称が繰り返し口にするに堪えない何よりもの証拠ですから、正式名称に再検討の余地がある、ということになります。
前述の通り、資料の名前が、それを見ただけで内容を想像できるものになっているのが理想ですが、この原則を適用することによって、通称を付けたくなってしまう、すなわちそのままではチーム内のコミュニケーションの題材として使うのが困難になるのであれば、この理想はあきらめて、次の原則に照らすことにします。
それは、「その名前は資料が担っている役割や目的を表しているか?」という原則です。先ほどの「月次請求入金履歴一覧」であれば、この資料の役割や目的に即して名前を考えるわけです。
もともとこの資料を経理部に提出するのは、経理部門が月次の実績を各部門単位で集計し、全社の実績を把握するためでした。そうなると、この資料を作る目的は経理部に提出する必要があるから、ということになります。そこで、最終的には「月次経理向け資料」という名前に落ち着きました。
この名前を見ただけでは内容はさっぱり分かりませんが、「経理向け」という言葉が含まれていることから、目的は明確です。つまり「月に一度経理に提出する資料である」ということが分かればいいわけです。
1974年、東京生まれ。ブログ「シゴタノ!仕事を楽しくする研究日誌」主宰。学生時代よりビジネス書を読みあさり、システム手帳の使い方やスケジュール管理の方法、情報整理のノウハウなどの仕事術を実践を通して研究。その後、ソフトウェアエンジニア、テクニカルライター、専門学校講師などを経て、現在は仕事のスピードアップ・効率アップのためのセミナーや研修を手がける。デジタリハリウッド講師。著書に『「手帳ブログ」のススメ』(翔泳社)『スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術』『チームハックス 仕事のパフォーマンスを3倍に上げる技術』『そろそろ本気で継続力をモノにする!』、近著に『Life Hacks PRESS vol.2』『LIVE HACKS! 今を大切にして成果を5倍にする「時間畑の法則」』がある。
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