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» 2008年09月01日 11時30分 公開

部下をやる気にさせて育てる指導術:数値目標だけでは部下は育たない 〜ビジネスの本質とは何か〜 (2/4)

[水野浩志,ITmedia]

「2000円あげるから1000円ください」が成立する状況を考える

 さて、ビジネスにおける価値の交換について、もう少し考えていきましょう。例えば、もし私があなたに対して

  • 「500円あげるから1000円ください」

 と言ったら、あなたはこの取引を受けるでしょうか? まず受けませんよね。なぜならこれは、明らかにあなたが損をしてしまう、決して喜ばしい取引ではないからです。

 もし私が、あなたが損することを隠してこの取引を成立させたとしたら、それはあなたに対しての詐欺行為ということになってしまいますし、組織の中で働いている人が、会社に500円の価値しか提供せずに1000円の給料をもらっていたなら、それは給料泥棒ということになってしまいます。つまり、この取引はビジネスとしては成立しないもの、と考えていいでしょう。

 では次に、

  • 「1000円あげるから1000円ください」

 と言われたら、あなたは受けますか? これもまた、喜んで受け入れることはできないでしょう。

 なぜなら、この取引には、なんの意味もないからです。しかし、世の中には、1000円のものを1000円で売ろうとして、なかなか売れずに儲かっていない人がたくさんいます。それに、売れたとしても大きな利益はでないでしょう。また「給料分だけ働いていればいい」と言いながら、実際は「給料が上がらない」と文句を言っている人もたくさんいます。

 しかし、こうやって自分が提供する価値を現金に置き換えて考えてみれば、彼らの売り上げを上げたいという想い、給料を上げたいという望みが、いつまでたっても遂げられないのは一目瞭然ですよね。

 では次に、

  • 「2000円あげるから1000円ください」

 と言われたら、どうでしょうか。これなら、ほとんどの人が喜んでこの取引に応じるでしょう。なぜなら、自分が払った価値以上に受け取る価値が大きいのですから。

 もちろん、2000円で仕入れたものを1000円で販売していたら、当然のことながら破産してしまいます。実際は500円で仕入れた商品を1000円で売ることで利益を確保する必要があります。

 ここで、多くのビジネスマンは、「どうやって500円のものを1000円で売るか」という考え方をしてしまうようです。しかし、それでは「2000円上げるから1000円ください」という取引の発想はなかなか生まれてこないでしょう。そこで必要な考え方は「500円のものをどうやって1000円で売るか」という発想ではなく、

  • 自分が提供する価値の総額を、どうやって2000円まで引き上げられるか

 という発想なのです。

 例えば、先に挙げた大道芸人の話を思い出して下さい。彼らは、いくらのものをいくらで売っているでしょうか。確かに、原価は彼らにもあります。しかしジャグリング用のピンやボール、衣装やメイク道具、そういったものの原価がいくらかかって、それに何%の利益を上乗せしよう、という発想は、彼らには一切ありません。

 彼らが常に意識を向けているのは、「通りすがりの人たちがついつい立ち止まってしまい、そして最後には思わずポケットの小銭を帽子に放り込んでしまうほどの驚きや喜びを感じさせるには」ということ。これを常に考え続けながら、自らの芸を磨いているわけです。

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