「これやっといてね、お兄ちゃん!」――インタビュー中に、唐突にこんな妹ボイスが響き渡る。「萌えボイスタスク管理ソフト」こと「NetworkTODO」の開発と販売を行っている、五十嵐重工業での1コマだ。
IT系PR会社の開発部門から独立した五十嵐重工業が、NetworkTODOをリリースしたのは2年前のこと。多機能なToDo管理サービス「Remember The Milk(RTM)」などを参考にして開発した。ただし、RTMのように多機能過ぎると初心者にはとっつきにくい。そこで、機能やユーザーインタフェースは極力シンプルにした。
「難しいと使ってもらえない、でもただシンプルなだけではほかのサービスやソフトと差別化できない」。考えた末に導入したのが、バリエーション豊かな音声メッセージ機能だった。他人から仕事を依頼されたり、依頼された仕事の締め切りが過ぎてしまったときなどに、用意された音声で知らせてくれる機能だ。
当初は無機質な合成音声だけを採用していた。しかし、「実際に社内で使ってみると、あちこちから機械の声が聞こえ、なんだか機械に働かされているような気がしてくる。社内の雰囲気が、なんだか暗くなってしまったんです」(エンタープライズソリューション事業部の海野龍太マネージャー)
そこで、フリーの声優を起用して、20パターンの音声を録音した。試しに妹バージョンを公開してみたところ、反響は想像を超えるものだった。
「これやっといてね、お兄ちゃん!(妹)」「あと1時間で終わらせないと、お仕置きが待ってるわよ……(ドS)」「ほら、終わったわよ……べっべつにアンタのためにやったんじゃないんだからねっ!(ツンデレ)」――現在は5種類(妹/ドS/ツンデレ/委員長/デフォルト)の音声バリエーションを公開しており、今後もさらに増やしていく予定だ。
→「妹」「ドS」「ツンデレ」パターンの音声を聞いてみたい人はこちら
他製品との差別化を狙って搭載した音声機能だが、海野氏によれば、グループ内で仕事を分担するにも効果的だという。
メールやポップアップウィンドウによるアラート、リマインドは、基本的にはその人しか見ないもの。タスクが2〜3件程度であれば効果的だが、1人で多くのタスクを抱え込むと、いくらアラートが出てもストレスがたまるだけになり、最後には無視してしまうこともある。
一方、音声によるアラートは、自分のタスクの進捗具合を周囲に知らせる役割がある。タスクをグループ内で共有することで、仕事の割り振りや仕事量の見直しにつながる。「締め切りに遅れることは、必ずしも本人だけのせいではない。なぜ遅れたのか、そもそもそのタスクを振った人間の判断は正しかったのか、そういう諸々を考えることが大事」(小糸恵輔社長)
口頭では頼みづらいこともある他人への仕事依頼も、音声メッセージが効果を発揮するという。バリエーション豊かな声で仕事依頼することで、頼む方は気軽に、頼まれる方も煩わしさを感じずに仕事を受けられる。「ツールそのものが(精神的な)バッファの役割をしてくれる」というわけだ。
ToDo管理ソフトは、どこからでも利用できるというのも重要なポイントの1つ。RTMなどのWebサービスは、ユーザーのこうしたニーズを満たしている。Network TODOは現在、PCにインストールして使うため、インターネットを通じてどこからでも利用できるというわけではない。だが今後は、Webブラウザからタスクを確認できる機能の実装も予定しているという。
音声機能としては、パターンの追加のほか、ユーザー自身が音声をカスタマイズして利用できるような展開を考えている。執事や兄貴バージョンの音声パターンも考えたが、「お願いできる男性声優を見つけるのが難しくて。我こそはという方はご連絡ください」
IT系企業などでは、社員間のやりとりはインスタントメッセンジャーがメイン、というようなところも少なくない。「それはそれで便利なんですが、キーボードのタイプ音だけがカタカタ響いているっていうのもなんだかさみしいじゃないですか」(小糸氏)。
「ああ、またあいつの妹が怒ってるぞ。仕方ないから仕事手伝ってやるか」「げー、普段カタブツな部長が、ツンデレに罵られてニヤけてる……」――想像するのはなかなか難しいが、そんな社内環境だったら、日々の仕事が普段よりちょっと楽しくなるかもしれない。
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