誰にでもできる! 「大勢の人から一瞬で合意を取る」方法人を動かす話し方講座

複数人で話し合いをするときには、テーマとなる単語の解釈を共有しておくことが重要です。簡単にできて、話し合いを有意義に進められるテクニックをご紹介しましょう。

» 2009年08月03日 12時52分 公開
[水野浩志,Business Media 誠]

 会議やミーティングなど、大勢で話し合いをするシーンがビジネスの現場では頻繁にあります。その話し合いが非常に有意義で実のある話となれば良いのですが、考えや意見がかみ合わず、不毛な討論に終始してしまうことも少なくありません。

 今回は、そんな議論が起きないような、「大勢の人と合意を取る」誰にでもできる簡単な方法についてお話ししたいと思います。

なぜ議論がかみ合わないのか

 私の仕事は講師業ですので、研修やセミナーを頻繁に行っております。ここで集まってくる人たちは多種多様な人物でありますが、彼ら全員に対して合意・納得のいく話をしていく必要があります。

 しかし、社内の研修で集まってくる人たちですら、同じ会社・同じ文化で働いているのに、さまざまな意見や考えを持っています。公開セミナーに至っては、今までまったく一緒の環境にいなかったような人たちが集まってくるわけですから、非常に単純な言葉ですら合意を取ることはなかなかできません。

 例えば、私の研修ではビジネスがテーマの1つとして取り上げられますが、この普段当たり前に使われている“ビジネス”という言葉についても、人によってさまざまな考え方があります。

 ある人は「ビジネスとは生活のためにあるもの」と考え、またある人は「ビジネスとは自己成長の場である」と考えていたりと、各自その言葉について抱いている印象はバラバラの状態です。

 このように人それぞれ価値観が違いますから、意見が全員ぴたりと一致するという事はそもそも不可能です。でも、大勢の人が1つのまとまったグループの中で話し合いをしていくとなると、「人それぞれ」だという一言で済ませてしまうわけにもいきません。

 ではそんなときに、多種多様の考え方の人たちに対して共通合意を取って話し合いを進めていくためには、一体どうしたらいいでしょうか。

テクニック:共通合意を図るには辞書を使おう

 大勢の人たちの共通合意を図る方法として、私が研修でやっている実にシンプルな方法をお話ししましょう。それは、

  • その研修で重要となるキーワードの意味を辞書で調べ、それを全員と共有する

 ということ。

 例えば、先ほどもお話ししたとおり、私の研修では“ビジネス”というものが全体を貫く1つのテーマとなっています。ですからこのキーワードに関しては、人それぞれの解釈のまま進んでいってしまうと、研修そのものが破たんしてしまいます。

 かといって、講師である私自身の価値観を受講者に押しつけて、そこに共通合意を持っていこうとすると、これもまたうまくいかないでしょう。納得のいく人は心地良い理解ができるでしょうが、納得のいかない人の場合は研修中終始不快で納得のできない状態が続いてしまいます。

 そこで、ここで辞書で定義された意味を調べてそれを全員に伝えることで「ビジネスとは何か」についての基本的な共通合意を図るのです。

 辞書というのは便利なもので、多様な解釈や価値観を持っている人々でも、基本的には全員納得できるように言葉を定義してくれています。

 ですから、辞書で調べた意味をベースとして合意を取っておくと、単に多様な価値観がぶつかり合って収拾がつかなくなるような議論になりにくくなります。また、自分の意見や考えを語るにしても、辞書の意味をベースに語るようにすれば、少なくとも「この人はどういう考え方でこの価値観を持つようになったのか」という理解の助けになるでしょう。

マインド:話し合いに軸を通そう

 不毛な議論が起きてしまうときによく見る傾向は、

  • その話し合いにおける重要なキーワードの合意がとれていない

 ということなんですよね。

 多くの場合、そのキーワードは非常に重要であるにも関わらず、日常でごく普通に使われているような単語であるがゆえに、きちんと意味を理解しようとせずに使ってしまうことが多いようなのです。

 しかもこのときに、その場にいる人たちが共通で勘違いしているのは、そのキーワードが普通に使われている単語ゆえに相手も自分と同じようにそのキーワードを理解していると思い込んでしまっていること。こういった状態で、大勢が集まって話し合いをしても、うまくいかないのは当たり前なんですよね。

 だからこそ、まずはその話し合いにおいて一番重要となるキーワードに対し、何らかの共通の合意を取っておくことがきわめて重要になるのです。

 そのための方法の1つとして、初めに辞書に書いてある意味を全員で把握し、その意味をベースに置いた上で、お互いの考えをその意味の上に載せていくように話し合うというのが非常に有効になるわけです。

 また、自分がその言葉に対して持っている想いや考えも、単純に主張するよりは、みんなと合意できる辞書的な意味をベースに置いてから考えを積み上げていくように話すといいでしょう。相手の考えを変えることはできなくても、相手に「だからこの人はこう考えているんだな」という形で理解してもらえることにつながるからです。

 重要なキーワードを辞書で調べ、それをみんなで共有する。

 この単純なひと手間をかけるだけで、不毛な議論を避け、有意義な話し合いができます。簡単なことなので、ぜひ実践してみてくださいね。

著者紹介 水野浩志(みずの・ひろし)

 マイルストーン代表取締役。「社会に活き活きと働く大人たちを生み出す」をスローガンに掲げ、リーダーシップやモチベーション創造、自己表現力養成をテーマにした企業研修や公開セミナーを実施。また研修・セミナー講師向けに、具体的な成果を生み出す効果的なカリキュラムの構築手法や講師としてのマインド、人間力創りの指導も行っている。現在、日刊(平日)で、メールマガジン「1回3分でレベルアップ! 相手の心を掴むトーク術」を発行中。


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